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高配当株は全体平均でみると、高リターンだと聞きました。それでも、世界的なファンドマネジャーに否定されると自信もてません。ケスラーに否定された株のその後を知りたいです。
【この記事を書く管理人について】
●現役病院薬剤師。ヘルスケア株の生の情報を日常的に仕入れられる
●投資方法は現物の株のみ。それもバイ&ホールドのみ。
〇信用取引・FX・債券(ボンド)・貴金属には一切投資しない。損切せずただ機械的に買うのみのスタンス。
●投資歴10年(昔は貴金属のみやってた、株式は2019年~)、資産額1300万円程度、含み益+150万円程度
●2020年のリターンは+15%程度
こんな管理人が、解説いたします。
ケスラー名指し銘柄:それでも高配当株は危険なのでは?
世界的に有名な元ファンドマネージャーである、アンディ・ケスラーさんのコラムを引用します。
時価総額が100億ドル以上で、配当利回りの高い企業リストをざっと眺めてみるといい。アメリカの未来を垣間見た気分にはならないだろう。いつに変わらぬ日常風景というべきか、たとえば、デューク・エナジー(5.6%)、イーストマン・コダック(5%)、フォード(4.1%)、GM(5.4%)、JPモルガン・チェース(5.6%)、SBCコミュニケーションズ(3.9%)、ベライゾン(3.9%)などだ。
配当は投資家の眼をくらませ、借金漬けで伸び悩む会社、あるいは伸びきった会社の株を買わせる。こうした銘柄はやがて減配となり、下手をすると、投資銀行マンを兼任した調査アナリスト以上に、投資家にやけどをおわせかねない。
~(中略)~
落ち目の企業は配当で投資家を抱き込もうとしているだけだ。それよりも、将来性のある企業の事業投資を支援して、高リターンを狙うのが正解だ。配当が高ければいいだけの話なら・・・鉄道株を後世大事に持っていればいい。
~アンディ・ケスラー(元ヘッジファンドマネジャー)ーウォールストリートジャーナル誌へ記載のコラム『配当を憎む』より
では、このケスラーコラム銘柄を検証してみます。ケスラーさんがコラムかいたと思われる2002年末から、2020年末までの18年リターンの比較です。(泣けてきました。結構時間かかりましたよ・・・)
ケスラーコラム銘柄・全7銘柄の検証2002年~2021年
●ゼネラル・モータース(GM)
2009年6月1日に連邦破産法を適応。株券は一度紙くずになりました。
【余談】
●1960年台は、世界一の自動車会社だった。
●イーストマン・コダック(KODK)
2012年に会社が倒産しました。株券は一度紙屑になりました。
【余談】
●2000年までは世界的大企業だった。写真とカメラの超有名企業で、世界で初めてロールフィルム・カラーフィルムを発明・商品化した。
●1975年に世界で初めてデジタルカメラを発明した。しかし商品化しなかった。あまりにもフィルムでの成功が大きすぎ、デジタルに力割くくらいならフィルムを守れとなったため。
●その結果2000年以降の、カメラのフィルム➡デジタル化に対応できず、フィルム市場の急減とともに売上減少。倒産
●コダック・モーメント(市場が急激に変化する瞬間) という単語すらを生み出した。意味は旧市場での成功にとらわれるあまり、新たなイノベーションに乗り遅れる事をさす。
●デューク・エナジー(DUK)
市場平均が1000➡4000USDにのびるなか、DUKのリターンは2600USDまでしか伸びていません。
●フォード(F)
途中減配し、無配になった時すらありました。リターンはS&Pに遠く及びません。
●ベライゾン(VZ)
【余談】
実は皆さんご存じですよ。ベライゾン・コミュニケーションズではパッと分かりませんが、Yahoo!を運営しているといえば解るはずです。
●JPモルガン・チェース(JPM)
大当たり銘柄でした。連続増配し続けて、リターンは市場平均をおおきく上回りました。
●SBCコミュニケーションズ➡現在のAT&T(T)
