【製薬株】アッヴィ(ABBV)個別株分析(21年04月)

個別銘柄(ヘルスケア>製薬株)

世界指折りの製薬会社・アッヴィ(銘柄ティッカー:ABBV)について。

アッヴィ(ABBV)は2013年1月1日、旧アボット(ABT)からの分社化で誕生した会社です。そのため2012年以前の売り上げなどデータは存在しません。

●株(ファンド)の概要~そもそも何してるところ?

 >セクター11分類・細かな業種・ディフェンシブor中間or景気敏感

GICSのセクター11分類でいえば、「ヘルスケア」にあたります。細かな業種は製薬会社(Pharmaceuticals)に該当します。リーマンショックの時期を経験していませんが、アボットがショックに強かったことを考えるとやはり、不景気耐性の強いディフェンシブ株といえそうです。

 >その売上の内訳は?内訳別の将来性は?

●地域別の売上内訳

ほとんど米国依存の会社です。それは創業当時から変わらない特徴です。

2019➡2020年にかけて大幅売上拡大です。業績好調・・・ではなく、これは近年の大手製薬企業にありがちなある理由です。・・・そう、アラガン社買収によるアラガン売上の取り込みの為です。アラガンといえばボトックス注®依存の会社だったので、ボトックス分がかなり大きいです。

●製品領域別の売上内訳

免疫薬の割合が50%もあります。これはほぼヒュミラのためです。

免疫薬の伸びはほぼヒュミラ®のためで、米国特許の切れる2023年までは持ちこたえると考えてよいでしょう。抗がん剤が近年伸びていますが、ここは元々アッヴィ(ABBV)が持っていた2つの抗がん剤のためです。

そして・・・その他の割合が急拡大していて、ここが2019➡2020の伸びた部分の大部分をしめます。この急拡大部分は、アラガン社から買収した薬(ボトックス注射®、Vraylar)が大きいです。

 >主要な個別製品の説明

●ヒュミラ注®

医療用医薬品で、その中でもバイオ医薬品(さらにその中でも分子標的薬剤)に属します。おもな対象疾患は関節リウマチで、すっきり治すのではなく使用中は症状を抑え続けるタイプの薬です(すっきり治せるリウマチ薬は現在存在しません)。関節リウマチは患者数がとても多く、しかもすっきり治せず、しかも分子標的薬剤登場までの治療薬は副作用がきついものばかりだったので、凄く大きなマーケットになっています。おまけにヒュミラ自体も優秀で、「ヒト型抗体製剤(アナフィラキシー危険性が小さい)」「自己注射製剤(通院の負担軽減)」「たしかな有効性データ」ときているので、それゆえ売上が大きかったのです。

そして2020年末時点でヒュミラは売上世界一の個別医薬品でして、2位のキイトルーダ®(メルク製品)にダブルスコアをつけています。メイン売上国は米国なので、米国特許のある2023年までは安泰と考えられます。

しかしあまりにもヒュミラで成功したため売上の50%はヒュミラという依存ぶりです。アラガン買収でも50%までしか下げられなかった、というのが正確な状態です。

●株主への還元姿勢

 >配当金・一株利益の推移は?

アッヴィ(ABBV)が医療用医薬品しか売っていないのに知名度があったのは、「高配当のディフェンシブ株」という強烈な個性のためでした。

アッヴィ(ABBV)としては連続増配8年なのですが、アボット(ABT)時代をふくめると連続増配は50年近い、配当貴族銘柄といえます。(=旧アボット株を保有し続けた場合、配当金受取額は現在の方が高い)。現在もたしかに高配当で、近年利回り5%越の大手製薬といえばほかにグラクソスミス(GSK)の5.8%くらいしかないです。


現地源泉税率
国別源泉税率税引後受取率
米国株10%71.72%
英国株0%79.69%
オーストラリア株0%79.69%
インド株0%79.69%
メキシコ株0%79.69%
カナダ株15%67.73%
ロシア株15%67.73%
アイルランド株20%63.75%
台湾株21%62.95%
デンマーク株27%58.17%
ベルギー株30%55.78%
スイス株35%51.80%

その高配当は、米国株ですので72%程度をじっさいに受取可能です。

 >株数推移は(自社株買いによる減)

この会社の株主還元性は 「自社株買いによる1株価値UP < 配当金」 といえそうです。

●将来性

 >売上成長率は?

2013年1月1日の誕生以降、つねにS&P500を上回る株価成長・利益をもたらしてきました。しかし売上内訳を考えるに、これが未来に続くとは言い切れません。

 > 近年のトータルリターンは?(2001~2020年)

アッヴィ(ABBV)は近年好調でして、多くのメガファーマと同じく平均を上回るリターンを持っています。

 >利益率は?

営業利益率はつねに30%を超えてきました。大手製薬会社でも20~25%が殆どでしたので、かなり独占性のある商材をもっていることになります(真似されたら値下げ合戦➡利益率低下となるはずですので)。もちろんヒュミラ®のおかげでした。

【近年のアッヴィ(ABBV)の買収・売却】
●2019年6月24日、アラガンを買収。その額630Million USD。
※ほぼ同時期にブリストルマイヤーズ(BMY)が、730Million USDでセルジーンを買収しています。ともに会社規模は同じくらい。違うのはその後の利益の伸び方で、ブリストルマイヤーズ(BMY)には大負けしています。

 >財政健全性は?

アラガン買収の瞬間に株価大きく下げていました(90➡60USDへ急降下)が、その後株価は回復しています。しかし負債が一気にふえたため、財政は大変苦しくなりました。その為ヒュミラの後継が当たらないと、返済に黄信号です。ギャンブル性が強くなっています。

※一番右下にみえるのが最新版のDEレシオです。

 >割安性は?現在の株価は?

●総括(薬剤師の目線で)

薬剤師として見るとそれほど魅力的ではありません。ヒュミラはたしかに優秀な薬でしてダブルスコア差の世界一売上となる理由も納得です。しかし近年叫ばれていたヒュミラ依存は、全く取れていません。ほかにブロックバスター(10Billion USD売上の薬)候補が存在しないし、未だにアッヴィのMRさんが、田舎の小病院薬剤部(管理人勤務)にヒュミラの有効性パンフレットを持ってきているからです(なんとか繋ぎ止めたい状態です)。そのヒュミラは特許切れたてなので、バイオシミラーに喰われることは目に見えています。だからこそアラガン買収したのですが、アラガン製品の主力は売上低下、ほかは売上小さい薬ばかりです。

投資家としてみると魅力的です。高配当・連続増配・ヘルスケアセクターという「シーゲル理論」を持っているからです。しかし利益額低下の為PERが高めになっています。売り上げ増も一見すると業績好調のように見えますからね(実際はアラガン買収のためで成長ではない)。

私はこの場合薬剤師としての勘を優先するため、一切購入しません。

〇参考にしたサイト

https://investors.abbvie.com/static-files/47512e94-a9a4-4035-8dbc-6eb59116bb05

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