家庭菜園でいちごを夏越し・早く収穫する方法

【そもそも~いちごについて知る】

①花芽分化条件

 実をつける為には、その30~40日前に咲いていないといけない。その花が付く為には花芽がついていないといけないが、花芽分化条件はこうなっている。

【イチゴ花芽分化条件】
●いちごのクラウン系直径8㎜以上(小さすぎると花がつかない)
●培地の窒素濃度低くする
 これを満たしたうえで、下記の花芽分化条件をみたすこと

 ※基本いちごの花はいちごのクラウン部分が「冬」を感じる事で花芽が付く。「冬」というのが低温だったり、短い日照時間(=つまり短日条件)だったりする。

 ①-1一季なりいちごの花芽分化条件

0~
5℃
5~
10℃
10~
15℃
15~
20℃
20~
25℃
25℃~
休眠無条件で
花芽分化
短日条件で
花芽分化
短日条件で
花芽分化
短日条件で
花芽分化
花芽分化
しない
真冬の露地と同じ
休眠
12月・3月の気候
殆ど生育しない
11月頃の気候
あまり生育しない
10月頃の気候
生育しやすい
9月頃の気候
4月頃も遮光すればOK
生育には最適
7~8月の気候
この温度帯はダメ
一季なりいちごの花芽分化条件

短日条件とは、だいたい日長時間8時間がめやす。気温10℃前後の低温であればかなり日が長くても花芽が付く(低温=冬だといちごが錯覚する為)。しかし気温20℃をこすと日が短くしないと(つまり遮光する必要あり)花芽がつかない(高温だと短日=冬と錯覚させるしかない)。

なお日本のイチゴの98%はこの一季なりイチゴ。

 ①-2四季なりイチゴの花芽分化条件

0~
5℃
5~
10℃
10~
15℃
15~
20℃
20~
25℃
25℃~
休眠無条件で
花芽分化
長日条件で
花芽分化
長日条件で
花芽分化
長日条件で
花芽分化
花芽分化
しない
真冬の露地と同じ
休眠
12月・3月の気候
殆ど生育しない
11月頃の気候
あまり生育しない
10月頃の気候
生育しやすい
9月頃の気候
4月頃も遮光すればOK
生育には最適
7~8月の気候
この温度帯はダメ
四季なりいちごの花芽分化条件

四季なりイチゴは特殊で、(一季なりイチゴとは違って)冬だから花芽をつけるのではなく、春だと感じると花芽をつける。春=比較的低温+日が長い状態なので、11月のような低温でも24時間ライト照射し続けると春だと勘違いして花芽をつけてくれる。

 ※余談:日が長くて低温といえば北海道や長野県の高原。こういった所は夏場に四季なりイチゴの産地となっている。

 ①-3変則一季なり系統の「よつぼし」の花芽分化条件

0~
5℃
5~
10℃
10~
15℃
15~
20℃
20~
25℃
24.8~
28.2℃
28.2℃~
休眠無条件で
花芽分化
短日条件で
花芽分化
短日条件で
花芽分化
短日条件で
花芽分化
長日条件で
花芽分化
花芽分化
しない
真冬の露地と同じ
休眠
12月・3月の気候
殆ど生育しない
11月頃の気候
あまり生育しない
10月頃の気候
生育しやすい
9月頃の気候
4月頃も遮光すればOK
生育には最適
5~6月の気候
地面温度25℃超は生育鈍る
7~8月の気候
この温度帯はダメ
いちご「よつぼし」の花芽分化条件

よつぼしは特殊で、基本的に一季なりイチゴ(10℃くらいだとかなり日長でも花芽着けるが、20℃だと短日しないと花芽着けない)。でも違うのは高温域になった途端に、長日で花芽つけること。このため24~28℃となる9月中旬に24時間ライト照射することで、花芽を付けて晩秋から収穫できるようになる。

②生育適温

 いちごは元々オランダイチゴとよばれ、運河に氷が張るほど寒冷なオランダ・アムステルダムの近郊に自生していた。その為日本の暑さに大変弱い。逆に冬は、(冬眠モードのロゼット状態なら)-10℃でも平気。その為、夏の暑さをいかに軽減するかがカギとなる。

■生育適温 18~25℃(最低温度5℃、最高温度35℃)
■地上部の生育適温 20~25℃
■果実の肥大適温 昼間 20~24℃ 夜間 6~10℃
■果実の成熟適温 15~20℃

