【製薬株】アストラゼネカ(AZN)個別株分析(21年04月)

個別銘柄(ヘルスケア>製薬株)

世界有数の製薬会社・アストラゼネカ(銘柄ティッカー:AZN)について。

【アストラゼネカ(AZN)の概要】
●1913年、スウェーデンで発足したアストラ社が前身
●1999年にアストラ社+ゼネカ社が合併し、英国アストラゼネカ社となる
●2020年12月、米国アクレシオンを39,000Million USDで買収
●2020年、COVID-19ワクチンを発売(日本では2021年4月現在、許可なし)

●株(ファンド)の概要~そもそも何してるところ?

 >セクター11分類・細かな業種・ディフェンシブor中間or景気敏感

GICSのセクター11分類でいえば「ヘルスケア」、その中でも「製薬会社(Pharmaceuticals)」に該当します。

製薬会社という性質上、不景気は業績へのダメージが小さいです。実際アストラゼネカ(AZN)も、不景気のリーマンショックで業績が落ちていません。

 >その売上の内訳は?内訳別の将来性は?

<地域別内訳>

やはり先進国での売り上げが多いです。その推移はこちらです。

新興国での売上がすごく伸びていますが、全地域でまんべんなく伸びています。

<領域別内訳>

抗がん剤が半数近くを占めています。ですが抗がん剤といえども、「肺癌の治療薬=呼吸器系薬」とも考えられます。タグリッソ・イミフィンジが肺癌の薬なので実質45%程度が呼吸器薬、とも考えられます。アストラゼネカ(AZN)は、呼吸器につよいメーカーなのです。

上記の医療用医薬品で99%以上を占めています。2020年末より、医薬品でない「COVID-19ワクチン」の売上も別にありますよ。

内訳をみると売り上げ増の正体がわかります。あの世界中での伸びは抗がん剤(Oncology)だったのです。タグリッソ・イミフィンジといった既存の高額抗がん剤が伸びてきているからです。

 >主要な個別製品の説明

●タグリッソ錠

医療用医薬品で、低分子医薬品(その中でも分子標的薬剤)に属します。肺癌の分子標的薬でして、同社がパイオニアとなったチロシンキナーゼ阻害剤のイレッサ錠®の、改良版ということになります。肺癌の延命効果がそのチロシンキナーゼの中でも抜群でして、売上がのびる要因となっています。それを実感する例がありまして、例えば管理人の病院でも肺癌ターミナルケアの方での継続例が増えてきており、呼吸器科に認められた薬なんだなと感じています。

※分子標的薬剤なのに、低分子医薬品??
そうです。分子標的薬剤は基本的に高分子なバイオ医薬品ばかりですが、「チロシンキナーゼ阻害剤」だけは低分子医薬品なのです。その為作用の特異性(病原細胞にだけ攻撃できる)は後発医薬品は「バイオシミラーではなくジェネリック医薬品」となり、特許切れ後の怖さは低分子医薬品と同じとなるのです。

●イミフィンジ点滴静注120㎎®

医療用医薬品で、その中でもバイオ医薬品(バイオの中でも、分子標的薬剤)に属します。肺癌治療薬でして、これは肺癌細胞の防御機構を突破することで癌を倒します(PD-L1阻害剤といいます。オプジーポ®やキイトルーダ®と同系統)。この系統にもれず「超高額」「売上が世界中で大幅増」となっております。

●リムパーザ錠100㎎®、150㎎®

医療用医薬品で、その中でも低分子医薬品(その中でも分子標的薬剤)に属します。抗がん剤で乳癌・卵巣癌・前立腺癌・膵臓がんに適応があります。

●カルケンス錠®

医療用医薬品で、その中でも低分子医薬品(分子標的薬剤)に属します(低分子なのに分子標的・チロシンキナーゼ阻害剤の一つです)。慢性リンパ性白血病の治療薬で、この病気は日本では少ないですが欧米では白血病でもっとも多い部類です。

●フォシーガ錠

医療用医薬品で、その中では低分子医薬品に該当します。糖尿病治療薬の一種で、これは「尿中に糖分を捨てる事で、血糖値を下げる(=SGLT2阻害剤といいます)」というタイプの薬です。つまりインスリン分泌がダメになった末期の2型糖尿病患者さんにもまだ使えるくすりです。低血糖も起こしにくいし、体重減少効果もあります。その為、使用例が増えてきています。

※この系統の最初の薬はスーグラ錠®です。アストラゼネカ(AZN)のフォシーガ錠®ではありません

●COVID-19ワクチン(コロナワクチン)

