ブルーベリー栽培を暑い・雨の多い気候で成功させる工夫集

悩む人
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ブルーベリー栽培が面白そうだから始めたい。けどブルーベリーって寒いところの植物ってイメージが強い。夏40℃近くなる私の地域でも実ってくれるのかな?

・・・ブルーベリー栽培を検討するとき、気になるのが「気候」だと思います。よくネット検索や園芸本では「ブルーベリーは寒いところの植物だから、暑さには弱いです」と書いてあります。一部当たっているのですが、そこまで神経質にならなくてもいいです。それを説明します。

【この記事を書いた人】
●30歳代、妻有、5歳と3歳の子供あり
●日中はフルタイムで薬剤師(あまり時間ない)
●果樹を沢山育てている(栗・梅3本・みかん2品種・キウイ2品種・ざくろ・ブルーベリー3品種・いちご)
●在住地の気候は夏40℃近くなり、冬は氷点下になる。
●果樹栽培始めて13年くらい
●ベランダの鉢植えでも・庭植えのどちらでも果樹を育てている
 

【もくじ】
●本当に、ブルーベリー栽培に適すのは涼しい気候だけ?
●ブルーベリー栽培を成功させるには気候と品種選びが重要です。
●ブルーベリー栽培には「休眠打破(低温要求時間)」がカギ。
●ブルーベリー栽培の最大の敵は「梅雨時の雨」かもしれない。

【ブルーベリー栽培に適すのは涼しい気候だけ?(誤りです)】

ネットで「ブルーベリー栽培 気候」と検索すると、こんなWordに出くわすかと思います。

生育環境は、寒冷地及び高冷地が適し、我が国の本州以北および四国九州地区の準高冷地の気候でよく育成する。 枝は-30℃位までの耐寒性がありますが、耐暑性はやや劣ります。 休眠芽の萌芽には、冬季の気温7.2℃以下の時間が800時間以上の低温は必要です。 冬季が温暖で、低温要求量が不足する地区では育成が不揃いになります。

日本ブルーベリー協会 ホームページより抜粋

 こう書かれてはいますが実は、ブルーベリー栽培は暑い場所でも可能で、しかもよく実ります。

 なぜなら理由の①つ目として、ブルーベリーの品種系統ごとの気候適応が大きく違うからです。

 具体的な例を挙げますと、ちょっと細かい話しになるのですがブルーベリー品種は3系統に分かれます。

【ブルーベリーの品種系統について】
●ノーザンハイブッシュ系(NH系):最も古くから存在し、酸味をもつブルーベリーらしい味。元々アメリカ合衆国の冷涼地産まれなので寒さには強く―30℃でも耐える。しかしおしなべて暑さに弱く、本州で育てるなら耐暑性のある品種を選ぶ必要がある。
●サザンハイブッシュ系(SH系):新しい系統。ノーザンハイブッシュ系を、冬が温暖な場所でも育つように作り出された品種(外部リンク参照)。
●ラビットアイ系(RE系):新しい系統。元々アメリカ合衆国のフロリダ原産とされていて、暑さに強い。

 ブルーベリーといえばノーザンハイブッシュ系というイメージが昔から強く、そのノーザンハイブッシュ系は暑さに弱く寒さに強いともいえます。そして日本の冷凍ブルーベリーはアメリカカナダ産で、殆どノーザンハイブッシュ系です。ですが、ブルーベリーの系統には暑さに強いサザンハイブッシュ系・ラビットアイ系もあるので、これらまで暑さに弱いとは言えません。更にノーザンハイブッシュ系といえども耐暑性のある「ブルーレカ」などは猛暑地で平気で毎年8Kg実ったりします。

 そして理由の②つ目として、実際に暑い土地にも沢山のブルーベリー観光農園が存在しているためです。

ココで喋るばかりでは説得力ないので、有名ブルーベリー観光農園のロケーションを見てみましょう。(私がブルーベリー栽培始めるにあたって大変参考にさせていただいた、偉大な先輩方です)

