【製薬株】グラクソ・スミスクライン(GSK)個別株分析(21年03月)

個別銘柄(ヘルスケア>製薬株)

世界売上5位前後の製薬会社・グラクソ・スミスクライン(銘柄ティッカー:GSK)について。

【グラクソ・スミスクライン(GSK)の概要】
●1715年、ロンドンで創業した薬局が祖
●世界第5位前後の売上高(2020年)
●2010年、米テサロを5,100Million USDで取得。(1株75USDで、買収時の株価は46.38USDだった)
●2015年にノバルティス(NVS)から一般向け薬部門・ワクチン部門を取得し抗がん剤部門を渡した

●株(ファンド)の概要~そもそも何してるところ?

 >セクター11分類・細かな業種・ディフェンシブor中間or景気敏感

GICSのセクター11分類でいえば「ヘルスケア」、その中でも「製薬企業(Pharmaceutials)」に該当します。

グラクソ(GSK)もまたディフェンシブ株でして、不景気でも売上・利益に影響しないことで知られています。

一般知名度はそこそこあるはず。なぜなら「グラクソスミス」と聞いても解らなくても、風邪薬のコンタック®といえばだれでも知っているからです。

 >その売上の内訳は?内訳別の将来性は?

<地域別売上>

米国で半分近くを売りますが、先進国全体に分散できている感じです。

その売上推移もこうして、右肩上がりになっていました。

<領域別売上>

その売上内訳はこの通りです。半分が医療用医薬品ですね。一般向け医薬品が3割、ワクチンは2割です。その推移は・・・

この通り、一般向け医薬品を大きく伸ばしている会社なのです。これは実際力を入れていまして、近年のノバルティス(NVS)からの一般向け部門買収などからもわかります。そして一見相関性のない3分野ですが、実は医療用医薬品は呼吸器系薬が昔から主力で、一般向け医薬品もコンタック®に代表されるように風邪薬、つまり呼吸器系薬が強いのです。そしてワクチンもしかりで、肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチン、コロナワクチンなどやはり呼吸器系疾患の最近ウイルスに強い。

つまりグラクソ(GSK)の本質は、「呼吸器・肺に強く、それを幅広い裾野に売る」会社なのです。ちなみに呼吸器系薬メーカーとしてはアストラゼネカ(AZN)がライバルになります。

●グラクソ・スミスクライン(GSK)を理解するために知識

呼吸器系でかなり売るの製薬なので、呼吸器がこけたらコワイですよね。ではその呼吸器系の立ち位置は、疾病負荷のとても大きい疾患です。つまり潜在的な患者数がとても多い。グラクソ(GSK)が得意な分野を赤マーカーしたのですが、かなり該当していることが解るはずです。

順位死因DALYs (万)DALYs(%)DALYs
(10万人当たり)
1新生児疾患20,182.18.02,618
2虚血性心疾患18,084.77.12,346
3脳卒中13,942.95.51,809
4下気道感染症10,565.24.21,371
5下痢性疾患7,931.13.11,029
6交通事故7,911.63.11,026
7COPD7,398.12.9960
8糖尿病7,041.12.8913
9結核6,602.42.6857
10先天異常5,179.72.0672
11背中と首の痛み4,653.21.8604
12うつ病性障害4,635.91.8601
13肝硬変4,279.81.7555
14気管、気管支、肺がん4,137.81.6537
15腎臓病4,057.11.6526
16HIV / AIDS4,014.71.6521
17その他の難聴3,947.71.6512
18墜死3,821.61.5496
19マラリア3,339.81.3433
20裸眼の屈折異常3,198.11.3415
wikipedia「疾病負荷」より筆者引用・一部加工あり

世界では「リウマチ(膠原病・免疫疾患の一部)」「がん」の治療薬がもてはやされているのですが、疾病負荷ランキングには入りません。それよりも呼吸器疾病のほうが人類から人生を奪っているのです。その人生を多く奪う疾病につよいのが、グラクソ(GSK)なんです。

 >主要な個別製品の説明

<医療用医薬品>

●呼吸器系薬に該当するのは

医薬品全体:新薬呼吸器系3749+新薬抗がん剤(の中で肺癌)372+特許切れ3251(セレタイド・アドエア、フロベント、ベネトリン、アラミスト、その他)で、実に7372もが呼吸器関連の売上です。➡医薬品の41%は呼吸器で、やはり依存が大きいです。

