これは現役の病院薬剤師によるブログです。
現役の病院薬剤師さん、もし疑義照会のやり方で詰まったら「参考どうぞ」ということでこのブログを見てください。
転職で病院薬剤師をお考えの方は、「病院薬剤師ってこういう事やるんだ」と、このブログを参考にして下さい。
全体的な業務は?
全体的な業務については・・・こちらを参照下さい。
このブログはこの記事の一部の、「疑義照会(を調剤薬局から受ける側)」の仕事を書いています。
疑義照会(薬用量確認)の型と実例
院外薬局➡薬剤部に、あった問合せの例を、ブログ記事にさせていただきました(一部改変)。
院外薬局さん:「バクタ顆粒0.5g 分2朝夕食後で出ている。いくら高齢でも少なすぎるのでは?」という内容でした。
こういう場合に病院薬剤師がやる業務は、次の「型」を使います。この「型」は何も考えず使っても殆ど当たるので、ぜひ覚えておいてくださいね!
①添付文書(やインタビューフォーム)で、用量のページを用意する
②電子カルテで、患者情報(年齢・体重・クレアチニン値)のページを開く
③電子カルテで、主治医の名前で代行入力モードにしておく
④以上を行ったうえで、主治医に用量確認の問合せする(変更時は処方訂正)
⑤④の医師の返答を、院外薬局さんに返事する。
①添付文書で、用量のページを用意する
まず①ですね。インタビューフォームの、用量ページをだします。 (詳しい出し方はこの記事を参照)
そうすると、この画面が用意できますよね。
この場合はどうやら、病名ごとに用量が違うようですね。また腎機能ごとに用量が違います。
②電子カルテで、患者情報のページを開く
今度は患者さん自身の情報ページを開きます。するとこんな情報が得られました。
<患者パラメータ>身長:不明、体重:不明、クレアチニン:0.80、年齢:100歳
この例のバクタでは、用量はクレアチニンクリアランスで決まりますよね。ですからクレアチニンクリアランスを求めます。でもこれ、求められますか?
待ってください!体重解らないとCcr解らないですよ。患者さん病院戻って、体重測りなおしてもらいますか?
要らないです。だって求めたいのはCcrがどの範囲内に入るかって事ですよ。
・・・そう、大事なのは「正確なクレアチニンクリアランス」ではなくて、添付文書(やインタビューフォーム上の)どの範囲内にはいるかって事なんです。このページの計算式を使い、試しに計算してみます。
体重35Kg と仮定すると・・・
体重25Kgと仮定すると・・・
・・・どうやら体重25Kg(よっぽどひどい低体重)じゃない限り、クレアチニンクリアランスは15~30範囲に入りそうですよね。
ですから、「用量半減」の範囲内です。
そして病名は「尿路感染」です。つまり一日量は「4g 分2朝夕食後」ですよね。
③電子カルテで、主治医の名前で代行入力モードにしておく
医師の権限でないと、処方箋は触れないからです。こうすると、医師と電話しながら素早く処方訂正できますよ。
④以上を行ったうえで、主治医に用量確認の問合せする
ここまで準備できて初めて、医師に問合せします。ここまで準備する理由は、
貴重な医師の時間を奪わない為
これに尽きます。問合せする内容はこのとおり。
●見た目体重は25Kg を切っていたか?切らなければ、用量半減で計算していい。
●つまりこの患者さんには「1日2g/分2朝夕食後」が正しい。
で、どうなったかと言うと、体重はあきらかに40Kg を超えていたと(病院もどって測定の必要ナシ)。つまりは医師の用量計算ミスでした。その為、1日0.5g➡1日2gへ訂正してほしい、と言われました。
③代行入力で入っているので、そのまま訂正できます。
⑤④の医師の返答を、院外薬局さんに返す。
最後は院外薬局さんに返事すればOKです。これで疑義照会(用量確認)は完了となります。
疑義照会(残薬調整)のパターン
これが最も多いです。単純な事務作業のような気がしてきますが、薬剤師の大事な仕事です。
①残薬調整(例:アムロジピン56錠処方されてるが、30錠余ってるから26錠にしてほしい)
②日数がおかしい(例:エディロール56日分なのに、ボナロン錠35も56日分でている)
あれ、2番ってなんでおかしいの?
よく気付きました!じつはボナロン錠35㎎が、特殊なんですよ
●週1回服用:ボナロン錠35㎎、リセドロン酸錠17.5㎎、ノルスパンテープ4㎎
●月1回服用:ミノドロン酸錠50㎎
●2週に1回皮下注射:ヒュミラ皮下注射40㎎ペン
何でもない疑義照会が多い理由
病院薬剤師をされる方、こんな事思いませんか?
どうして調剤薬局さんは、何でもない日数変更などの電話が多いのだろう?
もちろん、これは理由があります。
「疑義照会により処方変更された場合に、薬局の利益がでる」からです。
この処方変更された場合がミソで、どんな変更でも30点(つまり300円)を算定できるのです。
※残薬調整の場合30点、残薬調整以外の場合40点を算定可
だから、薬剤部には疑義照会と称して、残薬調整などなんでもない電話がジャンジャン鳴るんですね。正直うっとおしいなとも、思います。
ですが、そこは大目に見ています。私たち病院薬剤師は、院内で捌き切れない外来調剤を一手に、調剤薬局さんに引き受けていただいてる立場ですから。それに調剤薬局業界が、あまり利益の出ない苦しい情勢だということも知っています。
※いかに利益出ていないかは、このブログ記事も参照。下記ブログには調剤薬局チェーンは利益がでない=給与もでにくい体質で、おすすめできない旨を書いています。
(製薬・医療機器などといった)医療系の多職種と比べると、いかに薄利多売で給与が上がり様がないか、わかったと思います。厳しい状況だから、こういう細かい疑義照会もしょうがないよね、と思っています。株式投資家として、製薬株(とテルモ)ばかりを買い続ける理由もこれなんです。
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