病院薬剤師していると、冷や汗流すことがしばしばです。「良かれと思って指導した事・やった事」があだになる事も。
【大腸癌➡イレウス起こした人】
大腸癌はステージⅠ~Ⅳまであり、Ⅳが最重症です(5年生存率は23%程度と低い)。
そんな重症の方は抗がん剤➡小さくなったら手術、とする方が多いです。でも抗がん剤って、体力使うんですよね。
●体力が無いと使えない(白血球3000以上、貧血なし、など基準有り)
●体力を消耗するので、以下副作用の発生が多い。
➡食欲がおちる・免疫低下する・貧血起こす・脱毛・皮膚障害
抗がん剤で体力使うのに、体力がないと実行できないのが抗がん剤です。だから僕は指導するんです。
抗がん剤は体力勝負です。風邪をとにかく引かない。手洗いマスク消毒は必須です。
体力落とさない為、元気なうちは運動もして、消化のいいものをよく食べて。
こうやって指導するんです。でも消化器系のがんといえば、コワイのはイレウスですよね。
(胃腸の管がつまって、食べ物が溜まってパンパンに膨らむ事。消化管は血流多い為、出血すれば致命的)
だから、便通は下痢気味になるようにコントロールするんです。
(具体的には酸化マグネシウム錠を調節投与、ひどい下痢なら減らすよう指示する)
ですが、それでもある日、僕の担当患者○○さんがイレウスで入院してしまいました。
○○さん、どうしたんですか?
体力つけないとと思って食べすぎた。味がしないから濃い味付けを、バクバク食べたさ。
こういわれて、冷や汗ながしました。僕は「抗がん剤は体力勝負だから、よく食べるように。食べ方は管理栄養士さんに聞いてね」と伝えているのです。それで、僕の良く食べるように、が解釈されてイレウスになったんじゃないかと。正直、訴訟も覚悟していました。
・・・実際はそうではなく、抗がん剤の副作用:味覚障害でした。味覚がしないから、濃い味付けをバクバク食べていたのです。それは完全に、管理栄養士さんの指導を無視していました。
大腸がんでただでさえ動き悪い人間が、抗がん剤で大腸にダメージを受けて、さらに食べすぎるなんてリスクが大きすぎました。この方、あとで管理栄養士さんに叱られて、反省されていました。
服薬指導って、一歩間違うと本当に危険で拡大解釈されてしまいます。それと消化器系がんでの味覚障害は、一歩間違うとイレウスが怖いです。
管理栄養士さんも怖かったようで、あとで相談されました。
抗がん剤で、食べる系の副作用が解るようにしてくれない?
わかった。薬の名前打ち込めば、副作用が解るようなシート作るわ。うちにある抗がん剤に絞るけどね。
そうやって、Excelで副作用が解るシートをつくりました。 中小病院向けの為薬数が少ないですが(多いと薬探すのが面倒になる為)、よろしければ活用下さい。
【Excelで副作用が解るシート】
使い方を簡単に載せておきます。
【〇〇-mabはみんな一緒・・・じゃない!】
抗がん剤で2010年あたりから、「〇〇-mab」シリーズの薬が出てくるようになりましたね。大腸癌でよくあるのは、このシリーズです。
●mFOLFOX6+P-mab
●mFOLFOX6+C-mab
●mFOLFOX6+R-mab
○○-mabは全部、同じように14日間隔だ!
・・・違います。じつはC-mab(セツキシマブ、アービタックス®)だけ、7日間隔なんです。このレジメンの人だけ、毎週通院になるんです。
セツキシマブは、毎週投与いるぞ。主治医にも言わないといけないよ。
・・・物が抗がん剤なので、脂汗でした。急いで主治医に報告したところ、やっぱり「知らなかった」と言っていました。それでは困るので、投与スケジュールを変えてもらいました。患者さんにはいきさつを説明して、(当初説明に無かった)毎週通院の旨OKしていただけました(本当は導入時の説明で、毎週投与の旨説明しないといけなかった)
抗がん剤レジメンの管理をしていると、本当に怖い思いをします。怖いだけでなく、投与設計も複雑で管理しにくいんです。怖いから、負担を少しでも減らしたい。Excelでレジメンを作り、またExcel計算機能を使って自動投与計算も、できるようにしました。
レジメンは僕の小病院では50近く有り、それ全部を僕一人で管理(!)しています。
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