●テビケイ®

低分子医薬品です。HIVの治療薬でして、飲む限りHIVの活動を抑え込んで悪化を阻止する薬です。根治はできないので一生つづける必要があります。競合薬が多くギリアド(GILD)の治療薬に押され気味です。

●トリーメク®

低分子医薬品です。HIV治療薬ですが、これは3種類配合剤でして1日1回1錠の服用で済む、お手軽さです。HIVは患者数の多い疾患で、サブサハラ等治療薬の行き届いていない国での売上増が期待されます。

●セレタイド®/アドエア®

低分子医薬品です。かつては世界売上ランキングトップ10に入っていましたが、特許切れして売上激減です。呼吸器のグラクソを代表するような薬で、喘息治療の吸入薬です。

<ワクチン>

<一般向け薬>

●株主への還元姿勢

 >配当金・一株利益の推移は?

「高配当の英国ADR株」として有名な銘柄ですよね。高配当率なのに現地課税が一切かからないので、たくさんの配当金を受け取れるからですね。

【余談】
※高配当の英国ADR株➡ほかにも「ユニリーバ(UL)」「ブリティッシュアメリカン・タバコ(BTI)」「ロイヤルダッチシェル(RDS B)」「BP」、同じく現地課税0%のオーストラリア株「ウエストバック銀行(WBK)」「BHPビリトン(BHP)」などが有名

しかもグラクソ(GSK)はディフェンシブな製薬企業に属すので、安全性まで備えてると好かれています。しかし配当の泉源である一株利益も停滞しているため、見ての通り配当金は横ばいです。そして株価もずっと低迷しているので、利回りが高くなり5%を超え続けているわけです。


現地源泉税率
国別源泉税率税引後受取率
米国株10%71.72%
英国株0%79.69%
オーストラリア株0%79.69%
インド株0%79.69%
メキシコ株0%79.69%
カナダ株15%67.73%
ロシア株15%67.73%
アイルランド株20%63.75%
台湾株21%62.95%
デンマーク株27%58.17%
ベルギー株30%55.78%
スイス株35%51.80%

 >株数推移は(自社株買いによる減)

営業利益は横ばい。発行株式数もずっと同じ。この会社の株主還元は 配当金>>自社株買いでの株式数減 であることが解ります。

●将来性

 >売上成長率は?

リーマンショックの2008~2009年は、株価落ちたのに利益はむしろ拡大しました。やはり製薬企業らしく、不景気に強いディフェンシブ株といえそうです。

近年株価は低迷しています。それは①アドエア®(Seretide/Advair)の特許切れでの低迷、②抗がん剤部門のノバルティスへ譲渡による先行き不安、などが考えられます。また2010年台~現在(2021年3月)は分子標的薬剤のメーカーがもてはやされた時代でして、グラクソ(GSK)はそれを持っていない為期待されず、安くなっている可能性があります。

しかし近年の業績をみると、株価ほど業績が悪くない様に思います。そしてずっと高配当を続けられています。また利益率も上昇しつつあり、その理由もちゃんと解ります。注目されていないだけで、業績は良くなっていて、お買い得化しているのです。

 > 近年のトータルリターンは?(2001~2020年)

見ての通り株価はこの20年間で低下しています。しかしトータルリターンはプラスとなり、しかも1.5倍に増えました。これは高配当を続けてくれたため、安い株価でグラクソ株を沢山購入し続ける事ができたからです。これも、配当金での再投資(配当元のGSK株を購入する事)によって株価低下リスクを軽くできた一例です。

 >利益率は?

 >財政健全性は?

このDEレシオが慢性的に結構高く、財政不安な会社でした。しかし直近のDEレシオはこうなりました。2を切って、案外よくなっています。

※一番右下にみえるのが最新版のDEレシオです。

 >割安性は?現在の株価は?

●総括(薬剤師の目線で)

株価推移や新薬開発をみるとイマイチで、時代遅れの製薬のような印象です。しかし得意とする疾患「呼吸器」ではとても強く、新薬開発もできています。注目されていないだけで、患者数の多い・疾病負荷の大きいジャンルでは結構強く、また利益も伸びてきています。薬剤師としては「シングリックス®は伸びる」「特許切れが怖い薬は近未来にはない」などと感覚的に解るので、お買い得化している印象を受けました。

●データ引用元

https://www.gsk.com/media/6662/annual-report-2020.pdf

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