病院・調剤薬局の違い(NSAIDs潰瘍の例)

病院薬剤師

病院薬剤部と調剤薬局では、おなじ疾患、薬はずいぶんと違ってきます。今度はNSAIDs潰瘍を例にとります。

脳梗塞の例:前述記事

【入院当日まで】

<病院薬剤部>
●タケプロン静注用バイアル30㎎+生理食塩水20mL・・・・・・1日2回静注
●アドナ静注+トラネキサム酸静注+ソリター3号輸液500mL・・1日2回点滴

受診までの流れ:①患者本人が、黒色粘土様の便を不安がって受診する、②息切れが激しくてえらくて受診、などですね。

※患者さんの本人は、まさか自分が胃潰瘍だなんて解りません

受診~問診~診断までの流れ:この場合、看護師さんは消化器内科を勧める➡消化器内科では、胃潰瘍を疑って問診➡絶食&ムーベンのませ、次の日胃カメラ➡カメラ画像から、NSAIDs潰瘍だと解る

こんな流れですね。・・・あれ??

ちゃすけ
ちゃすけ

消化器内科の●●先生。どうして薬も確認せずに、NSAIDs潰瘍だとほぼ解るんですか?

医師
消化器内科
医師

カメラ画像に、NSAIDs潰瘍だと書いてあるようなものです。カメラ画像で、小さな穴が幾つも空くのは特徴なんですよ。あとで薬も確認しますけどね。

うん、消化器内科の医師って、凄いですね。ちなみにあまりに穴が大きいと、その場でクリッピング止血もするそうです。

薬剤師の皆さん、こんな思い込みは有りませんか?

ちゃすけ
ちゃすけ

NSAIDsではロキソニン>セレコックスの順で弱い。セレコックスはCOX-2しか阻害しないから、胃潰瘍はあまり無い。

 

看護師
薬剤師

防御因子増強といえば、レバミピド<サイトテックの順で強い。サイトテックはNSAIDsにPG増強作用で、NSAIDsで落ちた分を補えるはずだ。

・・・残念ながら、この患者さん(△△さん)の飲み薬は、これでした。

<△△さんの定期処方>
Rp1)セレコックス錠100㎎・・・・・・・・・2錠
  【般】ミソプロストール錠200μg・・・・2錠
    1日2回朝夕食後          14日分
Rp2)【般】シロスタゾール錠100㎎・・・・・2錠
    1日2回朝夕食後          14日分
Rp3)【般】アムロジピン錠5㎎・・・・・・・1錠
    1日1回朝食後           14日分

この薬で、カメラ画像はばっちり「NSAIDs潰瘍に特徴的な画像」なのです。セレコックスのせいで出血し、シロスタゾールのせいで歯止めが利かない、なんてことは一目瞭然です。大学や教科書・国家試験では「セレコックスはCOX-2のみ阻害だから、胃潰瘍が少ない」と習いますが思い込みです。実際は結構な割合でいますよ!

でる薬はこれだけですが、病院薬剤部はアクションしないといけない事もあります。

<病院薬剤部>のアクション
①胃カメラ検査なのに内服の継続指示がでていなか?
②注射箋の薬剤と溶媒のくみあわせは正しいのか?
※タケプロンの前後でフラッシュ生食はあるか?

①胃・十二指腸を内視鏡するので、経口摂取したら上手く映りません。だから内服も食事も、中止じゃないとおかしいです。(中止じゃなければ、担当看護師に問合せします)

②注射薬・溶媒の組み合わせは見落としがちです。今回の薬ではタケプロンです。これは水に溶けにくいので良く振って投与➡残ったモノも生食で強引に流し込む、という使い方です。どのくらい溶けにくいのでしょうか?

