病院薬剤師はじめて3年になります。それまで10年あまりの調剤薬局時代、見かけなかった症例を書きます。病院薬剤師を志望する方・興味ある方は参考にどうぞ。
【薬粉砕して下さい!】
<処方>
●プレドニゾロン錠1㎎(1錠)
●アザルフィジン錠500㎎(1錠)
●ファモチジン錠20㎎(1錠)
1日1回朝食後 7日分
●モサプリドクエン酸塩錠5㎎(3錠)
1日3回毎食後 7日分
<指示>粉砕してください
病院=弱った人が高度治療の為やってくる場所です。
当然、嚥下低下して錠剤・カプセル剤が飲み込めなくなる人もみえます。そんな時、粉砕の依頼がかなり増えます(ほぼ確実です)。(架空患者さんの架空処方です)
●プレドニゾロン錠1㎎(1錠)
●アザルフィジン錠500㎎(1錠)
●ファモチジン錠20㎎(1錠)
1日1回朝食後 7日分
●モサプリドクエン酸塩錠5㎎(3錠)
1日3回毎食後 7日分
とあります。ゼリーすら食べられないのに、錠剤飲めるわけがない、と気が付きます。ましてやアザルフィジンはデカイです。
よし、急いで全部粉砕機にかけるぞ!
・・・ちょっと待ってください。忙しくても、全部粉砕していいですか?添付文書で一つ一つ確認しましょう。
適用上の注意
- 薬剤交付時
- (1)
- 本剤は腸溶性製剤であり、かんだり、砕いたりせずに服用するように指導すること。
・・・これ、アザルフィジンの添付文書抜粋です。ちなみに理由は、有効成分が胃で溶けだすと悪さして、消化器症状を引きおこすからなんです。
どうでしょう、タダでさえ嚥下困難な方に、さらに消化器症状をおこしていいでしょうか?
粉砕できません。でも、そうするとリウマチは悪化してしまいます。じゃあどうするのか?
そうだ!粉にしてもいいリウマチ薬をさがして、変更してもらうのはどうか?
これが病院薬剤師としての正解です。決して教科書・国家試験では取得しない現場のワザです。
ちなみに当院では、アザルフィジンに変わる粉砕可能のリウマチ薬は、「リウマトレックスカプセル2㎎」「リマチル錠100㎎」でした。でもリウマトレックスは週1回投与でややこしいですね。だからリマチルへの変更を提案するのです。
●指示はあっているとあれば×で採点。
●粉砕しない、とだけあれば△で採点。
●粉砕できないアザルフィジンを、同じリウマチ薬で粉砕出来るものに変更して粉砕する、とあれば〇で採点。
【痛み止め欲しい】
腰痛・頭痛・歯痛など持病お持ちの方は痛み止めが欠かせませんよね。そんな痛み止めは副作用もいっぱいです。
鎮痛剤イブクイックをのんで、数日後から下血が止まらなくなって受診した人がみえました。診断名は大腸憩室出血です。本人曰く、鎮痛剤のんでから下血パターンは、人生で何度も繰り返したとのこと。
当然鎮痛剤はNGです。NSAIDs潰瘍は胃・十二指腸でおきますが、もちろん大腸粘膜にも悪さします。そこまでは現場に居なくても解ります。
鎮痛剤が大腸に穴をあける可能性あります。鎮痛剤は金輪際のまないで!
・・・これでは不十分です。だってもしまた耐え難い頭痛・腰痛なんかがきて、それでも耐えろっていえますか?たぶんそうしたら、リスク冒してでも鎮痛剤のんで、また出血繰り返すと思うんです。
薬剤師の仕事の1つが、薬の情報コンシェルジュです。だから鎮痛剤でも、胃腸に悪さしない薬を主治医に提案・処方させるのが正しいんじゃないでしょうか?
・・・ちなみに鎮痛剤と一口にいっても、系統は色々です。
●NSAIDs:即効性・切れ味抜群・安価・市販薬も豊富。しかし胃腸に悪さする。腎機能も低下させる。薬疹もおおい。
●アセトアミノフェン:即効性・安価だが効き目は劣る。脳に作用する為、胃腸にはあまり悪影響ない(添付文書には消化性潰瘍中は禁忌とあるが)
●トラマドール:即効・効き目もアセトアミノフェン以上。胃腸に悪さしないが、時々吐気には注意。
●ノイロトロピン:遅効性といわれるが有効性が疑問視され、殆ど使われなくなった。
●プレガバリン:遅効性で、神経性の痛みに特効する。胃腸障害もない。
この場合だったら、退院処方でアセトアミノフェンやトラマドールを提案して、持ち帰ってもらうのが得策です。また市販薬鎮痛剤は「有効成分:アセトアミノフェン」を選ぶように伝えます。ここまでするのが、病院薬剤師の仕事になります。
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