2019年の年初~年末までの売り上げから、ランキングを作ってみました。僕が病院薬剤師で医薬品に詳しいのと、Healthセクターは今後も成長見込まれる分野だからです。
薬剤師というのは「これからも伸びる分野」を、現場で肌で感じられるメリットがあります。
【製薬会社の世界ランク】
製薬企業に投資される方は、製薬会社の「世界ランク」も考えましょう。日本ランクではあまり意味が有りません。日本メーカーであっても世界展開をして、売り上げを稼いでいますからね。
Rank | Company | ticker | 本社 | 2019 | 2018 |
1 | ロシュ | ー | スイス | 61,466 | 56,846 |
2 | ファイザー | PFE | 米国 | 51,750 | 53,647 |
3 | ノバルティス | NVS | スイス | 47,445 | 43,085 |
4 | メルク | MRK | 米国 | 46,840 | 42,294 |
5 | GSK | GSK | 英国 | 43,940 | – |
6 | J&J(製薬部門) | JNJ | 米国 | 42,198 | 40,734 |
7 | サノフィ | SNY | フランス | 39,739 | 37,909 |
8 | アッヴィ | ABBV | 米国 | 33,266 | 32,753 |
9 | 武田薬品 | TAK | 日本 | 30,120 | 15,239 |
10 | ブリストルマイヤーズ | BMY | 米国 | 26,145 | 22,561 |
11 | アストラゼネカ | AZN | 英国 | 24,384 | 22,465 |
12 | アムジェン | AMGN | 米国 | 23,362 | 23,747 |
13 | ギリアド・サイエンシズ | GILD | 米国 | 22,449 | 22,127 |
14 | イーライリリー | LLY | 米国 | 22,319 | 21,493 |
15 | バイエル | ー | ドイツ | 19,758 | 19,081 |
16 | ノボノルディスク | NVO | デンマーク | 18,303 | 16,774 |
17 | テバ | ー | イスラエル | 16,887 | 18,271 |
ベーリンガー | 非公開 | ドイツ | – | 19,247 | |
18 | アラガン(2020年 AbbVieへ) | ー | 米国 | 16,088 | 15,787 |
19 | バイオジェン | BIIB | 米国 | 14,378 | 13,453 |
ロシュは急増が予想される、がん領域の分子標的薬剤に力を入れています。下記ランク表でも、分子標的薬剤をいくつもランクに送り込んでいます。やはりニーズにマッチした会社なのでしょう。残念ながら現在(2020年5月)米国上場しておらず、投資できません。
Pfizerは分子標的薬剤で、エンブレルをランク上位に送り込んでいます。ただしエンブレルは特許が切れており、減少傾向が続くので期待できません。分子標的薬剤は新薬開発ではなく、バイオシミラーを多発して追従しています。バイオシミラー戦略はこれから当たるのでは、と考えて投資しています。(別記事で分析しています)
メルクは日本では「万有製薬」という子会社で販売していました(現在は廃止)。キイトルーダ®など、注目の薬が多く、僕は成長株だと感じています。その為別記事で分析を行っています。
AbbVieはヒュミラの会社です。ヒュミラリスク(特許切れ)で投資家に敬遠されていますので、株価は割安・高配当です。僕はそこまでリスクじゃないと思っているので、お買い得なのではと思っています。注目しているので、別記事で分析を行っています。
製薬会社で、投資先として調べる時は「連続増配かどうか」を調べてください。調べ方はコチラでまとめさせていただきました。参考にして下さい。
製薬会社ごとの詳しい分析は、また載せさせていただきます。
【各医薬品ごとのランキング】
2018年で申し訳ありませんが、2019年も首位はヒュミラだそうですね。