SBCコミュニケーションズは、2005年にAT&Tを買収し新社名も「AT&T」に変更しています。つまり2002年からSBCを保持すると、2005年からAT&Tに切り替わります。リターンは市場平均異及ばない
<総論>
銘柄名 | Ticker | 1,000USDは 18年後にいくら? (=トータルリターン) | セクター |
ゼネラル・ モータース | GM | 0 | Industrials |
イーストマン・ コダック | KODK | 0 | Industrials |
デューク・ エナジー | DUK | 2623 | Utilities |
フォード・ モータース | F | 1390 | Consumer |
ベライゾン | VZ | 2654 | Communication Service |
JPモルガン・ チェース | JPM | 7325 | Financials |
SBC コミュニケーション ➡実質AT&Tへ | T | 2085 | Communication Service |
ケスラー7銘柄の合計 | ー | 7000USD ➡16077USD | |
S&P500平均値 | ー | 7000USD ➡28168USD |
・・・流石はファンドマネージャーですね。平均的に買ったら損する銘柄を7つ、言い当ててています。ケスラーコラムに忠実になることで、紙屑になる銘柄を2つも避ける事ができたわけです。
・・・しかし、それでもこのコラムは誤りなんです。それは、一定期間の全株を検証した結果ではない事。(おそらく)2002年時点でこれから落ちるであろう一部銘柄(たったの7つ!)を挙げただけのものなんですね。一部をみて、高配当株はダメ銘柄だと決めつけているのです。沢山ある高配当株の内で、ケスラー名指しの7銘柄の平均値は、ダメなリターンでした。それが事実です。
※更にマイナスバイアスも一つかかっています。それは、7銘柄のセクターが全て、あまり伸びないセクターばかりという事です。伸びの良いとされる「ヘルスケア」「生活必需品」「エネルギー」を見事に避けているうえ、近年爆上がりしている「ハイテク」まで抜けています。そりゃ伸びの悪い業種ばかりで、しかもファンドマネジャーの眼で見てつぶれそうなのばっかり選んだら・・そりゃリターン悪いですよ。
【ケスラーコラムの誤り】
●高配当株は落ち目の株・買うとやけどする➡➡実際は高配当株グループが最良のリターンで真逆
●将来性のある企業の事業投資➡➡将来性で選ばれるグロース株は高PER揃いで、高PERほどリターンが悪いと検証済みで真逆
※しかもリターンは「昔からある株>>新規採用された株」(リンク)だった
●鉄道株は高配当なだけ➡➡事業として落ち目・高配当だったのは正解。だがリターンはというと、落ち目どころか市場平均すら上回っていた。
※この項は「ジェレミー・シーゲル著”株式投資の未来”の第3部第9章」を引用しています
最新の「高配当銘柄リスト」はこちら
最新の「ダウコア10種」「S&Pコア10種」一覧はこちら
この文章のくだり~参考にした本~
今回の「高配当戦略」も、勿論この”赤本”の中にあります(第3部第10章に記載)。
○○戦略というのはシーゲル博士の言葉(の日本語訳)でして、これは「市場平均に勝ってきた法則の数々」「国際的な資産分散」を指しています。この利益をもたらす「○○戦略」とは、ざっとこれだけあります。
【市場平均に勝つための○○戦略】
●高配当戦略(銘柄リスト):高配当株はおしなべて、リターンが市場平均より高い。
●バリュー戦略(銘柄リスト):バリュエーションの安い銘柄は、リターンが市場平均より高い
●セクター戦略(銘柄リスト):「ヘルスケア」「生活必需品」「エネルギー」業種は、リターンが市場平均より高い。この3種に分散投資することで、エネルギー高でのリターン減速をカバーできる
●国際分散戦略:米国株だけでなく、これから存在感を増すであろう(中国・インドなどの)途上国をポートフォリオに加える
➡全てこの”赤本”に載っています。このサイトで管理人自身も(バイアスをかけずに)検証し、近年も正しい事を検証してきました。
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