病院薬剤師さん、業務のやり方で詰まったら「参考どうぞ」ということで見てください。病院薬剤師をお考えの方は、「病院薬剤師ってこういう事やるんだ」って参考にして下さい。
病院薬剤師の全体業務
全体的な業務については・・・こちらを参照下さい。(工事中)
院外の持込薬➡当院採用薬で置換(通称:検薬)
入院時には「うちの病院以外の持込薬」を、持ってきたりします。でもそれを、当院の採用薬で最も近い物で置き換えます。当院ではこれを「検薬」と呼んでいます。
①持込薬の成分が、当院採用薬にある場合
(例:ボナロン錠35㎎を持込➡当院採用の「アレンドロン酸錠35㎎」)
(例:アマルエット配合錠4番を持込➡当院採用薬「アムロジピン錠5㎎」+「アトルバスタチン錠10㎎」の2剤へ)
(例:ミノドロン酸錠50㎎/月1回を持込➡当院採用薬「アレンドロン酸錠35㎎/週1回」へ
②検査数値ありきの薬
➡「降圧剤」「糖尿病薬」「脂質異常症薬」など検査数値の有る薬。数値が良くなれば薬成分に拘らなくていい。
(例:ネシーナ錠25㎎が当院になくても、空腹時血糖を同じくらい下げる薬なんでも代用可)
③持込薬が、当院採用薬と同グループの薬である場合
(例:アテレック錠10㎎を持込➡当院採用薬に、同じCCB系統のアゼルニジピン錠8㎎)
(例:イグザレルト錠15㎎を持込➡当院採用薬に、同じDOAC系統のリクシアナ錠60㎎×0.5錠で)
①精神科の処方はお手上げ(同一成分でないと危険だから)
②漢方薬(処方により全く違うから)
服薬指導する理由は?(基本的な考え方)
・・・いろいろ言われていますが、究極的にいえばこの一言に尽きます。
正しい薬を、正しく患者体内に入れ続ける為
絶対に忘れないでくださいね。この為の具体的なやり方が、服薬指導なんです。
「正しい薬を、正しく患者体内に入れ続ける為」に行う。
【服薬指導の具体的なやり方】
①薬のプラス面(必要性・重要性)を患者さんに伝える
②薬のマイナス面(副作用の怖さ・服薬の煩雑さ)を患者さんから取り除く
③患者理解度に応じた管理方法を提案する
④患者さんの嚥下状態に最適な剤型を提案する
⑤患者さんが正しく使えているかのチェック
①薬のプラス面(必要性・重要性)を患者さんに伝える
どうしてワザワザ薬を使うのか。薬増えるなんて俺は病人の仲間入りだな。薬のむなんてめんどくさい・・・。
こういったネガティブな感情を打ち消す為に、飲まないといけない理由を説明するんです。飲んだらこんなにいい事ありますよ、こんな危険を回避できますよ、とね。
例として抗がん剤のプラスを伝える時は、よくこの記事のCさんネタをしゃべりますよ。
②薬のマイナス面(副作用の怖さ・服薬の煩雑さ)を患者さんから取り除く
プラスの説明と同じくらい、(継続服用の障害となりうる)マイナス取除く説明も大事です。
案外多いのが、ステロイド剤が怖いって方です。薬学生・薬剤師なら百も承知ですが、ステロイドはそもそも自分の体内で元々存在するホルモンです。それを一時的に多量投与することで、炎症タンパクを作れなくし、炎症を止めている訳です。自分の体内に存在するゆえに、アレルギーは起こりません。
がん患者さんの麻薬導入時は、この②は凄く気を使います。後ほどの「麻薬指導・管理」のページにも、この旨書いておきました。
③患者理解度に応じた管理方法を提案する
そもそも、患者さんが認知症で頭脳的に管理不可・半身不随で物理的に管理不可、という場合もあるわけです。
そういう時は、患者さん本人がイチから管理は無理です。そこで家族・訪問看護師など他人管理とするケースですね。管理方法の決め方の記事は、こちらを参考にください。
④患者の嚥下状態に最適な剤型を提案する
患者さん情報をできるだけ確認します。
チューブ使用者である (NGチューブ・PEGなど) | 粉薬で (or粉砕) | チューブを通過する剤型しかダメ |
誤嚥を繰り返す人 | 粉薬で (or粉砕) | 誤嚥しにくい投与方法は 『粉薬を溶いてトロミ付けしスプーン』 |