この気温帯にするためには6月~9月は冷却が必要。11月~3月は保温・加温が必要になる。

また品種ごとの生育適温も少し格差がある。

③必要な光の強さ

いちご生育に適した照度(ルクス数・光の強さ)=2万~3万ルクスが最適

 ※これ以上は葉が焼ける・果実部分の温度上昇で劣化。

自然界の照度

 晴天時の12時は10万ルクス(強すぎ)、10時や14時は6.5万ルクス(強すぎ)、15時は3.5万ルクス(強い)、日入り1時間後は0.1万ルクス(弱)

 曇天時(曇りor雨の日)の12時は3.2万ルクス(適切)、10時は2.5万ルクス(適切)、

➡➡晴天時は50~60%遮光、曇天時は遮光なしが照度だけでみると最適。ただし遮光すると気温下がるので(後述の高温対策②でしめすとおり3~4℃下がる)、とくに冬は遮光しない。

【イチゴ夏越し冷却方法(高温対策①=気化潜熱法)】

※高温対策にクーラーは高価なので、あまり使われない。高温対策のメインは気化潜熱を奪う方法。

 気化潜熱法の方法① 「紙ポット育苗」(苗の小さいうち)

 <紙ポット育苗のやり方>
 ●苗を植え付ける先は8㎝~9㎝再生紙ポットとする(従来の黒ポリポットではない)
 ●紙ポットは底面フラット型を選ぶ
 ●潅水回数は日中2時間に一度、苗当り27~52mL(※各サイトで量頻度が違うが参考程度に)
 ●潅水方法は底面潅水。(いちご炭疽病の蔓延防止&均等に水を与える為)

 その紙ポット×底面給水 による育苗方法はこちら。

アクアベールの紹介ページより引用 (株)ベル開発

これは「水稲育苗箱(ホームセンターで1個130円で購入可能)」の中に、上から順に「透水遮根シート」「給水マット」をしいて、1日2回の水やりを自動化(注:個人宅での自動潅水は困難・自力で水やりするのが無難)するために「潅水チューブ」を敷いた図。

このやり方で使う資材はこの通り。

水稲育苗箱1日2~3回、水を5㎜高さ迄はる為に。
はった後は穴から水が抜ける。
●ホームセンターに有り
[プロ]水稲育苗箱
[家庭]水稲育苗箱
給水マット紙ポットに均等に水を与える為のもの
※給水マット&透水遮根シートを兼ねた製品も
●ホームセンターに無い
[プロ]ラブシート20507BKD
 or底面給水シート
 orアクアベール
[家庭]アクアベールの小分け
 orアルトレーダーの小分け
透水遮根シートイチゴ苗の根っこがシートに癒着しないようにする●ホームセンターに無い
[プロ]透水遮根シート
 orアクアベール
[家庭]アクアベールの小分け
 orアルトレーダーの小分け
再生紙ポット9㎝表面から水分が気化して冷却
&窒素の抜けが早い
➡花芽分化しやすい
●ホームセンターに無い
[プロ]大石産業花菜ポット20など
[家庭]セリアで8㎝サイズ×16個100円
潅水チューブ1日2~3回の水やりを自動化
毎回自力で水やりするなら不要
●ホームセンターに有り
[プロ]潅水チューブ&ポンプ
&タイマー付き電源
[家庭]コスパ悪いので不要。
朝晩に水やりする。

 <紙ポット育苗の効果・メリット>
 ●<低温に>いちご培地温度が平均4℃、最大7℃低下する(普通の9㎝黒ビニールポットと比べて)
 ●<低窒素に>いちご培地の窒素が早く抜ける(普通の9㎝黒ビニールポットと比べて)

<低温>紙ポットの黄色グラフは黒ポットより7度も低くできる
<紙ポットで低窒素に>紙ポットは早い段階で窒素が低く花芽分化やすい

しかし小さなポット状態で収穫まではできず、秋の収穫を目指す為にはまだ暑い8月上旬までに、本圃に植え替える必要がある。本圃では別な気化潜熱方法を使う。

気化潜熱法の方法② 「不織布栽培槽+送風」(苗が大きくなったら)

