通院だけではダメ・健診必要なコワイ話

病院薬剤師 業務例

よく耳にするのが

「私は健康に気を使っている。食事も、生活習慣も気にしている。だから大きな病気にならないだろう」

「月1回医者にかかっている。健診受けてないけど大丈夫だろう」

大間違いです。管理人は病院薬剤師の立場上、健診をうけず後悔した人間を知っています。

健診受けず後悔した事例

個人クリニック(消化器内科)にかかってたAさん

月1回個人クリニック(消化器内科)にかかってた、Aさんという方がいました。

5月までは、この個人クリニック通いでした。しかし、便秘と腹痛が治らない。どれだけくすり使ってもダメ。最後には本当に便がでなくなりました。それで6月、管理人勤務先(以下、L病院)に紹介されてきたのです。

L病院の内科医も、急いで大腸ファイバー検査。すると、大腸の直腸部分が癌で、しかもスコープが通らないくらい狭くなっていました。追加したCT・MRI検査で腹水・肝転移・肺転移も見つかりました。要するに、stageⅣの大腸がんです。

がんを「自覚症状で発見」した事例です。

「余命3か月」の宣告も受けました。

Aさんはその後、直腸を切除し、人工肛門(ストーマ)も作りました。これは経口摂取を確保するためで(食べても直腸で詰まって便が出て行かず、いずれ破裂で死に至る)、大腸がんの根治のためではありません。なぜなら、stageⅣの大腸がんは切除しきれないからです。

いきなり余命3か月を宣告され、便も人工肛門となり、Aさんは穏やかではありませんでした。Aさんに薬剤指導に行った時、かかりつけ医への怒りと家族(特に奥さん)への感謝を、涙ながらに述べていました。葬式のパンフレットが挟まったクリアファイルを手にしながら・・・。

Aさんは、健康診断を一切受けていませんでした。

どうして受けなかったのか。後から聞いたところでは、月1回医者に診てもらってるから十分だ、と慢心していたのです。

Aさんは余命宣告より短く、その2か月後に亡くなりました。

管理人の個人的には、個人クリニックの医師がもっと早く気が付いてよとか、健康診断しているか確認するとか、してほしかったです。このクリニックの医師になんでお咎めないんだろ、とも。

ですが、誰かを責めても命は帰ってきません。私たちにできることは健康な時から、健康診断をちゃんと受けろって事なんです。

総合病院通院してたBさん

総合病院の内科に、1か月に1度通院していたBさんという方。

7月の内科受診時に訴えがありました。貧血がすごく、だるくて仕方ないと訴えました。便を調べると真っ黒。

胃カメラで調べました。すると、大きな胃癌がみつかりました。追加でCT・MRIを撮影したところ、肝転移・肺転移も見つかりました。

つまり stageⅣの胃癌です。手術適応はありません(切除する体力的消耗>>病巣を取り去る利益)。出来る治療は抗がん剤のみです。

Bさんも最初、ナーバスになっていました。「こんな古臭い抗がん剤、俺にはもっといい薬あるんじゃないのか?いまの時代もっといい抗がん剤が出ているはずだ!俺は薬勝負なんだろ?」と。

ですが、胃がん抗がん剤の第一選択は「S-1+CDDP療法」と決まっています。それを伝えて納得してもらいました。

ずっと受診していた内科医は、「もっと早く健診受けて欲しかった」とも伝えていました。

このBさんもがんを「自覚症状で発見」した事例です。このパターンは自覚症状がでるくらい進行していて、stageも悪い場合が多いのです。

Bさんも、7月の発覚から5か月しか生きられませんでした。12月に亡くなったのですが、亡くなる2週間前にこう言われていました。

「作った短歌が入賞して、東京での授賞式によばれたよ。年明けにね。でも断ったんだ、体力的に無理だから」

Bさんは頭のいい方で、短歌をいくつもつくって入賞できるような方でした。最高の晴れ舞台の筈なのに、それを断らないといけないなんて苦しかった事でしょう。年明けのその授賞式、読み上げられた短歌は天国からの声になったのでした。