剤型変更といっても、次の記事の様に粉砕できない薬の場合あります。そんなときは・・・
⑤患者さんが正しく使えているかのチェック
専門用語でいえば「コンプライアンス確認」ですね。
患者さんの「俺間違えずに使えているぞ」はあまりアテになりませんよ。次の記事の様な例がゴロゴロありますからね。
こういうチェックをして、「自己管理は無理」「剤型的に変更」となることもあります。
麻薬調剤・指導
病院という特性上、麻薬処方はとても多いです。
麻薬は「管理的な難しさ」「服薬指導的な難しさ」とあります。
●(紛失・盗難・他人の誤服用は大ごとなので)麻薬金庫に管理している。
●患者さんも在宅では、金庫を買って厳重保管&他人に決して被曝させない工夫>
麻薬の管理は、麻薬の受払いを記録する帳簿を備え、麻薬の受払いを記録する必要がある。2名以上の麻薬施用者が診療に従事する麻薬診療施設では麻薬管理者を置き、麻薬管理者が麻薬の受払いの管理や帳簿への記録を行う必要がある。麻薬の保管には、鍵のかかる堅固な保管庫を使用する。麻薬保管庫には麻薬のほか、覚せい剤を一緒に保管することはできるが、それ以外の医薬品や帳簿等を保管することはできない。(麻向法第33条、第34条、第39条)
●患者が怖がり、麻薬という響きで拒否
●用量変更時、せん妄のリスクが高い
●副作用が強い
●患者が怖がり、麻薬という響きで拒否
麻薬ときくだけで、怖がる患者さんも多いです。ですが「濫用麻薬」ではなく「医療用麻薬」ですからね。この誤解とくのも、薬剤師の仕事です。
この図を使って説明すると、たいてい納得してくださいます。シーソーが水平じゃないと良くないって事です。がんで持続的なひどい痛みが出ている人は、元々μ<<κパランスなので、μを医療用麻薬で補ってやるって事なんですね。
●用量変更時・せん妄のリスク高い
麻薬はせん妄のリスク高いです。とくに「麻薬開始時・増量時・中断時」といった麻薬用量が変化するときに好発します。
これ何が怖いかというと、危険行動したり、ひどい躁状態になるのでまともに管理できなります。そんなコワイ麻薬を他人に呑ませようとしたり・・の可能性もあるわけです。ですから麻薬を自己管理していいのは、用量が不変で安定している時ですね。
●副作用が強い
医療用麻薬は、副作用も結構つよくて重篤です。体調変化して不安がって、下手したら医療者を訴えかねませんからね。ですから、説明が必要なんです。
呼吸抑制 | 痛み<< 麻薬量の時 |
吐き気 | |
せん妄 | 開始時・増量時 中断時(麻薬用量の変化時) |
眠気 | 開始時・増量時 |
便秘 | 麻薬量に比例して好発 |
麻薬鎮痛剤というのは効果がいいわけですが、それ故「不快だからとりあえず麻薬」となって濫用してしまう患者さんもみえます。イッキに10回分のオキノーム飲んで、呼吸抑制で運ばれてきた患者さんもみえました。
薬アレルギー歴×処方薬の注意
当院で処方された薬を、素通しで投薬できない理由その①です。詳しくはこの記事をどうぞ。何でもないありふれた抗生剤で、死亡する例まであるわけですからね。
病歴×処方薬の注意
当院で処方された薬を、素通しで投薬できない理由その②です。元々持っている病気や体質と、合わない薬だったら良くないからです。
いちおう、流れのおさらいします。
●病歴×処方薬の禁忌を確認する(ダメな薬なら変更してもらう)
●投薬準備する(説明用のお薬説明書・お薬手帳シールを印刷する)
●実際に投薬する➡記録・算定する(これで了)
病歴×処方薬の禁忌を確認
<処方>ロキソプロフェン錠60㎎ 1回1錠 疼痛時頓用
<入院理由>昨日ムカデに噛まれた。腫れと痛みが強い。解毒剤セファランチン注射を打っているが症状おさまらず。
<元々の継続薬>
●メサラジン錠400㎎ 9錠/1日3回毎食後
●ビオスリー配合錠 3錠/日3回毎食後
それで、潰瘍性大腸炎へのロキソプロフェン投与って、このまま渡していいか??
