(注意:数式のゴチャゴチャした話になりますので難しめですよ)
株式の本当のトータルリターンの計算をしてみます。
トータルリターン計算となると、色々なサイト・ブログで計算方法が異なります。そこで管理人は、世界一権威ある方の計算方法に、可能な限り近い方法で計算することにしました。
【ルール】
●配当金はすべて再投資に回す(=配当金で年1回年末日に同じ株をまた購入する)
●一株たりとも売らない
●スピンオフした全銘柄も保有し続ける
※ジェレミー・シーゲル著書「株式投資の未来」p11を参考、一部筆者改変して使用
※実際は1株以下は購入できないのですが、このサイトではすべて購入可能として計算しております。それは「計算上のトータルリターンを出す為」です。ご了承下さい。
具体的:ファイザー(PFE)のトータルリターン
1997年の配当金は0.2151USDでした。(=0.053763×年4回)配当税を課されるのでその72%、0.154823USDを受け取れます
1997年の株価終値は24.8533USDでした。
・・・すると年末に再投資できた株数はこちらです。0.154823÷24.8533=0.00623株
この0.00623株というのは、1株を保有し続けたときに年末に購入可能な株数です。かりに1000USDで1996年末(終値13.8333)にファイザーを買っていたら、72.2893株を保有していました。
1000USDを1996年末にファイザー(PFE)に投資して保有し続けると・・・
年次 | 年間配当金 (USD) | 課税後配当金 (USD) | 株価終値 (USD) | 再投資株数 (1株当り) | 再投資株数 (総数) | 合計株数 | 合計金額 |
2020 | 1.442124 | 1.038329 | 36.81 | 0.028208 | 3.253013 | 118.5762 | 4364.788 |
2019 | 1.366224 | 0.983681 | 39.18 | 0.025107 | 2.824472 | 115.3231 | 4518.361 |
2018 | 1.290324 | 0.929033 | 43.65 | 0.021284 | 2.344488 | 112.4987 | 4910.567 |
2017 | 1.21442 | 0.874382 | 36.22 | 0.024141 | 2.596535 | 110.1542 | 3989.784 |
2016 | 1.13852 | 0.819734 | 32.48 | 0.025238 | 2.64773 | 107.5576 | 3493.472 |
2015 | 1.06262 | 0.765086 | 32.28 | 0.023702 | 2.428959 | 104.9099 | 3386.492 |
2014 | 0.986716 | 0.710436 | 31.15 | 0.022807 | 2.285157 | 102.481 | 3192.282 |
2013 | 0.910816 | 0.655788 | 30.63 | 0.02141 | 2.100224 | 100.1958 | 3068.997 |
2012 | 0.834916 | 0.60114 | 25.0793 | 0.02397 | 2.296266 | 98.09557 | 2460.168 |
2011 | 0.759012 | 0.546489 | 21.64 | 0.025254 | 2.35969 | 95.79931 | 2073.097 |
2010 | 0.683112 | 0.491841 | 17.51 | 0.028089 | 2.552928 | 93.43962 | 1636.128 |
2009 | 0.759014 | 0.54649 | 18.19 | 0.030043 | 2.650906 | 90.88669 | 1653.229 |
2008 | 1.21442 | 0.874382 | 17.71 | 0.049372 | 4.151433 | 88.23578 | 1562.656 |
2007 | 1.100568 | 0.792409 | 22.73 | 0.034862 | 2.832584 | 84.08435 | 1911.237 |
2006 | 0.910816 | 0.655788 | 25.9 | 0.02532 | 2.006489 | 81.25177 | 2104.421 |
2005 | 0.721064 | 0.519166 | 23.32 | 0.022263 | 1.725793 | 79.24528 | 1848 |
2004 | 0.64516 | 0.464515 | 26.89 | 0.017275 | 1.316382 | 77.51948 | 2084.499 |
2003 | 0.56926 | 0.409867 | 35.33 | 0.011601 | 0.873902 | 76.2031 | 2692.256 |
2002 | 0.49336 | 0.355219 | 30.57 | 0.01162 | 0.865261 | 75.3292 | 2302.814 |
