世界トップ10に入る製薬会社・イーライリリー(銘柄ティッカー:LLY)について。
【この銘柄の概要】
●1923年、世界で初めてインスリン製剤(アイレチン®)を発売(ノルディスク:ノボノルディスクの前身会社と同時)
●インスリンのリリーとして100年近い歴史を持つ。インスリン売上は3社寡占(LLY、NVO、SNY)の為手堅い
●近年は買収を繰り返し、糖尿病以外を強化してきている
●研究開発費の比率はメガファーマの中でトップレベル
●売上全てが「医療用医薬品」、つまりBtoBサービス。一般知名度はあまりないはず。
●株(ファンド)の概要~そもそも何してるところ?
>セクター11分類・細かな業種・ディフェンシブor中間or景気敏感
イーライリリー(LLY)はGICSの11セクター分類でいえば「ヘルスケアセクター」、その中でも「製薬会社」に属します。もちろんディフェンシブ株とよべる値動きで、不景気でも利益・売上が全く影響ないのが特徴です。
>その売上の内訳は?内訳別の将来性は?
<地域別の売上内訳>
この通り、米国が売り上げの中心です。
売上は世界中の地域で伸びてきています。
<製品分野別の内訳>
売上の半分を「糖尿病薬」が占めます。インスリンが結構な割合を占めていて、全体の16%程度はインスリン製剤の売上です。
【インスリン売上の特徴】
●3社寡占状態(イーライリリー:LLY、ノボノルディスク:NVO、サノフィ:SNY)
●全世界的な啓発運動で、総使用量はぐんぐん伸びている
●他剤で代替できない特徴があり、これも売上安定に寄与する
近年はインスリン依存からの脱却図るべく大型買収・研究開発費の大量投資を行っています。それが実を結んで、抗がん剤売上はかなり伸びています。
>主要な個別製品の説明
●ヒューマログ注®
医療用医薬品で、その中でもバイオ医薬品(さらにその中でもホルモン剤)に該当します。インスリン製剤でして、「超即効インスリン(食後の高血糖を素早く抑える効果)」としては初期から存在します。特許が切れている為、ノボ(NVO)、サノフィ(SNY)からバイオシミラーが発売して喰われつつあります。
※ライバルはノボノルディスク(NVO)の「ノボラピッド注®」、サノフィ社(SNY)の「アピドラ注®」です。シェアNo.1はノボラピッドです
●ヒューマリン注®
医療用医薬品で、その中でもバイオ医薬品(さらにその中でもホルモン剤)に該当します。インスリン製剤でして、人型インスリンとしては初めてのもの。もう50年も売られ続ける定番商品となります。
●ヒト型インスリン?じゃあそれまで人型じゃなかったの?
> その通りです。1923年に発売された史上初のインスリン「アイレチン®」はブタ膵臓インスリンだったため、(つまり豚たんぱく質だったから人体免疫にとっては危険な異物なので)人間の体に合わずアレルギー起こす人が続出していました。
そこで人間と同じインスリンを開発したのがコチラです。細菌に人間のインスリン遺伝子を組み込んで培養することで、人型インスリンを大量に作らせることに成功しました。
●トルリシティ注®
医療用医薬品で、その中でもバイオ医薬品(さらにその中でもホルモン剤)に該当します。糖尿病薬ですがインスリンでなくGLP-1製剤でして、これはインスリン分泌を適正にするためのホルモンです。つまり食事した分だけ、インスリンが分泌するようになります。この製剤なら「インスリン注射したけど食事できなかった。インスリンだけ働いて低血糖になっちゃった」などという事は起こりません。安全性ゆえに使用量は増えてきています。また上記の安全・有効性だけでなく、「当てて押すだけ(=トルリシティ注アテオスというキット名の由来)」のお手軽性まで備えていて、非常に売上伸ばしている薬です。
ライバルはビクトーザ®(ノボノルディスク)、オゼンピック®(ノボノルディスク)、バイエッタ®(アストラゼネカ)、
●サイラムザ点滴静注用®
医療用医薬品で、その中でもバイオ医薬品(さらにその中でも分子標的薬剤)に該当します。近年イーライリリー(LLY)が力を入れている分野でして、2019年に高額買収したロキソオンコロジー社からひきついだ製品です。薬的にはがん細胞への栄養血管がのびるのを阻止し、がんを兵糧攻めにすることで殺す薬です(ロシュ社のアバスチン®も同効)。売上的には分子標的=高額で利ザヤ大きく、抗がん剤=地球人口の高齢化・医療の高度化により確実にのびる、という性質があります。
●アリムタ注射用®
医療用医薬品で、その中でも低分子医薬品に該当します。近年LLYが力を入れている「抗がん剤」の一つです。これはサイラムザとは違う作用で(当然市場でも競合しない)、がん細胞のDNA合成に必要な葉酸を阻害することで、細胞分裂できず死滅させる薬です。
●オルミエント皮下注射®
医療用医薬品で、その中でもバイオ医薬品(さらにその中でも分子標的薬剤)に該当します。いま製薬業界で熱いジャンルである「関節リウマチの分子標的薬剤」でして、LLYもしっかり対抗しています。
●トルツ皮下注射®
医療用医薬品で、その中でもバイオ医薬品(さらにその中でも分子標的薬剤)に該当します。乾癬の治療薬でして、乾癬といえばこれまで「強い免疫抑制剤(シクロスポリン、タクロリムス、ステロイド等)」でむりやり免疫反応を抑え込むことでなんとかマシになった程度の治療成績でした。それを免疫抑制もあまりせず、しっかり治療できるということで伸びてきています。LLYもしっかり対抗しています。
●株主への還元姿勢
>配当金・一株利益の推移は?
