病院でしか見かけない症例#1

病院薬剤師

僕は病院に来る前に、調剤薬局に10年近く勤めていました。その時目にしなかった症例・処方がいくつもあり、目から鱗な事が多いです。だったら「調剤薬剤師しか経験ないけど、病院薬剤師はどんな事やっているのか?」と思う薬剤師もみえるはずです。それで、いくつか「これは病院と調剤で全然違うなぁ」という事を、思い付き次第配信いたします。

【誤嚥性肺炎】

たいてい「老人ホーム・サ高住・在宅」➡「病院」➡「治ったら戻る」という経過で、調剤薬局では触らない病態ですね。だから調剤薬局にいると、誤嚥性肺炎の存在を忘れます。大学で習ったきりになります。

ちゃすけ
数年前の
ちゃすけ

誤嚥性肺炎なんていうけど、あまり見かけないぞ。レアな病気なんじゃない?

ところが病院薬剤部だと一転、非常によく見かけます。どのくらい見かけるかというと、老人ホーム・サ高住からの入院患者さんは6割がた(僕の体感)、誤嚥性肺炎じゃないのかって思います。

【入院当日まで】

老人ホーム・サ高住で、なんだか昨日から食欲がない。熱が高い。いつもより言葉が少ない。これは異常だと看護師スタッフが気が付いて、病院に受診します。たいてい、施設医にです。

医師
施設医
(個人医院)

(誤嚥性肺炎かな?)この人はうちでは診れない。入院して数日絶対安静だよ。だから病院に紹介するね。

誤嚥性肺炎だったとしたら命に係わるし、食事もできなくなります。だから施設ではダメで、病院紹介となります。

医師
病院内科医

(これ誤嚥性肺炎かな?胸部CT撮ってもらおう)

医師
病院内科医

やっぱり肺の右下に影がある。誤嚥して肺にいったんだ。

診断・病名決定の流れはもっと厳密で、医師にしか解らないですがだいたいの流れとしてこんな感じ。

<病院薬剤部>
●セフトリアキソンナトリウム静注1g+生食100mL・・・1日2回点滴
●ソリター3号・・・・・1日2回点滴

抗生剤は大抵、セフェム2~3世代のもの。セフェム=グラム陽性菌に有効なもので、世代が上がるごとにグラム陰性にも有効ですよね。誤嚥性肺炎=口の常在菌が肺に入っているので、黄色ブドウ球菌なんかのグラム陽性菌に効くやつを使うのです。(ここも菌検査で菌特定したら変えますが)

ソリター3号は、食事がとれず脱水し、栄養不足のため使います。病院での食事は絶食となります(再度の誤嚥したらいけない)。またサチュレーション(SPO2)も下がってる場合がおおく、酸素マスクをつけたりします。

【入院中】

サチュレーション回復で酸素マスク外します。それにCRPが下がり、解熱もすれば、嚥下トレーニング開始です。ゼリー食➡ミキサー食➡お粥・とろみ付け、と回復していきます。ここではリハビリ技師さんが活躍します。

先ほどの点滴も、回復に従って変化します。

<病院薬剤部>
●セフトリアキソンナトリウム➡中止
●ユナシン錠375㎎・・・・3錠/1日3回(粉砕)

点滴抗生剤は、内服に切り替えます。それも粉砕➡粒のまま、とアップしていきます。ここで、薬剤師はリハビリ技師さんの嚥下トレーニング状態も、見ないといけません。たとえばゼリーしか食べれない患者さんに、あのユナシンの大きい粒が出ていたらヘンです。また担当看護師さんにも、「この人、ユナシンの大きい粒が飲めるくらい回復していますか?」と、確認しましょう。

【退院まで】

解熱し、CRPもさがり、食事もお粥程度までアップしたら・・・元々のんでいた薬も再開されます。そして、退院許可がでます。

退院処方では、たいてい14日分の「元々のんでいた薬」が処方されます。14日というのは平均値で、施設の方針により「うちは退院処方、28日欲しい!」などと変化します。

でも退院許可でても、すぐには退院できません。誤嚥性肺炎になるような人はそもそもADLが自立していなく、自力で帰れない方が殆どです。だから入居する施設のスタッフor家族の都合つく日付まで、入院継続となります。

いざ退院日・・・薬剤指導は家族に行います。薬剤師も、家族のみえる時間に合わせて、体をあけておくのです。

【退院後:調剤薬局は?】

「元々のんでいた薬」は、調剤するかと思います。たいてい14日ずつ。でも誤嚥性肺炎の薬は、いっさい触れません。だから誤嚥性肺炎がレア疾患だと、勘違いしやすいです。

【トリビア】

Q:誤嚥性肺炎に、ファモチジン注射の使用する理由は?

・・・A:唾液分泌を減らす為に使う。

ファモチジンといえばH2ブロッカーで、一見誤嚥とは関係ないですね。でも実際は唾液分泌が減り、唾液誤嚥が減ると報告されています。

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