個人病院に受診し続けたDさん

まだ若い方で、50台前半です。結婚して2人いる子供は、成人していません。

元々個人クリニックに受診し続けていた方です。でもそこで受けた健康診断で、尿がやけに黄色い事に気が付きました。クリニック医師から私の勤務先A病院を紹介され、検査をうけてがんが発覚しました。胆のうがんでした。

入院してきたとき、胆管閉塞でひどく黄疸していました。胆道ステント入れて黄疸はストップしました。しかし追加PET検査を受けて、致命的な転移が見つかりました。Virchow転移で、つまりかなりがんが転移進行してきて余命が短いという事です。具体的には半年後にあたる、次の正月までのADL(生活自立度)を確保するのが治療目標、という事でした。

ここで皆さんに、質問があります。

皆さんは、自分の余命が短くあと半年しか生きられないと解った時、知りたいですか?(がんの全告知を受けたいですか?
)

・・・管理人であれば、知りたいです(全告知受けたいです)。それは今度むかえるクリスマス・お正月が最後になるかもしれないから。元気ないまのうちに新婚旅行での思い出の場所とか、行きたかった場所に旅行したいから。最後の正月くらい、無理してでも家族写真を撮りたいから。愛する家族に向けて、遺書を書きたいから。

・・・ですがDさんの妻は、Dさん本人には本当の余命を伝えませんでした(=全告知せず、胆のうがんとしか伝えない一部告知をした)。「私が本当の事を伝えて、抗がん剤治療する気力まで奪ったらどうしよう」って。あくまで抗がん剤に向かわせたかったのですね。管理人の医療人という立場では「全告知受けたい」と云えても、じっさいに家族の立場では「全告知したくない、一部告知しかできない」となるのかもしれません。

・・・その結果Dさんはいつか治ると希望をもって、辛い抗がん剤を受け続けてくれました。しかしいつまでたっても手術での根治ができない。いつ手術するのと妻・主治医に聞いても、あいまいな回答が返るのみ。Dさんはしびれを切らして、鎌をかけるようになりました。子供の自転車置き場がなくなると言っても、来年から僕はいなくなるからいいじゃないか、と。Dさん奥さんはハッとして、返答できなかったそうです。ずっと心臓に悪い思いをしています。

このお正月の前後に、Dさんは抗がん剤治療をいったんストップしました。その理由をDさん本人は知る由もないですが、理由はもちろん「最後の正月だから、元気で居させてあげたい」からでした。

Dさんはがんを「健診で発見」した事例です。一応、毎年健診を受けてはいました。しかし、その内容があまりに簡素で不十分でした。大腸ファイバーや胃カメラ・腫瘍マーカー等のがん検診を受けていなかったのです。こんな若くしてと思うかもしれませんが、不幸にも若くてもがんになる方は見えます。ましてやDさんの場合、がん家系で両親も若く亡くなっていました。だから予測はできたはずなんですね。

がんの余命比較 ~ 健診で発見 vs 自覚症状で発見

いかに「検診が大事」かが良くわかりますよ。調べれば調べるほどに。

この記事をご覧ください。

【下記記事でわかる事】
●日本・アメリカで医療水準は同程度なのに生存率が全然違う。その理由としてがん検診の受診率の差がある
●日本のがん検診受診率の低さは際立っていて、一番高い乳がん検診が20.1%である
●がんでの死亡率は、日本は上昇傾向なのにアメリカ・ヨーロッパは減少傾向。

http://square.umin.ac.jp/kanagawa-hohyuh/pohyu-NL/46canserseizonritu.pdf

いくら「夢の抗がん剤が開発・発売された」といってもそれでも命は救えません。あのオプジーポだって、胃がんの完治ではなく余命を伸ばす為に使う薬なんです。

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