タケプロン静注用30㎎ IF(武田薬品工業HPより引用)

タケプロン30㎎=0.03gです。必要な水は29000×0.03=870mL。生食20mlには溶けませんので、あとでフラッシュして送り込むのです。(でないとルートが詰まります)

【入院2日目~症状安定まで】

<病院薬剤部>
●タケプロン静注用バイアル30㎎+生理食塩水20mL・・・・・・1日2回静注
●アドナ静注+トラネキサム酸静注+ソリター3号輸液500mL・・1日2回点滴

止血・便潜血なくなるまでは、このメニューを続けています。もちろん食事は絶食~お粥です。

トラネキサム酸なんて調剤薬局では、風邪の喉痛やケガの処置くらいでしか見かけませんよね。病院だとこんな使い方もしています。

【症状安定後】

<病院薬剤部>
Rp1)ランソプラゾールOD錠15㎎「サワイ」・・・1錠
         1日1回朝食後         7日分
Rp2)トラマールOD錠25㎎・・・・・・・・・・・2錠
         1日2回朝夕食後        7日分
Rp3)シロスタゾール錠100㎎・・・・・・・・・・2錠
    1日2回朝夕食後             7日分
Rp4)アムロジピン錠5㎎・・・・・・・・・・・・1錠
    1日1回朝食後              7日分

症状安定したら、注射打ち切り・内服のPPIに切り替え。鎮痛剤も開始します。もちろんNSAIDs潰瘍の既往が付いたため、しばらくNSAIDsは避けます。胃にやさしいトラマールOD錠を使用しました。

ばあちゃん
患者さん

まえの胃薬に戻してくれないの?鎮痛剤も全然違うし・・・

ちゃすけ
ちゃすけ

まえの六角形の2回飲む胃薬(サイトテックの事)、弱いんですよ。それより強く、ほとんど胃潰瘍を起こさない薬が、赤いつぶつぶのこの薬(ランソプラゾールの事)なんです。

前の鎮痛剤は暫くお休みで、胃にやさしい鎮痛剤です。

ついでに消化器内科医に教わったんですが、どうやらNSAIDs潰瘍を防ぐにはこんな感じらしいです。

<胃薬の強さ>
レバミピド錠100㎎<ミソプロストール錠200μg<<ランソプラゾール錠15㎎<タケキャブ錠10㎎

ランソプラゾール錠レベルだと、ほとんど再発しないそうです。

【退院時】

<病院薬剤部>
Rp1)ランソプラゾールOD錠15㎎「サワイ」・・・1錠
         1日1回朝食後         7日分
Rp2)トラマールOD錠25㎎・・・・・・・・・・・2錠
         1日2回朝夕食後        7日分
Rp3)【般】シロスタゾール錠100㎎・・・・・・・2錠
    1日2回朝夕食後             7日分
Rp4)【般】アムロジピン錠5㎎・・・・・・・・・・1錠
    1日1回朝食後              7日分

これは私たちがだす、退院処方です。次回受診日(この例では7日後)を確認して、それまでの日数かどうかも確認しています。NSAIDs潰瘍の場合は、再出血がありうる為7日後とかに再診です。

退院する=病院スタッフの手を離れる ので、退院指導には細心の注意を払っています。飲み忘れ防止の為に、投薬カレンダーを売店・100均で買ってもらったりします。お薬手帳を必ず預かり、記録します。再度、のむ理由を説明します。

【外来受診】

<調剤薬局>
●【般】ランソプラゾール口腔内崩壊錠15㎎/1錠・・朝食後・28日分
●トラマールOD錠25㎎/2錠・・・・・・・・・・・朝夕食後・28日分

ココではもう、病院薬剤部は離れています。患者さんは病院外来➡調剤薬局 の順番になるので。

・・・もちろん調剤薬局では、情報源は処方箋の紙きれ一枚とお薬手帳・電子薬歴だけです。もちろん確定診断名は解らず、コンプライアンスや認知状態、嚥下状態がどうとかもわかりません。(僕はこれでは少なすぎる・何とかして調剤薬局さんも情報増やせないかと思っています)

もしNSAIDs潰瘍という病名が解れば、ロキソプロフェンがなんかが他院で出た場合に、疑義照会でカットできたりとか、処方医に警告できたりとか、するんですけどね。よく勘違いされるのが、「病院で散々話して病名もわかったから、あんたらもう知っているはず」。とんでもないです。

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