【製薬株】ノバルティスAG(NVS)個別株分析(21年03月)

個別銘柄(ヘルスケア>製薬株)

世界第二位の売上の製薬会社・ノバルティスファAGーマ(銘柄ティッカー:NVS)について。

【売上世界2位?】
●2020年現在のランキングはロシュ(RHHBY)、ノバルティス(NVS)、ファイザー(PFE)、メルク(MRK)、ジョンソンエンドジョンソン(JNJ)の順です。何とファイザー(PFE)、2位すらも陥落してしまいました。

また時価総額でみると、第5位です。

●株(ファンド)の概要~そもそも何してるところ?

 >セクター11分類・細かな業種・ディフェンシブor中間or景気敏感

Health Care
(ヘルスケア)
14.19%
Consumer Staples
(生活必需品)
13.36%
Information Technology
(情報技術)
11.39%
Energy
(エネルギー)
11.32%
Consumer Discretionary
(一般消費財)
11.09%
Financials
(金融)
10.58%
Industrials
(資本財)
10.22%
Communication Servies
(情報通信)
9.63%
Utilities
(公共事業)
9.52%
10Materials
(素材・資源)
8.18%
11Real Estate
(不動産)
(不明)
平均Average
(市場平均≒S&P500指数)
10.95%
出典元:ジェレミー・シーゲル著「株式投資の未来」

GICSのセクター11分類でいえば、「ヘルスケア」に該当します。もちろん不景気耐性のつよい、ディフェンシブ株に該当します。

 >その売上の内訳は?内訳別の将来性は?

スイスの会社ですが、世界中で分散していることが解ります。

その国別推移はこう。

ごらんの通り、ノバルティス(NVS)は右肩上がりの売上です。本国スイスでこそ売上減ですが微々たる影響でして、その他地域ではグングン伸ばしています。※中国は2017まではOtherに入っています。

製品のジャンル別売上はこうです。

ノバルティスAG(NVS)と言えば抗がん剤開発の製薬会社なんですね。1位のロシュ(RHHBY)もおなじく抗がん剤開発の会社なので、抗がん剤に強くないと上位に行けないのでしょうね。また「市販薬」「ワクチン」が一切ないのも特徴です。

その推移もこうです。

抗がん剤=高齢化・人口増で増加する疾患。免疫系疾患=人口増で増加する疾患(高齢化とはあまり関係なし)。

ですが注目すべきは循環器系薬でして、たった2年で倍増しています。この循環器というのは、高齢化で凄く増える疾患なんです。なぜなら循環器科の患者さんは平均年齢が高く、しかも高齢者ほど服薬錠数が多くなってるからです。抗がん剤・循環器薬ともに新薬を発売or開発中でして、これからも伸びておかしくありません。

 >主要な個別製品の説明

これらは2019年時点での売上TOP20製品です。その全てが医療用医薬品部門です。

●コセントリクス®

医薬品で、バイオ医薬品(その中でも、分子標的薬剤)に属します。注射薬ですが自己注射可能(病院でなく自宅で自分で注射可能)で、患者の通院負担が少ないです。対象疾患は尋常性乾癬です。尋常性乾癬は患者数こそ高齢化では伸びませんが、いままで「ステロイド・免疫抑制剤で無理やり抑え込む(=風邪ひきやすくなる・免疫低下するなど負担が大きい)」ことしかできなかった疾患です。それを根本的に、負担少なく治せるという画期的な薬だったのです。その為売上はグングン伸びて、主力薬になりました。2015年承認の薬なので特許も長いです(2025年)。

●ジレニア®

医薬品で、低分子医薬品に属します。カプセル剤です。対象は多発性硬化症です。多発性硬化症の患者数こそ伸びていますが、競合薬が多く出現し、さらに特許切れしているので将来を望めません。

●ルセンティス®

医薬品で、バイオ医薬品(その中でも、分子標的薬剤)に属します。眼科医が手術室で使うタイプの薬で、患者さんが手にすることはまず有りません。対象疾患のうち「加齢黄斑浮腫」「病的近視」「網膜静脈閉鎖症」は高齢化で患者数が増えますし、「未熟児網膜症」は近年適応取得したばかりで売り上げ増が望めます。しかし10年以上前から存在する古い薬でして、特許切れで多くを望めません。

●タシグナ®

医薬品で、低分子医薬品に属します(文献で分子標的とするサイトもありますが後発品の開発しやすさ・売上の喰われ方から低分子薬と考えます)。慢性骨髄性白血病の治療薬で、カプセル剤です。白血病はあまり高齢化と関係ない患者数で、しかも特許切れしているので多くを望めません。

●エントレスト®

医薬品で、低分子医薬品に属します。錠剤なので、患者の通院負担も少ないです。対象疾患は慢性心不全でして、それは高齢化で著しく増加する疾患です。画期的なのは海外治験でエナラプリルという既存薬を上回った、初めての薬であることです。その為低分子ではありますが、2019年発売と大変新しい薬で、対象疾患を考えると2重にのびる要素をもつ、有望な薬です。