配当金は右肩上がりですが、近年株価高騰しているので利回り低下しています。連続増配6年は短いように感じますが、決して減配しておらず数年間配当金が同一だったためです。実質1972年から減配してなく、連続増配49年に近いです。
※ファイザー(PFE)は連続増配10年ですが、本当に配当金を半減させています。これとは別物ですよ。
現地源泉税率 | 国別源泉税率 | 税引後受取率 |
米国株 | 10% | 71.72% |
英国株 | 0% | 79.69% |
オーストラリア株 | 0% | 79.69% |
インド株 | 0% | 79.69% |
メキシコ株 | 0% | 79.69% |
カナダ株 | 15% | 67.73% |
ロシア株 | 15% | 67.73% |
アイルランド株 | 20% | 63.75% |
台湾株 | 21% | 62.95% |
デンマーク株 | 27% | 58.17% |
ベルギー株 | 30% | 55.78% |
スイス株 | 35% | 51.80% |
>株数推移は(自社株買いによる減)
自社株買いは消極的でした。近年は、自社株買いもしてくれるようになりました。
株主還元性はどちらかというと 配当金>自社株買いによる1株価値の向上 といえそうです。
●将来性
>売上成長率は?
リーマンショックの2008➡2009年に、株価は落ちたのに利益は逆に大きく伸ばしました。ディフェンシブ株に恥じない値動きですね。
> 近年のトータルリターンは?(2001~2020年)
平均を上回るリターンを記録しました。2001年に1000USDをS&P500に投資すると2518USDへ、イーライリリー(LLY)に投資すると3286USDに増えています。株価推移は平均に近かったのに、トータルリターンでみると小さくない差がつくのです。
もう一つ気が付くのは、2001年は株価78USDで元本1000USDだったのに、2016年には株価73.55USDで元本は1350USDに増えている事。つまり株価は6%も下がっているのに、元金が1.35倍にも増えているのです。これは配当金再投資によって、株数が12.7➡18.36株へと増えている為なのです(もちろんずっと減配せず支払い続けてくれたことも大きいです)。配当金による再投資が株価低下のリスクを軽減してくれる例でもあります。
>利益率は?
【近年のイーライリリー(LLY)の買収・売却】
●2019年1月、ロキソオンコロジー社を買収。その額8,000Million USD。
※ロキソオンコロジー社1株につき、235USDを支払った。
●2020年1月、デルミラ社を買収。その額1,100Million USD。
※デルミラ社1株につき18.75USD(2.2%プレミア)を支払った
●2020年12月、プリベイル・セラピューティクス社を買収。その額1,000Million USD。
※プリベイル社1株につき22.50USD(80%プレミア)を支払った。
>財政健全性は?
※一番右下にみえるのが最新版のDEレシオです。2021年3月時点では3前後まで下げてくれました。
>割安性は?現在の株価は?
●総括(薬剤師の目線で)
インスリン・糖尿病という手堅い得意分野に加えて、これから伸びが確実ながん・免疫療法薬の分野にも進出していて、しかも結果を残し始めているところは高評価。欲しい・使いたいと思う薬を沢山持っているのもいいところですね。
ただし研究開発費が高すぎるのがネック。高すぎる研究費というのは「シーゲル博士の理論」では、長期リターンをもたらすのは 研究開発費に投資<<株主配当に投資 となっているからです。
薬剤師的に「伸びるだろうな」と思える新薬を作れていて、売り上げを伸ばせているのは高評価。この先も永続性のある会社だと考えています。
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