よくあるお悩み
○○さん、ワーファリンが開始になった。納豆・クロレラ・野菜食べたいって言ってるけどどうしよう?
ワーファリンのお薬情報書(薬情)になんか、納豆と緑黄色野菜ダメやって書いてあるぞ。全部さけるなんて無理だ!
これ現場薬剤師は、初回の服薬指導で困ります。患者さんもめっちゃ気にして、しょっちゅう質問がきます。
ですから、予め答えを用意しておきましょう。
ワーファリン投与中は、ビタミンKを250μg/日以内に!
ビタミンKを250μg/日以内にする。気を付けるのはこれだけです。
なぜならワーファリンは、ビタミンK(血液凝固因子の材料)を打ち消すことで抗血栓作用を発揮するからです。でもビタミンKを沢山とると、その分打消しのワーファリンも沢山必要になっちゃう。
その影響しない量の目安が、250μg/日なんです。この数値の根拠は、PubMed(のP15 )ではっきりと示されています。
安定した抗凝固状態を得る為には、約80μg/日のビタミンK摂取が理想的である。日常的な摂取が50μg/日以下になると、抗凝固状態が不安定になる可能性がある。一方、日常的なビタミンK摂取量が250μg/日を超えると、ワルファリン感受性が低下する為、250μg/日は超えないようにする。
ワルファリンとビタミンKの相互作用(PubMed検索)のP15 より引用
ですので、250μg/日を超えないようにと指導します。
具体例:ビタミンK250μg/日を超える食材はどれ?
具体例1:納豆
納豆はほぼアウトです。
●ビタミンKは、100g当たりで600μg。一食でたべる納豆1パック45gというのは、250μg/日を超えます。
➡じゃあ半パックにすれば125μg/日だ・・・・と考えがちですが、よく考えてほしい。他の食材にもビタミンKは入っています。緑黄色野菜・クロレラはもう摂取できません(摂取したら上限突破です)。ビタミンK量を計算しながら食べるなんて、薬剤師・管理栄養士でも非現実的です。いっそ摂らないのがカンタンです。
しかも悪い事に、納豆菌は腸管でも生き残ってビタミンKを作り続けます。実際は1パック250μgどころじゃなく、もっと入っていると思ってください。
結論:納豆は食べないでください!もしくは・・・
具体例2:スムージー・野菜ジュース
基本的にはOK、思ったほど入っていません。
例えば野菜生活100の200mL パックでも、13μgしか入っていません。1日2Lのんでようやく130μgで、250には届きませんからね。
納豆半パック+野菜生活100を2L飲む人は、ほとんど存在しないでしょう。気にしなくてOKです。
具体例3:クロレラ
基本的にはアウトです。
なぜなら100gあたりで3600μgもビタミンKが入っています。(出典元:慶応義塾大病院のHP)
例えばクロレラサプリというのは、1日10g以上はとります。それでも360μg、許容量の250μgを大きくオーバーです。
ワーファリン服薬患者さま、クロレラはやめましょう。
具体例4:野菜類・海藻類
ほうれん草・春菊は避けましょう。ほうれん草は葉っぱ100g当たりで478μg、春菊は350μgものビタミンKだからです。
具体的に1食分といえば、ほうれん草のおひたし1皿に70gだったりします。55gですでにオーバーですからね。春菊も70gでオーバーします。
シソ・海藻類は100g当たりが多いですが、10gでも食べる人はまずいません。問題ないでしょう。
それでも納豆・クロレラ食べたい!
そんな方がみえたら、抜け穴は2つあります。
抜け穴1:毎日同量の納豆・クロレラを摂取してもらう
ビタミンKは、とればとるほどワーファリンを打ち消します。つまり打ち消す量を毎日同じにしてしまえばいいです。「食べたいなら、同じブランドの納豆1パックを必ず毎日食べ続ける」ということです。
ですがこれが守れない人もいます。とくにワーファリンを飲むような患者さんは高齢者が殆どで、守れない場合が多いです。そんなときは・・・
抜け穴2:ワーファリンをDOACに変えてもらう
抗凝固薬を、ワーファリンじゃない薬(DOAC)に変えてもらうのです。これしかありません。そうすれば心置きなく、納豆でもクロレラでも食べられます。
おわりに:
ワーファリンのお薬説明書には「ビタミンKを摂らない。大量の緑黄色野菜・納豆を避ける」と書かれています。納豆ダメは文字通りなのですが、不十分ですよね。なぜなら危険なはずのクロレラは抜けているし、どの緑黄色野菜がどの量まで摂れるのかかって、書いていないですからね。
僕は病院薬剤師していて、しょっちゅう聞かれてそのたびに調べていました。でもサイト調べると、詳しすぎて長いないぁってかんじていました。
だからすっきりとポイントだけ絞った記事を書きたかったのです。
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