二十歳で進行がんの重い事実

出典:公益財団法人 がん研究振興財団「がんの統計2022」

婦人科系の進行がんを、消化器内科の先生が見つけた。

何で見つけたのかというと、むねやけやお腹の張りが解消されないから精査して。ブスコパン飲んでも解消されず。胃カメラしても胃炎すらみつからず、当然胃癌もない。じゃあ試しにということで、下腹部のCTに映っていた結節と腹水。この腹水なんだ、という事で試しに検査した腫瘍マーカー(CEAとCA19-9)が、上限を振り切っていた。

つまり腹水は腫瘍のもの、がん性腹水と解った。そして、下腹部の結節は、子宮がんか卵巣がんによるもの(注:当院に婦人科医はいないため、詳しく判らない)。つまり腹水がでるほど進行した婦人科系がんだったのでした。ある担当患者さんにそれが解って、私は目を疑った。というか目を覆った。

ーーーそれがまさか、二十歳なりたての子だったなんて。

本人はまだ何も知らない。未告知が主治医の方針だから。

私は病院薬剤師だから、体調確認に1患者につき週1回は行く。

『お腹の調子はどうですか?』「もうなんともないです。再開したごはんも食べれています。」

『夜は寝れていますか?』「もう安定剤もつかわず寝られますよ。」

・・・彼女のデスクは、資格勉強のノートと本でいっぱい。この病室がせまくて退屈だったのでだろうか。いつも勉強している様子だった。彼女の雰囲気は派手ではないけど清楚で、かわいらしい普通の二十歳の女の子だった。私は病室のカーテンを閉じて、立ち去ろうとした。

・・・「あの!すいません。私の検査結果はどうなっているのでしょうか?まだ、知らされていないんです!」『私は薬剤師です。薬の事しか知らされていないので解らないんです』

・・・私は彼女の気持ちが痛い位わかった。検査結果早く知りたいって、1日1日が長く感じているだろうって。でもその期待には応えられない。本当の結果を、口が裂けても言えない。だから私は、さっきのようなウソをついて去った。だけど本人は勘づいていると思う、ただの胃痛だったのに、検査した結果を1週間たったいまもまだ言われないなんておかしいって。

ーー二十歳の女の子が、進行した婦人科系がん。これが何重の意味で重い事実だろうかって、私は考えた。

進行がんの告知は、ただでさえとても重い。寛解には時間がかかるし、かりに治っても臓器を切除したり、化学療法を続けたりしないといけない。化学療法はやっぱり体へのダメージが大きくて、脱毛したり、生活ままならない位だるくなる人も多い。それに、余命宣告だって受けるかもしれない。

そんな重い事実が、二十歳の女の子に。まだ出産も経験してない女の子が。多くの人が考えるだろう「いつか自分の子を産んで、育てる」これが多分、かなわなくなるのだから。それどころか、まだ二十歳にして自分の余命を心配しないといけない。ましてや、資格の勉強するくらいまじめで資格とって将来をもっと良くして・・・と思っている子の将来が、ないのかもしれないのだから。これが重すぎる事実なんだなって。

いずれ告知しないといけない。先日、まずは両親に告知した。本人に絶対見つからないように、院内秘密の場所で。

ーーーもしこれが、子宮頸がんだったとしたら。

婦人科系がんで、若い世代に好発するのが子宮頸がん(この女の子がかかった可能性の高いがん)。HPV(ヒトパピローマウイルス)のせいで起きるものだけど、ワクチン「ガーダシル®」などが存在する。しかしこのワクチン、メディアバッシングをうけて2013年から、積極接種ではなくなってしまった(2022年まで、あまり接種されなかった)。メディアバッシングとは下記の通り。

https://sakisiru.jp/24617

このせいで、子宮頸がんワクチンは接種世代と日接種世代とマチマチになってしまった。だけどワクチンではっきりと、子宮頸がんを予防できることも解っている。下記の通り。

https://www.jsog.or.jp/modules/jsogpolicy/index.php?content_id=4

某新聞社のメディアバッシングが、どれだけ罪深いものか解ると思う。メディアの質がおちたと言われるのは、ネットで調べればわかるこの時代に、根拠もない文章・映像を作って流し、誤解させているのも一因ではないか?もしこの二十歳の女の子が子宮頸がんだったとしたら、それはメディアの罪だと思う。未婚の娘が子宮頸がんで、ワクチン未接種世代(2000年産まれ以降、1994~1999年生まれは接種世代の為)だったとしたら、貴方は黙っていられるだろうか?

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