僕の保有検討するアストラゼネカ(AZN)について、分析します。
製薬株のなかで、十分投資対象になる会社だと思います。売上領域も売上地域も、きれいに分散できている企業だからです。そのうえ英国企業だから配当金も米国株より沢山うけとれます。
【株の概要】
セクター16分類でいうと「Health Care」ですね。
独自の強み・ブランド力
【銘柄の財政】
楽天証券のHPから、抜粋しています。
項目 | 目標 | この銘柄では・・・ |
PBR | 0.5~1.5 | 10.29倍 |
売上高営業利益率 | 10%~ | 11.99% |
自己資本比率 | 50%~ | 21.39% |
流動比率 | 150%~ | 85.90% |
売上高変化率 | 右肩上がり | 1%/年ずつ成長(5年) |
財政優良、とはいえません。製薬会社としては利益率10%台は低すぎて、あまり儲かっていません。流動比率も低く、支払いは綱渡り的です。
あまりに心配なので、利益率について詳しく調べました。
アストラゼネカ(AZN)の営業利益率
こちらのアニュアルレポート(2019年のp79、2017年のp69)から抜粋しています。
左右逆で申し訳ないのですが、段々と営業利益(Operation Profit)が下がっているのが解ります。売上(Total revenue)は伸びているのに、です。
この営業利益低下については、p181に詳しく書かれています。販売費・一般管理費が2019年は641millin USDもかかったからです。(2018年は219M.USD、2017年は241M.USD)これが利益をうちけしてしまいました。これが無ければ利益率は15%となります。この641M.USDはこの会社の一般医薬品についての、世界各地での和解費用が重なったためです。一時的なものと考えられます。
【事業内容・将来性】
アストラゼネカ(AZN)の国別売上
アストラゼネカの英語版HP(外部リンク)のp186から、抜粋しています。英国の国際企業らしく、おおむね経済規模に比例した売上高です。一カ国でコケても割合が小さいということです。
また表では「その他:Others」ですが新興国・発展途上国での開拓も著しいです。
アストラゼネカ(AZN)の製品別売上
最大売上は抗がん剤のタゴシッドです。この薬は抗がん剤で、売り上げも年々40%くらい伸びています。特許も長くアストラゼネカの今後のエースでしょう。
また売上分野でいくと「呼吸器」「心血管・代謝系」「抗がん剤」「その他」で概ね分かれていて、どのジャンルにも伸びている新薬が存在します。円グラフに乗せた薬はおおむね伸びている薬です。どれかコケて株価がガタガタ、とは考えにくいです。
タグリッソ錠
非小細胞肺癌の治療薬で、分子標的薬剤です。内服薬なので通院せずのめることがポイントです。年々倍々で売上伸びている、アストラゼネカのエースともいえる薬です。肺癌の進行例だと、これまで救えなかった命をタグリッソなら救える、とされています。
特許も2032~34年までと非常に長いです。
イミフィンジ点滴静注
同じく非小細胞肺癌の治療薬です。やはり分子標的薬剤です。肺癌で手術のしようがなく、かつ非小細胞がんである場合、転移阻止の薬はコレしか存在しません。つまり現在は独占しています。副作用もこれまでの白金製剤(シスプラチン・オキサリプラチンなど)よりも少なく、非常に期待されている薬です。
特許も2030~2033年と非常に長く、売り上げもものすごく伸びているので安心材料です。
シムビコート吸入用
グラクソのアドエア(国際名はセレタイド)と同じく、慢性気管支喘息の吸入薬です。ただし呼吸器学会などが推奨するのはシムビコートのほうです。特許は2019年で切れていますが、売上はあまり落ちていません。
吸入操作が面倒で改善余地あるように感じます。もし同効で吸入操作が簡単な後発品が出た場合、売り上げ低下は避けられないでしょう。
ファセンラ自己注射
分子標的薬剤の、気管支ぜんそく薬です。この薬しか効かない疾患が「重症抗酸菌性気管支喘息」です。抗酸菌の暴走をとめて喘息をしずめる、唯一の薬となります。
マーケットが小さすぎて売上はちいさめですが、2028~2034年までの特許をもちます。
懸念事項
営業利益率の低下が気になります。これは一時的な和解費用の嵩みだと考えています。2020年度の四半期報告をみて、和解費用などが下がっていれば十分いいと思います。薬の将来性については、伸び盛りの薬をいくつも持っており心配無用です。
将来の成長性
売上は右肩上がりです。
【配当金】
配当王・配当貴族ではありません。見ての通り増配していません。
アストラゼネカ(AZN)の配当金推移 筆者作成
2015年は記念配がありました。実質は2012年をピークに配当金は横ばいです。
アストラゼネカは英国ADR株ですので、配当金受取にメリットがあります。
ADR株の課税
現地源泉税率 | 国内源泉税率 | 税引き後 (現地+国内) | |
米国株 | 10% | 71.72% | |
英国株 | 0% | 79.69% | |
オーストラリア株 | 0% | 79.69% | |
インド株 | 0% | 79.69% | |
メキシコ株 | 0% | 79.69% | |
カナダ株 | 15% | 67.73% | |
ロシア株 | 15% | 67.73% | |
アイルランド株 | 20% | 63.75% | |
台湾株 | 21% | 62.95% | |
デンマーク株 | 27% | 58.17% | |
ベルギー株 | 30% | 55.78% | |
スイス株 | 35% | 51.80% |
このようになっています。だから同じ1.5USDの配当金だとしても、
米国株のアッヴィ➡1.5×71.72%=1.0758USD
英国株のアストラゼネカ➡1.5×79.69%=1.195USD
を実際に受け取れるのです。
【株価】
好きな株なのですが、2020年6月現在の株価は高めで、配当利回りも3%以下です。
【保有数・購入に至る経緯】
肺癌領域では独占的に強いこともあり、軍資金がたまりしだい購入予定しています。
一社でもつには(利益が低くて)コワイ株なので、たとえばアッヴィ、メルク、JNJ、ファイザー、アムジェンなどの安定した製薬株とともに分散で持つのなら、有りだと思っています。
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