【生活必需品】ユニリーバ(UL)個別株分析(21年04月)

個別銘柄(生活必需品)

世界第2位の一般消費財会社・ユニリーバ(銘柄ティッカー:ULについて。

おそらくユニリーバときいてピンと来なくても、「せっけんのDove」「シャンプーのMods Hair」「ワックスのAXE」「紅茶のリプトン」などと聞けば、知らない人はいないと思います。

楽天市場ページより引用

●株(ファンド)の概要~そもそも何してるところ?

 >セクター11分類・細かな業種・ディフェンシブor中間or景気敏感

GICSのセクター11分類でいえば「生活必需品」に属します。細かな分類でいくと「せっけん・一般消費財会社」ですね。もちろんこれらは不景気でも止める事のできない物なので、ディフェンシブ株といえます。

生活必需品といえば、シーゲル博士にいわせれば有望な3セクターとの事です。

 >その売上の内訳は?内訳別の将来性は?

●製品ジャンル別内訳

3分類にするとこんな感じ。どこも売上低下しましたが、とくにBeautyでの売り上げ低下が気になります。これはいうまでもなく、コロナショックでマスク着用➡口紅などの売上低迷からきています。

なお3分野ではなく、10分野に細分類して売上割合をみます。

前4つがBeauty、次4つがFooods、その後ろがHome Careです。

10分野3分野での大別
Skin CleaningBeauty & Personal Care
Hair careBeauty & Personal Care
DeodorantsBeauty & Personal Care
Skin CareBeauty & Personal Care
Ice creamFoods & Refreshment
SavouryFoods & Refreshment
DressingsFoods & Refreshment
TeaFoods & Refreshment
Home & HygieneHome Care
FabricHome Care
OtherOther

 >主要な個別製品の説明

●Beauty製品

モラタメ.netより引用

ブランドについてはここで説明不要でしょう。シーゲル博士の言葉でいえば「昔から存在する、時に裏打ちされたブランド」です。これらユニリーバブランドと、どこかのプライベートブランドや小規模会社ブランドが並んでいたら、よくわかるユニリーバブランドを多少高くても手にすると思われます(ドラッグストアでの値札で少し高くついてても売れていくのが、その証拠です)。知名度からくる安心感ですね。

しかしユニリーバは黒人差別表現の広告をしていました。

ユニリーバ、「ノーマル」という言葉を製品や広告から消す | ポートフォリオ・オランダニュース
食品、洗剤、美容製品の大手ユニリーバ社は、コスメやシャンプーなどの美容製品から「ノーマル」という言葉を消すと発

2017年~のBeauty伸び悩みはここからきているのかもしれません。

●Foods&Refreshment製品

ユニリーバ公式サイトより
楽天市場HPより

これらのブランドに対しては、いまさら説明不要かと思います。パッケージ見ただけで味が想像できるものばかりでしょう。これが多少高くても売れるユニリーバ、となる所以です。高級アイスのベン&ジェリーを除けば、不況下で買い控えする製品でもないと思います。

●株主への還元姿勢

 >配当金・一株利益の推移は?

ユニリーバ(UL)は米国株でないのに「配当貴族」と、珍しい存在です。(配当貴族は本当はS&P500採用銘柄だけの呼び名ですが、あまりにも連続増配25年超=ぜんぶ配当貴族と呼ばれているので本稿でもそう扱います)

一株利益も右肩上がりで、配当性向は80%程度。まだ連続増配できる余裕があります。(ユーロ建て連続増配の為、ドル建てでみた上記グラフはデコボコしています)

そしてユニリーバ(UL)は英国ADR株と申し上げました。配当の現地課税がなく、より沢山受け取れるという事です。しかも高配当だし、連続増配なので減配リスクも少な目です。(※連続増配が長い株ほど、長期リターンがいい傾向は別記事でも検証すみです)


現地源泉税率
国別源泉税率税引後受取率
米国株10%71.72%
英国株0%79.69%
オーストラリア株0%79.69%
インド株0%79.69%
メキシコ株0%79.69%
カナダ株15%67.73%
ロシア株15%67.73%
アイルランド株20%63.75%
台湾株21%62.95%
デンマーク株27%58.17%
ベルギー株30%55.78%
スイス株35%51.80%

 >株数推移は(自社株買いによる減)

年間で1%ずつ程度の自社株買いをしてくれています。バラツキはありますが。ユニリーバ(UL)の株主還元は 「自社株買いでの株数減<配当金」 といえそうです。

●将来性

 >売上成長率は?

