世界2位の穀物メジャー(=穀物流通大手)、米国企業のアーチャーダニエルズミッドランド(銘柄ティッカー:ADM)について。
●株(ファンド)の概要~そもそも何してるところ?
>セクター11分類・細かな業種・ディフェンシブor中間or景気敏感
セクター(業種11分類)でいえば生活必需品(Consumer taples)にあたります。生活必需品セクターといえば11セクターの内で、長期成長率が2位で、かつ不景気時でも値段下落が小さく安定的なことが解っています。(1位は医薬品セクターですが不景気耐性は低め、3位はエネルギーセクターで他業種の逆の値動きすることが多い)
社名を聞いてもピンとこないでしょう。というのが業種が「穀物の貯蔵・流通・減量の提供」などで一般人があまり触らない物だからです。いわゆるB toBサービス(ビジネス➡ビジネス。つまり一般顧客に提供せず、その職種の人間だけで完結するサービス)なのです。
そんな風に一般知名度は無いですが、無くてはならない会社です。この会社は「5大穀物メジャー」の第2位でして、その5大穀物メジャーだけで世界流通量の80%を占めるからです。ちなみに穀物メジャーのしくみはこうです。
穀物を生産せず、穀物を買い付けて貯蔵し、必要時に流通させる仕組みです。これがメインの収益です(他の収益源もあります)。考えればわかりますが、これだけだと「誰でも真似できるビジネスモデル」なので、当然収益率は低くなります。
【穀物メジャーの収益源】
●穀物の生産ではなく、流通により収益をあげる
●規模が圧倒的なため、コストを下げることで収益確保している
※同一商品は沢山作った方が単価が安くなる、マーケットリーダーの理論
●倉庫・トラック・船などは殆ど保持してて、新たに他社が参入することは難しい
●収穫期の違う地域・国々での穀物を流通させられ、価格・数量とも安定的に供給できる
※小麦の収穫できない冬の日本で小麦粉が使えるのは穀物メジャーのお陰
>その売上の内訳は?内訳別の将来性は?
地域別の売上は、資料が見つからないため(発表していない可能性高い)載せていません。
今度は地域別ではなく、製品別の売上をみます。穀物メジャーらしくやっぱりメインは「農業サービス」ですが、業種拡大を続けていてその他でも売上伸ばしています。グラフにある5年単位ではどこも伸びていますが10年でみると、じつは伸び悩んでいます(農業サービスの縮小のため)。内容が結構分厚いので、こちらクリックして下さい。
> 保有する会社の割合
最大株主のバンガード社が10%を占めています。バンガード社といえば投資家御用達のバンガードファンドを取り扱う会社ですね。世界2位(1位はブラックロック社)のファンド会社で、運用資金は7.1兆ドル(2020年1月時点)で、日本の国家予算の10倍(!)を動かす会社となります。
●株主への還元姿勢
>配当金・一株利益の推移は?
現地源泉税率 | 国別源泉税率 | 税引後受取率 |
米国株 | 10% | 71.72% |
英国株 | 0% | 79.69% |
オーストラリア株 | 0% | 79.69% |
インド株 | 0% | 79.69% |
メキシコ株 | 0% | 79.69% |
カナダ株 | 15% | 67.73% |
ロシア株 | 15% | 67.73% |
アイルランド株 | 20% | 63.75% |
台湾株 | 21% | 62.95% |
デンマーク株 | 27% | 58.17% |
ベルギー株 | 30% | 55.78% |
スイス株 | 35% | 51.80% |
配当は余裕そのもので、配当性向50%を超えたことがありません。そしてその配当金も50年以上連続増配している「配当王」となります。
>株数推移は(自社株買いによる減)
ではその自社株買いと、会社全体の利益をみてみます。利益額はおおむね微増です。発行済み株式数は長期で見ると右肩下がりで、ここでも自社株買いでの株主還元をしてくれています。
●将来性
>売上成長率は?
