職を転々とする=不適合・コミュ障
みたいな思い込みが、未だに年配の方には多くて困ります。でも違うと思います。。
日本の今まで➡転職は恥だ、1か所で長く務めるのが名誉。履歴書は少ない方が名誉。
アメリカ・欧米➡人材は点々とするもの。ノウハウを他社にどんどん与えていくもの(ブラックボックスな企業秘密は除く)。履歴書の職歴はアルバイトでも日雇いでもいいから100書くのが名誉。
こんな風になっていますね。僕はアラフォーなのですが、転職4回して現職場は5つ目。転職多くて大丈夫なのかと。アメリカ帰りの友人に相談したところ、「むしろ一か所でしか働けない人は、後々つぶしが利かなくて後悔するよ。良かったねぇ!」とのことでした。
実際に私も、こういう経験をしています。
おなじ63歳の再雇用者でも・・・
たまたま同時期に、4人の「60歳台の再雇用者(おじさん)」と働く機会がありました。
Aさん:薬剤師なってから60過ぎまで、ずっと1つの製薬会社の管理薬剤師
Bさん:薬剤師なってから60過ぎまで、ずっと1つの病院の薬剤師(薬局長)
Cさん:薬剤師経験はさまざま。卸の管理薬剤師➡他社でドラッグストア薬剤師➡薬剤師以外の仕事も経験
Dさん:調剤薬局・ドラッグストア・病院薬剤師・バーテンダーをこなした人。ボランティア活動も沢山いく。
年配の面接官は「CさんDさんは仕事の長続きしない、ワガママな人だ。」とみていました。「Bさんは大きい病院の薬局長もやっていて凄い人だ。」
で、実際調剤薬局の現場で彼ら全員と、働く機会がありました。で、一緒に働いた結果は・・・
Aさん(製薬会社の管理薬剤師一筋)
僕は国家試験は40年前にパスしている。いまも薬剤師って認められているのだから、新しい薬は知らない。
僕はトシだから、仕事のやり方なんて覚えられません。若い子に任せます。
病気と薬の事勉強して知って、それって患者さんの個人情報を調べ上げる事になるでしょう。なんかあったら怖いから、勉強しない。
じゃあ貴方は、薬の事もしらずに患者さんの前で、薬剤師の顔するんですか?薬剤師だと思って相談する人たちを、裏切ってますよ!
・・・こういう感じでした。失敗もいろいろされていて、注意しても繰り返していました。
薬と一緒に処方箋まで渡してしまう(処方箋は薬局で5年保管する義務あり)、患者さんに「あなたは1割負担でいいですね」と余計な事いって激怒させる、薬と関係ない話ばかりをしかける、等。
薬もレボフロキサシン・クラビットすらご存じでなかった。「膀胱炎の消毒目的ですよ」と伝えると、「ああ膀胱炎といえばウイントマイロン®や猪苓湯って決まっているんだよ」と昔の治療薬の話ばかりする。(いまはウイントマイロン®は古すぎて保険切れています)また女性患者さんだったのですが、膀胱炎ですね、と大声で喋って激怒させていました。
なまじ「製薬会社で長くやってこれた自信・プライド」があったのです。それは仕方がないのですが、新しい場所(調剤薬局)でもそれを持ち込んで、イチから覚える気がありませんでした。
Bさん(病院の薬局長)
Aさんと同じような感じでした。
それで、僕は色々な法則を見つけました。
●経験が長い=最近の事情を知らない・学生時代の勉強すら忘れている、パターンが多い(薬剤師なら最近の薬に無知)
●「これまでやってこれた」自信が、若い人に頭を下げさせない。新しい事を覚えられなくなる。
●人事の「この人は一筋で優秀だ!」は、当てにならない。その人事が現場たたき上げだったら、少しは信用できる。
Cさん(転職転勤頻繁だったおじさん)
ザイザルシロップの量が多いね。これ患者の●●ちゃん、眠ってまうて。主治医に電話していい?
(ザイザル去年でたばっかの薬なのに)・・ええ、いいですよ。
僕ね~、調剤薬局は初めてなんだよね。おじさんだから新薬の事抜けとるかも。××さん(僕の名前)、色々教えて下さいね!
いやぁ、Cさん結構勉強されてますよ。僕も小児科門前薬局は慣れないので、僕こそ教えてください。
・・・もうお察しでしょうか。Cさんは慣れないはずの調剤薬局で、早々と順応されていました。患者さん受けもよく、あのおじちゃんがいい、と指名までされていました。
●解らない事は息子位の人間にでも、頭さげて聞いていた
●昔の成功体験に引っ張られず、今の状態(薬剤師なら新薬や新治療方針など)をしっかり勉強している
●転勤転職が多く、「新しい場所に順応する」訓練を何度も受けている
・・・これが、同じ60台男性でも順応できた理由でしょう。
でも、こうやって順応できる年配者は少数派でした。たいていAさんBさんパターンが多かったです。
薬剤師の話になりますが、薬剤師業界は有資格者ってだけで、どの調剤薬局・病院でもウエルカムです。ですが実際は、新卒とベテランとで(逆の意味で)力の差があります。それはどの業界でもそうでしょう。
転職の心得
●転職はマイナスではなく、「順応する訓練を何度も受けた」という勲章
●新しい環境では、息子だろうと頭をさげて聴く。とにかく謝る。
●昔の経験は時に、マイナスの経験。昔語りはその新しい事(薬剤師でいえば新薬・最新の治療方針など)を覚えてからならOK
・・・おそらく年配者が転職歓迎されないのは、給与は高くつくのに新しい事をおぼえてくれなかった、という今までの先輩たちの積み重ねなんです。
転職はむしろ、誇っていいと思います。アメリカ式に、履歴書いっぱいに経験業務内容を書けるようになるのが、理想じゃないかと思っています。日本のサラリーマンが定年後認知症になるのは、この「長年○○一筋」がマイナスだからじゃないか、とさえ考えています。
それと個人的に、薬剤師にやってほしい事があります。
薬剤師免許の更新制(国家試験レベルの学力テストを合格すること)
・・・これはアメリカ・カナダ・欧米ですでにされていることです。じゃないと、薬剤師はなれたら満足して勉強しない、という人間が出てきてしまいます。
コメント
[…] 転勤・転職は恥ではない、むしろプラスだと思っています(この記事を参照)。それは貴方が「新しい物に順応してきた回数」ですからね。 […]