リーマンショックの2008➡2009年は株価ももちろんですが、利益はそれ以上に減ってしまいました。利益減少は新工場稼働や研究費増額といったコスト高ではなく、純粋に業績不振でした。化粧品が一番のドル箱であるいじょう、不景気で減速するのは致し方ないです。しかし落ち方はS&P500のそれより軽いうえ、その後の値戻しも早く、V字回復できています。回復の速さを考えると、やはりディフェンシブ株といって差し支えないです。

2017年末の株価上昇は、なんといっても「あのバフェット氏が、欲しがったから」に尽きます。クラフトハインツがユニリーバ(UL)を買収しようとしたのが2017年2月でして、ユニリーバ側の拒否で不成立でした。しかしクラフトハインツといえばバフェット銘柄ですので、バフェット氏が仕掛けた買収なのは一目瞭然。それで株価が上がりました。

2019年の利益減はインド等新興国売上でコケた為、2020年の利益減はコロナで化粧品売上(一番のドル箱分野です)でコケた為です。

この15年間を通じて、ユニリーバ(UL)の株価は2.6倍なのに利益は1.8倍にしかのびず、つまり割高化しました。じっさい今(2021年4月)のPERも23.9と高め。正直いまこの瞬間に買うべき株ではないでしょう。

 > 近年のトータルリターンは?(2001~2020年)

ユニリーバ(UL)の12年間は、ザックリ言えば株価は2倍・リターンは3.5倍です。リターンがこんなに良いのは「ずっと4%前後の高配当だった」「英国ADRで受取配当金が多かった」からだといえます。私は配当金の再投資(配当金でおなじ銘柄を買う事)を各所で訴えていますが、こういう「リターンを加速させる」例だってあるし、別の例として「株価低迷してもリターンを悪化させない」例もあるからです(グラクソスミスGSKがまさにこの例です)。

 >利益率は?

製薬会社の25%をみていると、利益率17%はいかにも低いです。それでも10%は超えているので、合格です。

細分野3分野での大別
Skin CleaningBeauty & Personal Care
Hair careBeauty & Personal Care
DeodorantsBeauty & Personal Care
Skin CareBeauty & Personal Care
Ice creamFoods & Refreshment
SavouryFoods & Refreshment
DressingsFoods & Refreshment
TeaFoods & Refreshment
Home & HygieneHome Care
FabricHome Care
OtherOther

3領域別にわけて利率をみると、はっきりとBeauty製品での利率がいいことが解る上、売上高もBeautyがトップです。ここはコロナショックでこけた部分ですので、コロナが収まらない事には苦しいでしょう。

 >財政健全性は?

※一番右下にみえるのが最新版のDEレシオです。

 >割安性は?現在の株価は?

●総括(バリュー投資家の目線で)

近年割高化していて(PER23と高め)、財政もそこまでいいわけではなく(DEレシオ1.6,流動比率80%と微妙)、正直この瞬間にオススメできる株ではありません。しかし商材としては永続性あるとかんがえてよく、少し割安化したら大量買いしてもいいと思います。

ただ欧州株ということで「ヨーロッパ人の哲学」がいきる会社です。その哲学とはヨーロッパ人は「超長期でものごとを考えて行動できる」民族だからです。たとえば街並み一つとってもバロック時代の数百年前の建築が林立しています(使い捨てず古い物を大切にできます)。環境意識をとっても地球でいちばん温室効果ガス削減・プラスチック禁止に積極的ですよね。企業理念も同じで先を見据えていて、インドでの啓発活動➡自社製品の売りあげにつなげる、という事に成功しています。年次報告書に温室効果ガス削減について書くのは、欧州企業がいちばん詳しいです。

私はユニリーバ社のインドでの啓発活動➡売上につなげた功績、年次報告書に記載した詳しい環境対策を大変買っていて、割高でも単価56USDで、じつに150株も購入しています。株価はまったく上がりませんが、高配当である程度取り返せています。

〇参考にしたページ

https://www.unilever.com/Images/annual-report-and-accounts-2020_tcm244-559824_en.pdf

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