薬剤師していると、患者さんからよく聞かれることです。
薬アレルギーだぁ?そんなもん聞いて何になるんだ?
・・・いいえ、薬アレルギー確認は、ものすごく大切な事です。患者さんの人生が変わりますからね。薬アレルギーは、舐めてはいけませんよ。患者さんは、心して洗いざらいお答えください。薬剤師さんは、必ず聞いて見落とさないようにしてください。
主張:薬アレルギーは、確認必要です。
薬剤師➡患者さんに定型文のように毎回聞かれる「薬アレルギー」ですが、じつはとても大事です。
あまりに大事なので、薬剤師さんは情報を絶対漏らさず拾って記録・患者さんの体に絶対はいらないようにしてください。
理由:見落としで命に係わる例がチラホラ
実際に薬アレルギーの見落とし・確認ミスで「命にかかわった」例もいくつもあります。
①内服の抗生剤で発疹
②点滴の抗生剤で死亡例
・・・どうでしょうか?怖くなってきたと思います。
そして僕も本日、カピステンアレルギーの方にモーラステープ処方という、大変怖い症例に出くわしました。アレルギー歴に記載がなかったのですが、患者さんが親切に答えてくれる&たまたま当院受診時のアレルギー記録が残ってたという「2重の幸運」に恵まれました。
具体例:こわい薬アレルギーの例
①内服の抗生剤で発疹
以前処方歴があったことで、「サワシリン等でかゆみ」の電子薬歴記載とおくすり手帳のアレルギー歴のサワシリン記載を見逃し、サワシリンを 7 日分投薬した。10 日後蕁麻疹が出たと受診、アタラックスPが処方となった。
疑義照会に関するヒヤリ・ハット より引用
この症例は被害が蕁麻疹ですんで、不幸中の幸いです。
患者アレルギー歴のところに、予め「サワシリン」と記載しておくべき症例でした。かりに記載すれば全薬剤師が読みますし、レセコンによってはサワシリンと同成分薬を入力するとエラーになります。そうやってはじいてくれますからね。
②点滴の抗生剤で死亡例
患者さんが(問診票で)薬アレルギーを伝えたのに、医療者が確認できず、死亡してしまった例です。
蜂窩織炎の為に整形外科を受診。問診票に「CCL 全身真っ赤」と記載された。また「CCL禁 第一世代抗生剤はダメ」と記載されたお薬手帳を所持したが提出されず、診察医やほかの医療者にアレルギーが確認されなかった。
警鐘事例~事例から学ぶ より引用
抗菌薬セファゾリン(第一世代セフェム)が投与されて数秒の時点で「口の中が熱い、全身が熱い」と訴え有。3分後には血圧測定不能となった。
(中略)
低酸素脳症を発症。(中略)積極的治療は行えず約11か月後、死亡した。
患者さんは60台と若かったですが、薬アレルギーによるショック症状の為亡くなってしまいました。情報がうまく共有できて、注意したら防げた事故でした。
薬アレルギーはこういったショックを起こしやすいのです。
薬アレルギーは、拾いつくさないとダメです
これは僕の本当にあった症例です。
熱中症で入院したての方に、「首が痛いから」と「モーラステープL40㎎」が処方されていました。
僕は普通にシップ剤をお渡しする感覚でいました。モーラスだから光線過敏症おこしやすい、貼ったところは光を避けましょうとでも言おうかと。あ、入院したての方だから初回問診もしないとな・・。そんな気持ちで病室に向かったのです。
「薬アレルギーはありますか?」の問いに、「薬のアレルギーはありません」と。
ホッとしたのはつかの間でした。「薬のアレルギーじゃないんだけど、5年前に酷い腰痛でかかって、鎮痛剤注射したらショック起こした。倒れ込んで、ステロイドとアドレナリンの注射して暫く休んだよ。薬の名前忘れたけど、この病院での注射だよ。」
・・・・え、ショック症状!?と思いました。脳裏によぎったのはモーラスと同成分(つまりケトプロフェン)の鎮痛剤注射は世の中に存在すること。そのケトプロフェンの注射だったら嫌だなって事。
当然、モーラステープはお渡ししません。いざ5年前の受診記録をたどると・・・「カピステン注射のあと倒れ込んだ。ステロイドとアドレナリン注射後、ベッドで休んでから回復した」とありました。カピステン=成分ケトプロフェンですからね。ビンゴでした。
そこでやることは4つあります。4つとは、「この患者さんの体に、絶対にケトプロフェンを入れさせないためのアクション」です。
●主治医に連絡し、ケトプロフェン製剤を全て他成分に変更頂く(モーラス➡ゼポラスパップへ変更頂きました)
●看護師に連絡し、当院のケトプロフェン製剤名を全て告げ(モーラステープとカピステン注射)、それを絶対使わない様連絡
●アレルギー歴に「カピステン注射:ショック発生」と記載(➡次回より電子カルテが自動で弾いてくれます)
●指示簿指示(この症状のときはこの薬投与・この処置をという命令)にケトプロフェンが入っていたら全て変更してもらう
こうやって、「ケトプロフェン投与があり得ない」ようにするんです。
この症例では、うっかりモーラスを渡してしまわず、本当に命拾いしました。
おわりに:薬アレルギーは鬱陶しがられても確認します!
アレルギー確認するのは別に、薬剤算定が欲しいからではありません。間違った処置をして、患者さんに被害を出さないための予防線なんですね。
だから鬱陶しがられても、ちゃんと確認することになります。
病院薬剤師は、ほかにも責任の重い仕事もかかえています。
もし病院薬剤師の良さを知りたい方、こちらにザックリまとめました。参考にください。
病院薬剤師の一日を知りたい方はこちらをどうぞ。
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