【ブルーベリー観光農園の所在地】
ブルーベリーファクトリー岐阜(外部リンク):岐阜県加茂郡川辺町
ブルーベリーファームおかざき(外部リンク):愛知県岡崎市

例えばブルーベリーファクトリー岐阜さんの所在地・川辺町は最寄観測地が美濃加茂です。そこの気候をみるとこんな感じです。

気象庁HPより 美濃加茂の平年値を引用

ここでは毎年夏39℃を観測し、東海地方の最高気温ランキング常連になる暑さです(私が在住するのでよく判ります)。それでもサイトを除けば分かる通り、ここでは暑さに弱いはずのノーザンハイブッシュ系の品種が、かなりの種類育っています。これは観光農園さんが育成上手なのもあるでしょうが、いちばんは『思ったほど暑さに弱くないな』ということです。

ブルーベリーファームおかざきさんの岡崎市も、岡崎の観測地点はかなりの高温地です。

気象庁HPより引用

ここも毎年のように、夏に39℃を観測する地点です。それでも、やはりこの農園さんでもノーザンハイブッシュ系をかなりの種類育てられています。しかもちゃんと実っていて、ノーザンハイブッシュ系のブルーレカ(レカ)1本で8Kg(!!)も収穫されるそうです。

 反論として「プロ農家だから、高温地でもブルーベリーを育てられるんでしょ?」と言われそうです。確かにプロ故の育成上手も有ると思います。ですがそのプロとほぼ同じ育成方法が、初心者でも再現できたりします。それは、「ブルーベリー簡単栽培キット」です。このブログを読んで栽培検討される方は殆どが、この観測地たちほど暑くない場所かと思いますので希望を持てるかと思います。

 というわけで、ブルーベリー栽培は涼しい気候の地域限定、というのは誤りだと言えそうです。

<参考:ブルーベリーの起源について>

ブルーベリー栽培種はおおきく3グループに分かれます。でもラビットアイ系と2つのハイブッシュ系で全然似ていないのは、そもそもの起源が違うからです。(葉っぱの光沢、熟す前の実の色、裂果の有無、受粉木の必要性、豊産生、収穫時期、最適土壌pHなどが全然違います)

 ブルーベリーの品種改良は、元々優秀だったハイブッシュ系をより活かす為にスタートしています。ハイブッシュ系自生種(NH系・SH系とも祖先にあたる)は、酸味と甘みのバランスよく美味で、豊産生で、さらには自生種ゆえ病気にとても強いものでした。北部の寒い気候でも平気で育つタフさがあります。でも欠点があって、暑く低温要求量も満たせない南部州では作れないことです。

 じゃあこの美味しいハイブッシュ系を、南部州でも作るためにどうするか?ハイブッシュ系の祖先と、南部州に自生する近縁種を組み合わせれば暑さに強く・低温要求量も少なくなるのでは?そうやって試されて、ついに近縁種ダロウイと交配する(外部サイト参照)ことで「優秀なハイブッシュ系の美味しさを保ったまま、暑い地域でも作れるように」なりました。これがサザンハイブッシュ系とよばれるグループです。でも交配して人工的に生み出されたグループなので野生種からは遠くなり、病気に弱くなってしまい、脆弱で突然枯れてしまう品種が多いのも特徴です(枯れにくいのはジュエルくらい?)。

 南部州で作るためのもうひとつはハイブッシュ系を諦めて、南部州に元々自生する別の植物をさがしてくること。そこで見つかったのが、ラビットアイ系とよばれるグループです。野生種に近い故病気にも強く、元々猛暑の南部州で手入れされなくても生き延びてきたわけなので、猛暑でも平気で低温要求量も少ないのです。ただし味はそもそもハイブッシュ系に劣るとされ、雨での裂果もこの系統だけの弱点です。

【ブルーベリー栽培は暑い気候だと、実がシワができる】

前の項で「ブルーベリー栽培は暑い気候でも大丈夫」と散々強調しました。確かに有る程度暑くても実ります。一点気を付けたいのが、暑いと実がシワしわになることです。(シワしわになると商品価値は無くなります。尤も甘みが凝縮されて美味しいらしいですが・・)

暑さでしわしわ問題は、本格的に暑い時期に収穫するラビットアイ系で気を付けないといけません。本格的に暑くなる前の6月中に殆ど終わるノーザンハイブッシュ系・サザンハイブッシュ系では殆ど気にしなくても大丈夫です。