2001 | 0.417456 | 0.300568 | 39.85 | 0.007542 | 0.557439 | 74.46394 | 2967.388 |
2000 | 0.341556 | 0.24592 | 46 | 0.005346 | 0.39301 | 73.9065 | 3399.699 |
1999 | 0.290954 | 0.209487 | 32.44 | 0.006458 | 0.47168 | 73.51349 | 2384.778 |
1998 | 0.240356 | 0.173056 | 41.6667 | 0.004153 | 0.302113 | 73.04181 | 3043.411 |
1997 | 0.215052 | 0.154837 | 24.8533 | 0.00623 | 0.450367 | 72.7397 | 1807.822 |
1996 | 0 | 0 | 13.8333 | 0 | 72.28933 | 1000 |
この様に、1997年末には株数が72.28933になってます。
配当金は1株当たり0.154837USD受け取れます。これは0.00623株のファイザー株を購入(=再投資)できる計算です。
※0.00623株=0.154837USD÷24.8533(1997年末の株価) で計算できる
※実際は1株未満は購入できませんが、計算上できると考えます。
ですので、1997年末に購入できるファイザー株数は72.28933株×0.00623=0.4504株です。
すると1997年末の保有株数は (再投資分)0.4504株+(元々保有分)72.28933株=72.7397株
1年後、1998年末には株数は72.7397株ですよね。
配当金は1株あたり0.173056USD受け取れます。これは0.004153株のファイザー株を購入(=再投資)できる計算です。
所持している株数は72.7397株ありますので、1998年末に購入できるファイザー株は72.7397株×0.004153=0.302113株ですね。
すると、1998年末の保有株数は(再投資分)0.302113株+72.7397株=73.04181株 となるわけです。
・・・
これを23年間繰り返して、計算したものです。
すると・・・2020年末には118.5762株、金額にして4364.788USDを所持していることになります。
※実際は購入時手数料が0.45%かかります。嫌ならDMM.com証券を使いましょう。全く同じことが再現できますよ
ちなみに・・・このファイザー(PFE)の例をグラフにするとこうです。
どうでしょうか?株価≠トータルリターンであることがわかるはずです。
例にだしたファイザー(PFE)というと、株価は23年まるで成長していなく、しかも2009年の大減配もありイメージ悪いですが、トータルリターンでみると印象一変しますよね?株価は2000年がピークだというのに、合計金額は2018年のほうが断トツで多いのです。何よりもダメに見えるこの会社が、実は年率6.62%ものリターンをもたらしていて、実は市場平均とほぼ互角の勝負だった事。みんなのイメージは、検証するとひっくり返るものなのです。
【トータルリターンでみるポイント】
●株価の伸び悩むイメージと、実際の合計金額が著しく違う為。
●株価は横ばいだというのに、合計金額は伸びてきています。
トータルリターンを頑張って計算すると、真実が見える例
株価不変でも資産が増える場合
・・・ブリストルマイヤーズ(BMY)がいい例です。
株価があまり伸びてないのに、資産は倍に増えてしまうという摩訶不思議な株です。2001年に株価51USDの時投資した1000USDは、2020年には株価62USDで2011USDに増えました。株価の伸び方を想うと信じられませんよね。ウソだと思うのなら、こちらにすべてデータ公開します。
(余談)このトータルリターン計算(年末に同一株再投資)は本当に本当にきっつい計算でした。毎年の配当金から、税引き後配当金(国ごとに違う税率)を調べて、その年の株価を調べて、購入できる同一株数を計算して。また来年同じ計算して・・・を続けていくわけですので。ですがこれで、私たちの思い込みと現実がまったく別物、いかに「成長の罠(ジェレミー・シーゲル博士の言葉を借りて)」に騙され続けてきたかよくみえました。それと株価低迷局面で売らず、再投資つづける大切さも。
この計算をはじめたキッカケ
NYダウの銘柄推移の記事を見ていた時、「NYダウ当初の30株を持っていて、入れ替えなかったらいまの指数ほどに伸びていなかっただろう」と書かれていたのに疑問を覚えたからです。管理人の考えは逆で、もし丁寧にトータルリターンを追ったら当初銘柄のほうが上なのでは、と考えています。(その理由;シーゲル博士の著書で、S&P500指数採用銘柄は当初銘柄そのままの方が高リターンだったと書かれている為)
これに限らず、世の中には「検証もしてない憶測・イメージ」での記事が存在します。管理人は命を預かる病院薬剤師である性格上、検証しないと気が済まない人間です(世の中の治療法は検証・検証を経て根拠あるものしか採用されていません)。その検証を「世界で最も権威ある人間」と同じもっとも信頼性ある方法で、自分でしてみたいと考えたからです。
コメント