さきの製薬会社ランクの会社が、ここでも顔をだします。僕はキーワードは「分子標的薬剤」「がん」「肺疾患」だと考えています。分子標的を作れるような会社は、今後も先発分子標的・バイオ後続品とも開発できて維持していくのではないかと。
Rank | Drug | Company | 2018 |
1 | ★ヒュミラ | アッヴィ | 25,485 |
2 | ★ランタス | サノフィ | 10,414 |
3 | ★エンブレル | ファイザー | 10,181 |
4 | エリキュース | ブリストル | 10,121 |
5 | ザレルト | バイエル | 9,178 |
6 | ★レミケード | JNJ | 7,768 |
7 | ★オプジーポ | 小野薬品 | 7,543 |
8 | ★ノボラピッド | ノボノルディスク | 7,354 |
9 | ★キイトルーダ | メルク | 7,216 |
10 | ジャヌビア | MSD | 7,123 |
11 | リリカ | ファイザー | 6,933 |
12 | ★ステラーラ | ヤンセン | 6,832 |
13 | ★ハーセプチン | ロシュ | 6,686 |
14 | セレタイド | グラクソスミス | 6,559 |
15 | ★マブゼラ | ロシュ | 6,462 |
16 | ★アバスチン | ロシュ | 6,343 |
17 | ★ヒューマログ | イーライリリー | 6,194 |
18 | ★エブクルーサ | ギリアド | 5,855 |
19 | ★ゲンボイヤ | ギリアド | 5,621 |
20 | シムビコート | アストラゼネカ | 5,329 |
★マークは「分子標的薬剤」で、無印は「低分子薬」です。
★マークわざわざ付けたのは、分子標的薬剤か低分子薬かで、特許切れ後の売り上げが変わると考える為です。
ヒュミラはダブルスコアをつけての首位です。先ほどの製薬会社ランクをみて解りますが、実は2018年売上が70%、このヒュミラだったのです。「ヒュミラ依存のアッヴィは危ない」的に言われていますが、私はそこまでではないと思います。(それは現場薬剤師として、この会社の開発中新薬の、目の付け所がいいなと感じるからです)
今後も分子標的薬剤が開発されていく流れなので、ランク上位を占めてくと思います。これらは高価な薬で、一年間薬価は低分子薬に比べて1~2桁高くなります。
余談:オーソライズドジェネリックの破壊力
オルメテック®、クレストール®の激減は、いずれも2017年にオーソライズドジェネリック(AG)が発売されたためです。AGは「先発医薬品と有効成分だけでなく、その他添加物・製法まで同じ後発品」なので、破壊力抜群です。たとえばオルメテック®のAGはオルメサルタン「DSEP」で、価格は半額くらいです。
オルメテック®のままでいいよ。後発品は有効成分以外違うんでしょ?体にあわないよ。
大丈夫。オルメサルタン「DSEP」なら中身全く同じで、名前だけ違うけど半額なんです!
なんだって!からだに入るものは全く同じなのに安いのか。じゃあ変更してくれ!
・・・「安くて、中身はまったく同一」となるので、とても変更させやすいですよね。こうやって次々変更されて、オルメテック®は66%減となりました。僕は「低分子薬は、後発品が発売されたら終わり」と書いてきましたが、「AGが出たら迅速に終わり」です。
【現場で感じる今後】
僕が病院薬剤師なので、今後の展望も少しみえます。株価の動向までは見えません(見えたらイイけど・・・)。
①高齢化は地球全体で進む為、加齢で有病率のあがる疾患は増える
➡例:がん・心疾患・脳梗塞・脳出血
➡これらの薬開発する会社は伸びる?
②高齢化するが、死ぬ間際に「フルコース」でなく「ナチュラルコース」を望む患者が増えている
➡死亡率は増えても、看取りの費用は減る?
③大気汚染は年々深刻化。肺疾患は増える一方
➡例:気管支喘息、間質性肺炎、COPD、肺がん
➡これらの薬開発する会社は伸びる?
④分子標的薬剤の使用頻度は(拡大のペースよりも早く)急増している
➡分子標的薬剤を開発する会社・バイオシミラーを作れる会社は伸びる?