慎重投与ですね。禁忌ではないので投与可能です。
投薬準備する(説明用のお薬説明書・お薬手帳シールを印刷する)
投与Okと確認できましたね。次は説明準備です。
患者さんがそもそも指導OKな方か確認します。(認知症やせん妄で話どころじゃなければ、指導NGです)
指導OKと確認したら、説明用のお薬説明書・お薬手帳を印刷します。
最後に、薬剤師➡患者さんへの説明文を考えます。この薬をどうして飲むか・効果はと話す内容ですね。。この場合はさっきの<入院理由>から考えればいいです。・・・もちろん「ムカデ咬傷でのハレと痛みをとる為使う。鎮痛効果は30分~4時間程度です」といったところでしょうね。
実際に投薬する
患者説明(投薬)する理由は、前述のとおり「正しい薬を、正しく患者体内に入れ続ける為」ことです。
正しく入れ続ける為に、「のむ理由をつたえる(プラスを伝える)」「不安を取り除く(元々の潰瘍性大腸炎が鎮痛剤で悪化しないか?といった不安)(マイナスを取り除く)」が必要です。
あとは説明文をそのまま伝えます。
投薬後・・・電子カルテにこれを記録します。あとは病棟指導算定を取ります。
・・・ここまで出来て初めて、病棟指導が完了します。
TDM対象の薬にご用心!
TDM対象の薬が処方されていたら、常にマークしています。
バンコマイシン(VCM) | 4回目投与の直前 (トラフ値) |
リネゾリド(LZD) | 同上 |
テイコプラニン(TEIC) | 同上 |
まず、最適な投与量を計算(初回分析)しないといけません。とはいっても便利な世の中で、バンコマイシンの投与量計算ソフトとかが、世の中には存在します。
次に、TDM対象薬なので血中濃度測定があるわけです。
そして、血中濃度値が判明したら投与量の追跡(ベイズ分析)も行います。
最後に、「特定抗菌薬」にも該当するので主治医に使用届記入&14日超過したら変更してもらう。つまりまとめるとこんな感じです。
●対象薬使ってる患者全員を、追跡する
●最適投与量の計算「初回分析」を行う
※医師に最適投与量を伝える
●投与開始4回目の投与直前に、採血オーダを確認(なければ医師の代わりにオーダ)
●血中濃度値が判明➡その濃度を使って「ベイズ分析」を行う
※医師にベイズ分析で判明した、最適投与量を伝える
●特定抗菌薬なので14日超過して処方されてたら、変更してもらう
こんな感じ。
病院薬剤師としての知識が必須です
基本的には薬学部で習った「薬物治療」「薬理」といった知識があれば大丈夫です。
これらは学校の座学で習う「知識」、いわゆる基礎ですね。これがないと、そもそも気付く材料が持てませんよ。はっきりいって分厚くて高価です。ですが疾患ごとに薬も載っていて、新しい疾患や薬も割と多く、病理も図解で見たまま解りやすく、体系的ですっきりしています。病理・薬理を復習しなおすにはこれ1冊でなんとかなります。僕はこの本をベースにして、色々書きこんで使っています。
又、病院薬剤師としての機転や気づきが必要な場合もあります。色々ある中で、この本が一番スッキリしていて分かりやすかったです。
これは座学でなく現場でしか身につかない「知識を知恵に変える」ための、応用的なものです。症例数が多く、考え方も沢山のっており、練習問題もおまけで沢山ついています。病院薬剤師の僕は昼休みとかに読んでいて、いろんな気付きがあって面白いです。
最後に・・病院薬剤師へ転職をお考えの方へ
まずは、マイナス面を充分に知っておいてください。
マイナス面に耐えられるなら、こちらのプラス面も知ってください。
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