<不織布栽培槽+送風のメリット>
●<低温に>いちご培地温度が(送風しない普通の栽培槽にくらべて)4~7℃も低下する。

 ●「不織布栽培槽+送風」の効果

高温期の花芽誘導に貢献するイチゴ高設栽培の気化潜熱利用培地冷却より引用

培地温度が平均5℃、最大7℃も下がることになり、イチゴにとって酷な暑さを軽減できることになる。

<2つの気化潜熱法を組み合わせる事で>

花芽分化条件を早々と満たすことができる。その結果、(第二花房からの)収穫が早まり、トータル収量がアップする。

それによって、いちごの花芽形成が5日、収穫が10~20日も早めることができる。

・・・この方法はプロ農家がするにはいいのだが、家庭菜園で不織布培地を作ってとなるとどれも必要なものが大掛かり(培地をまとめるラブシート20507BKD、その外側を覆う透湿防水シートとも100m単位でしか売ってなく小分けなし)技術が難しいので真似し難い。

 そこで家庭菜園でオススメするのが、「紙ポット育苗を9月下旬まで粘る方法」。これなら装置は紙ポットのものだけでよく、家庭菜園でもプロと同じものを使える。

【イチゴ夏越し方法(高温対策②=遮光法)】

2つ目の方法として遮光。遮光率は40~60%がベスト。実際遮光することでかなりの低温化効果がある。

ちゃんと効果も有り、例えば80%遮光シートを被せることで培地温度を3~4℃下げることができる(福岡県太宰府市での10月6日)

実際ただ低温に出来ただけでなく、開花時期が「11日早まる(無遮光は11月7日から開花開始だったが、80%遮光は10月27日から開花開始)」という効果もあった。

日差しの強い7~8月に行えばもっと低温に出来るのは言うまでもない。

遮光シートはプロ農家用の大きなものだけでなく、いわゆる家庭用オーニングなどでも十分効果が得られる。

【具体的ないちご促成栽培の方法】

品種は「よつぼし」を使用する。病害虫にやや弱いが、①生産者が多くマニュアルが完成されている、②家庭菜園の小規模でも8月以前に苗を用意できる、③高級イチゴとされ味がおいしい、とメリットが多い。

<よつぼしの家庭促成栽培の例>

 ●本当は「本圃直接定植」がしたい。が、セル苗が72株or200株or406株なので、家庭菜園のせいぜい15株では過剰になってしまう。かといってホームセンターの苗15株買うと400円×15株=6000円もしてしまう上、そもそも欲しい7月上旬にまだ出回っていない。
 ●そこで「生産者播種から行う方法」を採用。種子は15粒1000円で買えて比較的安価なので、家庭菜園で安くやるならこれがベスト。

[5月にすること]

●15粒1000円の種子を購入。

<1次育苗>

播種(洗った食品トレーに土をしき、上に15粒の種子をまく。種には土を被せない)。場所は室内の光が当たる場所がよい(理由:風で種が飛ばされないし、20~25℃に保てるため。また好光性種子なので光が当たらないと発芽しない)

水やり。毎日朝晩に、スプレーで水を与える。14日もすると出芽開始、21日位で全部出芽し終える。

[6月にすること]

<鉢上げ>6月下旬に。食品トレーで育っている苗を、1苗ずつ「8㎝紙ポット」に植え替える。8㎝紙ポットは「水稲育苗箱」に「アクアベール」をしいた箱にのせる。紙ポット内の土は「イチゴの土」を使用する。ここから<2次育苗>となる。

●8㎝紙ポット●  >>セリアに大抵おいているのでそれを購入する。

●培養土●  >>ホームセンターにあるいちご培養土でOK。アクアフォームだとうまくいかない場合が多いので、培養土をオススメする。

●水稲育苗箱●  >>ホームセンターで1箱100円程度で売っている(ただし目につかない場所に置かれてる場合多く、店員さんに聞くこと)。通販でも買えるが配送費がバカにならないのでおすすめしない。次のセットを買うと、水稲育苗箱は不要になる。

●透湿防根シート&給水マット●  >>このマットは透湿防根シート+給水マットの張り合わせ。加えてトレーもセットでついてくる。

この<2次育苗>は屋内でなく屋外で、防虫ネットで囲ったミニハウス中で行う。

●ミニハウス●

<水>  >>毎日朝晩、トレーに水5㎜高さになるように与える(自動潅水できると楽だが家庭菜園では難しい)。加えて最初だけ、根元に直接水を与える(根っこが鉢底付近まできたら、根元直接の潅水は不要に)