➡しかし分子標的薬剤はバイオシミラーできても置き換わりにくい
(=一旦発売すれば割と安泰)
③大気汚染の深刻化
インド・中国・タイ・マレーシアなどの伸び盛りの国の大都市では、大気汚染が深刻なのはご存じかと思います。経済成長もしてきているので、そうなると急増が予想されるのが呼吸器薬です。Yahoo!ニュースなどで「コロナショックで自動車激減し、空気きれいになったので喘息が治った」なんてニュース、目にしていると思います。経済が再びまわって大気汚染が起こり、経済成長で受診率が改善したら、間違いなく呼吸器疾患は増えてしまいます。
以上は株価から機械的に考えた事です。僕個人的には自然愛好家なので(田舎移住とCO2削減に取り組むほどです)、空気がきれいになってほしいです。もし株で利益あげても、一部はクリーン事業に寄付したい位なんです。
④の例;分子標的薬剤のバイオシミラーについて
お薬は、2分類できます。「分子標的薬剤」があるのなら、分子標的でない薬剤は「低分子薬剤」です。そして、これらの後発品の扱いも違います。
分類 | 後発品名 | 特徴 |
低分子薬剤 | 後発品 | 安い・ 真似しやすい |
分子標的薬剤 | バイオ後続品 (バイオシミラー) | 高い・ 真似しにくい |
こんな感じです。真似しにくいというのは、分子標的薬剤の特許がきれて同一成分を作ろうにも、施設がものすごく大掛かりになる為です。当然体力のある会社や、すでに別の分子標的薬をつくる会社にしかできません。真似しやすい・真似しにくいの例として、「リピトール錠®(低分子)」と「ヒュミラ注射®(分子標的)」を挙げます。どちらも売上世界一を記録した医薬品です。
<リピトール錠®>
2001年には「将来有望な薬」とまで書かれていました。(旧山之内製薬のレポート)
実際10年以上にわたり、世界首位の売り上げ医薬品でした。しかし2011年11月30日、日本・米国特許は失効。すると米国は保険制度の関係上「強制的に」後発品に置き換わります。実際売上は急落し、いまやベスト50にも顔を出さなくなりました。
病院薬剤師の僕も、リピトールを触らなくなりました。調剤薬局でも殆どが、後発のアトルバスタチン錠に置き換わっています。ドル箱を特許切れで失ったPfizer社は、世界一から陥落しました。
低分子であるばかりにあっという間に売り上げ激減したんです。
<ヒュミラ注®>
分子標的薬剤の例です。2019年現在、2位以下にダブルスコア以上つけて首位の薬です。しかし欧州での特許は2018年に、きれています。米国での特許も2023年まで。
特許切れしても置き換わらないのは、ヒュミラだけではありません。2位ランタスは売上3%減、3位エンブレルは売上8.5%減です。バイオシミラーが出ても、先発分子標的薬剤を脅かせないんですね。
医薬品の特許切れ=即座に置き換わり、と考える方が多いです。じっさい米国では強制的に後発品に置き換わります。しかし分子標的は、思ったほど置き換わっていません。げんざい特許切れ分子標的薬剤で、先発品売り上げが後発品に負けているのはグラン®くらいですからね。
④将来の展望:製薬メーカーに必要なスペック
先ほど、今後間違いなく伸びるのは「がん、心疾患、呼吸器疾患」と「分子標的薬剤」と述べました。だからがん領域の分子標的薬剤なんかはバッチリ伸びます。代表的な医薬品名で言えば「オプジーポ®」「アバスチン®」「ベクティビックス®」「アービタックス®」「サイラムザ®」「キイトルーダ®」あたりですね。
これらの先発品メーカーは今後も堅いでしょう。先発品売り上げはなかなか落ちないし、しかも「先発品開発で培った、バイオシミラーをつくるノウハウと設備」も備えています。例をあげるなら、ヒュミラ®を作れるAbbVie社は、ほかのバイオシミラー開発もしやすいって事です。抗がん剤領域の分子標的を多数発売するRoche社は、やっぱり今後も伸びる分野ですでに結果を出しています(だから世界首位の製薬会社なんです)。
オプジーポ®といえば、日本初のがん領域の分子標的薬剤です。小野薬品工業が作っています。小野薬品のオプジーポ®依存は投資家には耳が痛いですが、この会社は既に伸びる分野での結果の出し方を知っています。
展望を知る為のサイトも
こちらのサイトが結構ためになります。もちろん製薬メーカーのHPも拝見するのですが、ランキングがまとまっているのでオススメです。
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