病院薬剤師は、冷や汗流すこともしばしばです。
【よかれと思った尿の薬が】
高齢の男性患者さんで、オシッコが出ないと悩んでた方がいました。

おれ1日にオシッコ6回も出るんだよ。何とかしてほしい。

(それは困るな。トイレ傍から離れられんし)
解りました。主治医に相談します。

(主治医相談、追加の薬をもって訪室)
オシッコの薬、今日夕方からです。これで回数へると思います。

おお良かった。ありがとう!
追加の薬は「プロピベリン(バップフォー®)錠10㎎」という薬でした。詳しく説明すると、いわゆる抗コリン薬です。膀胱平滑筋細胞のコリン受容体をブロックすることで、膀胱が拡張し(タンクが大きくなる)、それでオシッコ回数が減るのです。
しかし、コリン受容体は膀胱平滑筋細胞以外にも存在します。それが尿道細胞で、ここを抗コリンすると、こんどは尿道が狭くなります。
・・・つまり両方をブロックしてしまうと、「膀胱タンクは大きくなっていいのだが、尿道が狭くなりオシッコが出なくなる」危険性もあります。
もうお気づきでしょうか。この人は、オシッコが出なくなりました。

オシッコ回数が減ったというか、いきんでも出なくなった。膀胱がパンパンなのが解るんだ。苦しいよ・・

ええ、どうしたのですか。○○先生(土曜当番の医師)に相談します。待っててください!
・・・○○先生は結果として、看護師さんに導尿を指示。次にプロピベリンを取りやめました。副作用での尿閉を疑った為です。
土曜当番時で、薬剤師の僕が非番だったので、気付くのはすべてが終わった月曜日でした。土曜日にもし僕が居て、訪室・副作用チェックできていたら気が付けるのですが、こうやってうまく行かない事もあります。僕にできたのは、電子カルテの「副作用薬リスト」にプロピベリンを記入して、次回入力からエラーが出るように設定した事だけ。
それに患者さんが「プロピベリン飲み出してから、僕、尿閉になったんだ」なんて絶対言いません。最初は腹痛って言われるので、尿閉と見抜くのは結構難しいです。昨日始めたばかりのプロピベリンを、疑って問診しないと、見抜けません。薬を疑って問診する、それこそ薬剤師の仕事ですよね。
【麻薬の皮下注射、そもそもできない】
がん末期になると、疼痛が激しくなります。医療用麻薬を使わないと、痛みが取れません。(時々使っていても、痛み取れません)
がん末期だと経口投与できないので、注射or貼り薬になります。
その注射だと、モルヒネ塩酸塩を皮下注射で24時間投与、などとなります。
・・・が、しかし。

茶助さん!
モルヒネ使えないよ。どうやって皮下注射するの?

ええ、どういう事?
(痛み止めが使えないなんて、と患者さん想って焦る)

○○さん、皮下がないよ。がんで消耗して、人体模型みたいに骨と皮なの!どこに皮下があるの?

(モルヒネ塩酸塩注の添付文書調べるが、皮下としか記載なし)
ええ~、どうしよう。○○さん、大丈夫かなぁ・・・
・・・ちなみに皮下投与できない場合は、こうです。
②皮をつまみ上げて、そこに注射する
③皮下ではなく、静脈に投与する(皮下投与と薬物動態が大差なければ)
このときは、③を採用しました。モルヒネ塩酸塩が、皮下投与と静脈投与で大差ないのが幸いでした。患者さんの地獄の痛み(想像しかできませんが)を想うと、本当に冷や汗がでました。
ちなみに、薬情報の調べ方は、「PMDAサイト➡該当の添付文書を開く➡ctrl+Fキーで、調べたいWordを打ち込み➡Enterでヒットする」方法が早いです。医薬品情報の調べ方ですが、いずれ別の記事にしたいと思います。
この方法は、スマホではできません(ctrl+Fキーを押せない)。僕がネットの繋がる、SIMフリーノートパソコンを使う理由はこれです。いつも持ち歩いていますが、高い値段に見合った働きをしています。
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