●レボレード®/プロマクタ®

医薬品で、低分子医薬品です。錠剤タイプで、患者さんの通院負担も少ないです。対象疾患の重症再生不良性貧血は、高齢化でのびるような疾患ではないです。ですが同疾患は、これまで骨髄移植でしか治せなかったものでして、それを完全奏功させた画期的な薬です。発売も2017年で、特許が長く有望な薬です。2015年にグラクソ(GSK)から買収した薬でもあります。

●タフィンラー®+メキニスト®併用

医薬品で、低分子医薬品です。悪性黒色腫の治療薬で、2剤併用によって大幅に生命予後が伸びています。こちらもGSKから買収した薬で、2014年に発売開始しています。

・・・グラクソスミス(GSK)から買った抗がん剤が伸びています。それはグラクソスミスと違って元々抗がん剤販売網を持っていたから、スムーズに拡大できたためです。

●株主への還元姿勢

 >配当金・一株利益の推移は?

連続増配22年と長いです。配当利回りも3.5%前後と高めですが、これはあまりうれしくありません。配当税率が高いからです(下記)


現地源泉税率
国別源泉税率税引後受取率
米国株10%71.72%
英国株0%79.69%
オーストラリア株0%79.69%
インド株0%79.69%
メキシコ株0%79.69%
カナダ株15%67.73%
ロシア株15%67.73%
アイルランド株20%63.75%
台湾株21%62.95%
デンマーク株27%58.17%
ベルギー株30%55.78%
スイス株35%51.80%

配当税率が高く、手元に入る配当金はなんと51.8%のみです。その為、配当金を狙うのではなく、株価上昇での売買差益を狙う銘柄となります。

 >株数推移は(自社株買いによる減)

こちらは順調に減らしてくれています。いっぽうで会社の利益額は微増傾向、確実に1株価値を高めてくれています。配当金ではなく、キャピタルゲインを狙うタイプの株といえそうです。

●将来性

 >売上成長率は?

リーマンショックの時に株価下がりましたが、利益はむしろ大幅増です。

コロナショック後の株価はあまり上がっていませんが、利益は伸びました(=つまり、お買い得になりました)。

製薬株=ディフェンシブ株の一種だけあって、ショック耐性あります。昔から大きかった会社なので株価の伸び方は鈍いですが、それでも着実に伸びています。

 > トータルリターン(配当金で同一株を毎年末に購入)は?

スイス株ですので配当金は51%しか受け取れず、そのため株価に比例するようなグラフになりました。これでもリーマンショック・コロナショックを経てもS&P500以上に伸びてたことが解ります。

 >利益率は?

利益率20%という数字は、他企業に比べれば高いですが製薬会社としては低めです。じつは売上も伸びてはいるけど過去最高ではありません。それは近年の急激な会社再編で、意図的に切り離している部門が多いからです。

【近年の動き】
●2011年、アルコンファーマとの提携開始
●2011年、ディオバン®・フェマーラ®の特許切れによる売り上げ減少
●2011年は、新型インフルによるワクチン特需があった(ワクチン部門は現在なし)
●2014年4月、GSK社から抗がん剤部門を買収で売上増。
 同じくGSK社に大衆薬(OTC)部門とワクチン部門を売却で売り上げ減。
●2014~2016年、ディオバン事件によるイメージダウンで売上減
●2018年4月、米国AveXis社(遺伝子治療の会社)を買収。

この通り2018,2019と負債増となったのは買収による、のれん代計上だったのです。つまり買収しなければ来年は改善する見込みがあります。買収した新薬が伸びないと、また開発中の新薬が当たらないと厳しいのですが、(個別商品の項で)前述のとおりそこは大丈夫かと思います。

 >財政健全性は?

DEレシオは上昇気味ですが、まだまだ許容範囲内です。2018➡2019に自己資本減少しているのは前述の買収のためです。

近年のノバルティスは買収・売却分離の動きが激しいです。一言でいえばそれは「最先端事業への注力」「最先端でない部分は分離」ということ。抗がん剤のノバルティスとなったのは、意図してつくられたモノです。

もっともDEレシオを見ての通り、まともな数字に収まる範囲でのもので、身の丈に合った買収ともいえます。

 >割安性は?現在の株価は?

近年の値動きです。株価・利益ともS&P500に少し劣ります。これは前述のとおり買収・売却の動きが激しかったためです。

●総括(薬剤師の目線で)

自社内での開発というより「いい新薬メーカーをみつけて買収し、自社製品とする」という姿勢。これはフランスのサノフィ(SNY)や米国のファイザー(PFE)と似ています。違うのはノバルティスは買収後、着実に売り上げ延ばしている事です。それは特許の長く、それでいて先見性のある製品を買収できているからです。

実際私は現場で仕事していて、眼科薬ルセンティス®など「これからも使うだろうな」と思う薬が結構多いです。さすがは世界第2位と感じています。

管理人は毎年アニュアルレポートを読みますが、ファ●ザーやギ●●ドのように都合いい数字で発表、なんて事はありませんでした。会社の透明性もあります。

参考サイト

データ元はこちら

https://www.novartis.com/sites/www.novartis.com/files/novartis-annual-report-2020.pdf

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