先ほど利益額は微増とおつたえしたのですが、売上額は横ばい~やや減少くらい。利益増加は利益率向上のためだったのです。
利益率は2%➡3%にのびただけですが、それでも1.5倍ですので十分凄い伸び方です。利益率の低さは前述の通り、業種が競合が入りやすい「穀物の流通」だからです。製薬会社が20~40%、生活必需品会社が20%、たばこ会社が45%とか出してるのみるとずいぶん低いように感じますが、薄利多売ビジネスだからです。ただ競合入りやすいといっても、流通のほとんど全てをADM(を含む5大穀物メジャー)が抑えていて、彼らに関わらないとかなり効率悪い状態が出来上がっています。
> 近年のトータルリターンは?(2001~2022年)
まずは近年10年の伸び率。市場平均に大差勝ちです(=S&P500指数うよりも儲かっていた)
じゃあ今度は、2000年からの22年間を比較をします。ものすごいスピードでADMが伸びています。22年間で、8倍に増加(!)したことになります。この間に「ITバブル崩壊」「リーマンショック」「コロナショック」を経験して中々ハードな期間だったのですが、株価下落の度に(下落した安い値段でADMを再投資できるので)株数がのび、この差がついてしまいました。そして注意してほしいのは、ADMは新興企業ではなく100年以上まえから存在するかいしゃで、2000年当時ですらも業界2位の穀物メジャーだったということです。もちろん穀物流通以外にも売上販路をふやしていますが、それ以上に業界の成長性によってのものです。
IF:10年間、配当金を再投資しなかった(すべて現金のまま)場合
配当金を再投資した場合(青グラフ)、配当金を使わず貯金した場合(緑グラフ)、株価20%下落したら売却する場合(黄色グラフ)を比較しました。
最良リターンはやはりといいますか、再投資した場合の青グラフでした。そして損切した黄色グラフはやっぱり最悪のリターンでした。よく雑誌で「20%下落したら損切ルール発動。これ以上損害を拡げない為に勇気を出して売る」などと書いてありますが誤りです。
というか「損切」された方は、資産が10年間で1404USDにしかなりませんでした。そのまま愚直に再投資した方は最良の、3808USDを手にしていました。
>財政健全性は?
※一番右下にみえるのが最新版のDEレシオです。
負債を全然抱えていません。
流動比率1.4というのは米国企業としては高めです。総支払額1.4年分を直ちにポンと支払える状態です。PERも目下18倍で、現在(2022年3月)S&P500指数のPERが24倍なのを考えると、割安といえます。
>割安性は?現在の株価は?
●総括(一般投資家の目線で)
好材料がいっぱい、大変魅力的な投資先といえそうです。
●配当王(連続増配50年超)=長期的に高リターンと解っています。
●参入障壁の高さ=穀物メジャー5社の一角で、世界の穀物流通量80%を占めていて他が入ってこれません。
●割安性=PER18倍(=株価÷一株利益EPS)と割安です。つまり高値掴みする心配もありません。
こんなに好材料が揃っています。近年22年間で延びまくった会社ではありますが、今でも十分投資先として良いように思います。管理人は実際ADMではないのですが、穀物メジャーを傘下に持つ「丸紅」を200株持っています。でもADM単独買いしてもいいと思っています。
〇参考にしたサイト
https://s1.q4cdn.com/365366812/files/doc_financials/2021/ar/2022-Letter-to-Stockholders-and-Proxy.pdf投資可能な証券会社
今から投資開始なら、口座をこう使い分けます
管理人は現在メイン証券は楽天証券です(愛用しています)。が、今から投資スタートするならSBI証券×マネックス証券の2口座使いをします。(ちなみに管理人は3社とも口座所持し、全部に金融商品もっています。SBIはシーゲル理論知る前の状態なのでボロボロですが)
SBI証券
NISA,つみたてNISA枠はSBI証券を使って投資します。
【SBI証券の良いところ】
①S&P500連動の投資信託の管理手数料が、日本最安値。
※SBI・V・S&P500という商品で、年0.0938%は最安値です。
②S&P500を上回る投資信託の管理手数料が、断トツの日本最安値
※SBI・V・米国高配当株式という商品で、年0.12%はダントツの安さです。
マネックス証券
NISA・つみたてNISA以外の部分はこのマネックス証券で投資します。今回のNISA・つみたてNISAの話からは脱線ですね。
【マネックス証券のいいところ】
●米国株の取扱数が、ネット証券最多の4100超え(2021年6月現在)
ARCCなどの超高リターンファンドも購入可能(SBIでは不可)
●ネット証券で唯一可能な「配当金自動再投資:通称DRIP」は長期投資になるほど高リターン。
●ネット証券ではSBI・マネックスしかできない「米国株定額定期買付」。やはり高リターン銘柄を自動で買える。
●投資信託は、保有期間中ずっとマネックスポイント0.03%(ひと月ごと)が付き続ける。100万円もってたら300ポイントが毎月、入り続ける計算。
このマネックス独自プログラムである配当金自動再投資、本当にたかが数%とバカにできない位、長期になればなるほど凄い破壊力があるんです。破壊力の凄さはコチラに詳しく書きました。
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