アストラゼネカの持つ唯一といっていいワクチン分野です。日本では2021年現在、ファイザーワクチンしか存在しませんので見かけません。

血栓症リスクが怖いとされ、ドイツのように原則60歳以上に年齢制限する国も存在します。各国での接種で、若年~中年の女性ばかりに血栓症が発生しているからです。イタリアでは15歳以上、カナダでは州によっては60歳以上とするなど、各国で対応が分かれております。

アストラゼネカのワクチン 原則60歳以上に接種方針 ドイツ政府 | NHKニュース
【NHK】ドイツ政府は、アストラゼネカなどが開発した新型コロナウイルスのワクチンについて、接種した60歳未満の人たちに血栓が確認さ…

いっぽうWHOは、アストラゼネカワクチンを安全だと断定しています。

アストラゼネカのワクチン、WHOが接種継続呼びかけ 血栓と因果「証拠なし」と - BBCニュース
英オックスフォード大学と英製薬大手アストラゼネカが開発した新型コロナウイルスワクチンを接種した人に血栓が出たとして、欧州連合(EU)の主要加盟国の一部が同ワクチンの接種を取りやめたことを受け、世界保健機関(WHO)は15日、同ワクチンの接種を停止しないよう各国に求めた。WHOはワクチン接種と血栓の発生の関連を示す証拠は...

管理人は病院薬剤師ですが、2021年4月現在、コロナワクチン接種はできておらず医療従事者への接種は4月ときいております。もちろん日本なのでファイザーワクチンしかありませんが・・・。

●株主への還元姿勢

 >配当金・一株利益の推移は?

この数年ずっと配当金が同じ1.36USDです。近年利益があまり出ていなく配当性向が100%を超えてしまっています(=借金してでも配当支払っている)が、借金してでも株主還元するのは素晴らしい姿勢です(あっさり減配・利益出ても内部留保しまくる日本企業では考えられません)。これも利益改善しないと、いずれ減配してしまうものですが・・・。

※アストラゼネカ社(AZN)は英国企業なのにGBP建てでなく、USD建てで支払ってくれます。

配当金は英国なので現地課税されず、80%近く受け取れるのはうれしいですね。


現地源泉税率
国別源泉税率税引後受取率
米国株10%71.72%
英国株0%79.69%
オーストラリア株0%79.69%
インド株0%79.69%
メキシコ株0%79.69%
カナダ株15%67.73%
ロシア株15%67.73%
アイルランド株20%63.75%
台湾株21%62.95%
デンマーク株27%58.17%
ベルギー株30%55.78%
スイス株35%51.80%

 >株数推移は(自社株買いによる減)

配当金の項でもお知らせの通り、2013年~利益がでていなく配当金を守るだけで手いっぱいです。自社株買いできていません。

●将来性

 >売上成長率は?

株価は伸びましたが、利益は少し落ちています。

 > 近年のトータルリターンは?(2001~2020年)

高配当だったため配当金での再投資がうまくいき、保有株数は43➡62株へと1.5倍に増えました。そして近年株価も伸びたため、合計金額もぐんぐん伸びて3.2倍に成長・S&P500平均を超えました。

 >利益率は?

【近年のアストラゼネカ(AZN)の買収・売却】
●2020年12月、米国アクレシオン(免疫疾患薬)を買収。その額39,000Million USD(アクレシオン1株=175USDで買収、45%プレミア)。

 >財政健全性は?

長期負債÷自己資本でDEレシオを出しています。

※一番右下にみえるのが最新版のDEレシオです。

1.3程度であまり問題ありません。製薬会社は2~3は要注意、3~は危険水域です。

 >割安性は?現在の株価は?

●総括(薬剤師の目線で)

アストラゼネカ(AZN)といえば呼吸器にとても強い会社ですが、似ているグラクソスミス(GSK)と違って抗がん剤領域にも強いです。「分子標的抗がん剤」「糖尿病」といった世界的に伸びる分野で、特許ある薬をいくつも持っていることは高評価です。これからものびてくことは、医療関係者であれば解ります。

懸念すべきは「超高額医薬品への依存」です。抗がん剤のタグリッソ®、イミフィンジ®での売り上げ増がかなり大きいので、裏を返せば薬価切り下げで思わぬダメージを受ける事が多いのです。管理人は病院薬剤師なのですが、超高額医薬品・オプジーポ®点滴の時なんども緊急薬価切り下げがあって、そのたびに小野薬品の株価が暴落していたのを目にしています(管理人も小野薬品は含み損です)。オプジーポ®以外でそんな顕著な例は見ていませんが、世界的に医療費高騰は問題視されているので、高額医薬品はいつやり玉に挙がってもおかしくなはいです。

管理人も30株所持しております。

●データ元

https://www.astrazeneca.com/content/dam/az/Investor_Relations/annual-report-2020/pdf/AstraZeneca_AR_2020.pdf

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