しわ問題になるラビットアイ系ブルーベリーのなかで、シワしわなりにくい品種は「ティフブルー」「ラヒ」「バルドウイン」「ブライトウエル」だと言われています(外部リンク)。

これらを加味して、品種を選びましょう。

【ブルーベリー栽培には「休眠打破(低温要求時間)」がカギ。】

ブルーベリー栽培には、冬の低温が必要です。

なぜかというと、ブルーベリーには品種ごとに「低温要求時間(7.2度を下回る時間数)」が必要だからです。つまり、冬の寒さに当てて「休眠打破」させる必要があるのです。

具体的な話をすると、このリストを参照して下さい。

系統品種名低温要求時間収穫時期
NH系ブルーレカ
(レカ)
750
~1200時間
6月上旬~
6月下旬
NH系スパルタン1000時間6月中旬~
6月下旬
SH系シャープブルー200
~300時間
6月中旬~
6月下旬
SH系ジュエル250時間6月中旬~
7月上旬
RE系ラヒ650
~700時間
7月下旬~
8月下旬
RE系ブライトウエル350
~400時間
7月上旬~
7月下旬
RE系フロリダローズ300時間7月中旬~
8月上旬
低温要求時間はオーシャン貿易HP 収穫期はブルーベリーファームおかざきHPより引用

※岡崎の例で行くと1月の平均最高気温が9.1℃で、平均最低気温が―0.7℃とすると、殆ど7.2度を下回るので1日平均20時間満たすとすると、20×31日=620時間の低温要求時間を満たします。2月は平均最高気温が10.0℃で、平均最低気温が0.0℃なので、やはり殆ど7.2℃を下回り、1日18時間で計算しても18×28=504時間です。1月2月だけで1124時間の低温要求時間を稼いでおり、ノーザンハイブッシュ系もふくめ殆ど全ての休眠打破をクリアできることになります。

※もし低温要求時間をクリアできないと・・・花が咲かない(花が少ない)。これはブルーベリーに限らず、桜のソメイヨシノの花も冬寒く無い場所では咲きません。例えば温暖化で冬が暖かくなりすぎた種子島では、ソメイヨシノはあまり咲かなくなりました(外部リンク)。例えば福岡市より暖かいはずの鹿児島市では、低温がたりず開花が福岡市より遅く、しかもまばらにしか咲きません。花から実がなるので、低温が足りないと実が取れないことを意味します。

というわけで、低温要求時間を満たせる品種を選ばないといけません。とはいっても上記の品種は、本州のほとんどの場所で休眠打破をクリアできるので大丈夫です。

【ブルーベリー栽培の気候上の大敵は、梅雨時の雨?】

ブルーベリー栽培で重要なのにスルーされるのが、実は「梅雨時の雨」だと思います。

なぜなら、カラッとした気候が原産地のブルーベリーにとって、高温多湿は経験したことのない苦痛だからです。

どうして梅雨時の雨を気にするのかというと、収穫期=梅雨時であり、実に雨が当たると「裂果」が起きるからです(ラビットアイ系のみですが)。そして品種選びするとき、大抵の方は暑さに強い・土も選ばない・頑健・収量も多い「ラビットアイ系」を選ぶかと思いますが、これのみ裂果するという罠があります。

その為、裂果しにくい品種を選ぶといいです。例えば「パウダーブルー」「ラヒ」なんかが強いですね(外部リンク)。

【以上を全部加味して、迷った時のオススメ品種は】

気候の問題点をいろいろ加味して、育てやすい品種を考えてみます。

【気候の問題点】
●冬の低温要求時間が十分とれること
●猛暑でシワしわになりにくこと
●梅雨時の雨に強いこと

これを満たす品種は、こんな感じでしょうか?

【ブルーベリー品種 気候の問題点をクリアしてくれるもの】
●ブルーレカ(NH系):低温要求時間➡本州なら殆どでクリアできる(館山・潮岬・知多半島などの暖冬地を除く)。夏の暑さ➡なんとかクリアできる。雨での裂果➡有り得ない。

●ラヒ(RE系):低温要求時間➡沖縄でもない限り大丈夫。夏の暑さ➡非常に強い。雨での裂果➡RE系にしては少ない。

どのブルーベリー品種にすべきか迷った場合、これらが間違いないと思われます。

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