<肥料> >>すでに培養土に肥料はいっているので要らない。

※余談:管理人はタイマー&ポンプ&潅水チューブを組み合わせて、自動で水やりできるようにしている。ブルーベリーの養液栽培をしていてタイマー給水しているため。

[7月にすること]

<2次育苗>を続ける。

肥料は与えない。理由は7月末=つまり花芽誘導の1か月前に肥料を絶つため(窒素中断。窒素が多すぎると花芽誘導が上手くいかないため)。

<遮光>を開始。晴れの日だけ。「家庭レジャー用の50~60%遮光オーニング(できれば白色)」がベスト。

 [プロ]白色遮光シート(明涼70など)を、12時~15時だけ覆う(夏場なので毎日やってもよい)。午前中は光合成盛んなので遮光しなくてもよい。正午過ぎは株がへ立ってきて光合成もおち気温尾も上がるため、遮光する。夕方は株を乾かす(病気を防ぐ為)ので遮光しない。(➡参考サイト

<冷却>は、2次育苗の時は不要。紙ポットの表面から水分が気化して打ち水効果(気化潜熱)で7℃も冷える為。

[8月にすること]

<花芽誘導>クラウンの直径が9㎜を超えしだい可能。だいたい8月下旬~9月上旬くらい。窒素肥料をやめ(つまりリンカリ肥料のみ与える)、24時間の白熱電球照射を14日間続ける。3日連続で、培地最高気温が28.4℃を上回らなければ成功する。

 ※[プロ]苗一つ一つを顕鏡し、花芽が出来ているか確認している。

肥料は8月中はまで控える。

<遮光>もちろん続ける。家庭ならずっとオーニングつけていても構わない。

<冷却>紙ポットなので十分な気化潜熱ができるので不要。

[9月にすること]

<本圃定植>夜温が下がりだしたら、本圃に定植する。家庭菜園なら650型プランターにイチゴの培養土(またはアクアフォーム+いちごの肥料)をはったものの中に3苗ずつ植える事になる。ここから<本圃育成>となる。

プランターは、<2次育苗>の時と同じく防虫ネットで覆ったミニハウス中に入れる。

水やりは葉っぱの上からでなく根元にやる(炭疽病を防ぐため)。できればタイマー+ポンプで自動潅水できるのが良い。

<肥料と水>肥料は9月の元肥で十分もつ。水やりは変わらず9時と16時のまま、量も乾かない程度でよい(プランター1つにつき1回500mL程度)

●いちごの肥料●  >>アクアフォームで育てる人だけ必要。量はプランターつにつき40gg程度(だいたい1掴み程度)、これをプランターの底に入れる。

<遮光>最高気温30℃を切るまで続ける。9月はまだまだ最高30℃近くなって暑い為。

[10月にすること]

<遮光>最高気温30℃にはならないので、遮光オーニングをはずす。防虫ネットはつけたままで。

<肥料と水>肥料は9月の元肥で十分もつ。水やりは変わらず9時と16時のまま、量も乾かない程度でよい(プランター1つにつき1回500mL程度)

<加温>この時期は生育最適気温(15~25℃)なので不要となる。冷却も不要。

[11月にすること]

<肥料と水>肥料は9月の元肥で十分もつ。水やりは変わらず9時と16時のまま、量も乾かない程度でよい(プランター1つにつき1回500mL程度)

<加温>夜温が7度を切るなら、ハウスの防虫ネットを外してビニールシート+内張りのプチプチで覆う。サーモスタット+暖房をセットする。

 ●暖房(園芸用)●  >>ペット用のヒーターがベスト。温室の大きさ的に100W必要。

 ●サーモスタット●  >>温度センサースイッチのこと。温室の温度を昼間は15~20℃、夜間は7~12℃ に保つために使う。

 [プロ]やはり11月上旬位に、ビニールハウスを組み立てる。内張は農業用プチプチを使うことが多い。

[12月~2月にすること]

<収穫>うまくいけば11月初旬に開花していて、40日たつと花が実になり収穫できる。

<肥料と水>実りだしたら週1回、ペレット1つまみ≒2g程度をプランターのすみっこに入れる。水の頻度は9時と16時のままでいいが、1回に与える量をプランター1つにつき1Lにふやす。

<加温> 11月につくった「ビニール温室&プチプチ」「暖房(園芸用)」「サーモスタット」のシステムけで十分。不安であれば温室に使ってない布などを(光を遮らないように)かぶせる。

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