【病棟の薬剤指導】薬関係の相談受けた場合

管理人は病院薬剤師です。薬剤師は数人しかいない、地方の小病院です。

入院してからフラツキが止まらない患者さん

入院後、フラツキが止まらない患者さんがみえました。フラツキがひどくついに転倒してしまった方です。

フラツキということで、原因いろいろ疑って精査します。

<疑い:腰椎の神経圧迫>

腰椎圧迫のせいで神経異常を来して、フラツキになってるのでは?

その為、腰椎~胸椎のMRI撮影をしました。撮影結果は、少し圧迫ありました。ただし「陳旧性」、つまり入院した途端にフラツキがでた説明になっていません。※入院中だけふらつくのなら、「新鮮な」圧迫痕になる

そのため神経圧迫は否定されました。

<疑い:足の筋力>

足の筋力低下で体を支持できず、フラツキになるのではないか?

その為今度は、リハビリ技師さんによる筋力テストです。結果は何と片足立ちが両足ともできて、安定感もありました。

つまりフラツキは筋力低下でもありません。

<疑い:横紋筋融解症>

横紋筋融解症を起こして、筋肉がダメージを受けるからフラツキになるのではないか?

その為今度は「原因になりうる服用薬」「結果としてでる検査値異常」をみることにしました。

<服薬中の薬(仮・改変済)>
●ベザフィブラートSR錠200㎎ 1錠分1夕食後
●テルチア配合錠BP 1錠分1夕食後
●テルミサルタン錠20㎎ 1錠分1夕食後
●アムロジピン錠2.5㎎ 1錠分1朝食後
●デエビゴ錠 1錠分1寝る前

ベザフィブラートが横紋筋融解症を起こしますよね。

今度は検査値をみます。横紋筋融解症の場合、こうなりますよね。

基準範囲発症日
CK(IU/L)~180少なくとも
1000以上
血中
ミオグロビン
(ng/mL)
~611000以上
AST(IU/L)~301000以上
ALT(IU/L)~30100以上

・・・で、この人の検査数値はCK正常、AST・ALTとも正常。ミオグロビンは計測していないけど、尿の色も正常。そして筋肉痛・前身の脱力はありません。

というわけで横紋筋融解症も否定です。

<もっと情報集める>

情報がフラツキだけでは不足だと思いました。そこでどういうフラツキなのか、情報集めました。

<詳しいフラツキ症状の情報>
●フラツキの時間帯は?➡➡22~23時
●フラツキに付随した症状は?➡➡立ち上がれない。喋れない。思考停止する。
●本当に入院中だけか?➡➡入院で発現したで間違いない。

時間帯が明らかに??ですよね。時間帯的に、今度は眠剤の残存効果を疑います。でもデエビゴ錠はオレキシン受容体作動薬で、脱力・依存性などの副作用はありません。

<疑い:睡眠薬の主作用>

この症状と時間帯、何かに似ていませんか?そう、BZP系睡眠薬の作用そっくりです。この人まさか、他に薬飲んでるのでは?

・・・すると、ブロチゾラム錠0.25㎎(もちろんBZP系)を、寝る前に飲んでいました。飲む時間帯が20時なので、22~23時といえばバッチリ作用でている時間帯です。でも寝付けないので立ち上がろうとし、脱力作用は残ってるので転倒してしまう。

<その後の行動>
医師にブロチゾラム錠でのフラツキ疑い、止めさせますと伝令。OK貰いました。

看護師さんにも同様の報告。

患者さんのベッドサイドに出向いて、指導。『ブロチゾラム錠がないと寝れない』と反抗されました。これはブロチゾラム錠への精神依存ですね。

ですが、私はこの患者さんが昼間のリハビリをサボり、日中寝てばかりいることを知っていました。そう、入院中にフラツキでたのは入院中することなく寝て昼夜逆転し、夜寝付けず立ち歩くからじゃないかと。

医師からブロチゾラム錠禁止を言い渡され、観念して止めてくれました。

<その後:ブロチゾラム錠中止での変化>

まず夜間フラツキは一切なくなりました。つまりフラツキの原因=ブロチゾラム錠の残存効果で間違いないです。そして寝付けない=昼夜逆転なので昼間寝ていたら起こして、活動してもらいました。

それで不眠を訴えず、体調改善して退院していきました。

【この症例からいえる事】
●薬剤師が相談された場合、薬の副作用ばかりとは限らない(むしろ主作用のせいだった)
●そもそも薬が要らない状況に導くべき(不眠は昼夜逆転の解消で改善可能だった)
●薬の作用(BZP系の作用=ふらつき・脱力)は誰でも知っているが、いざ症例から見抜くとなるとこの様に難しい。

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