【製薬系投資】向精神薬からみる投資先

薬剤師なら投資の為でなくても、是非みておいて欲しいです。睡眠薬・抗不安薬が多く30日指定されている「向精神薬」ですが、危険性が解ってきています。

その向精神薬の危険性について。高齢化による処方頻度の増加について。今後の傾向について。チャプターをわけて解説いたします。

【向精神薬の危険性】

この項目は、こちらのサイト(外部リンク)から抜粋いたしました。筆者の体験談や感覚ではなく、れっきとしたデータです。

高齢者ほど飲んでる薬の数が多いのは、ご存じですよね?

<5剤以上飲む人の割合>
●65~74歳➡19%
●75~84歳➡24.6%
●85歳~➡33.6%

そして認知症患者だと、剤数は増えています。

<5剤以上飲む人の割合(認知症患者だけ)>
●65~74歳➡32.6%
●75~84歳➡40.7%
●85歳~➡52.7%
認知症の方の方が、明らかに罪数が増えています。これは「認知症だから、認知症治療薬のぶん剤数増」なのか、「剤数多いから、認知症引き起こす」なのかわかりません。
ですが剤数が多い患者さんほど、ベンゾジアゼピン系薬(BZ系薬)の処方率も高いです。そしてこのBZ系薬は、とてもリスキーです。

【BZ系は効かない・危険とされる?】

実例1:BZ系薬は認知症の寝つきを改善しない

睡眠導入剤といえば、第一選択はBZ系薬のひとつ「ゾルピデム錠」です。理由はふらつき副作用が少ない、睡眠中の脳波を悪化させない(レム・ノンレムの脳波は自然睡眠と同じ)だからです。

※ちなみに「1位:ゾルピデム、2位:ベルソムラ、3位:ルネスタです。2017年の医師アンケート調査より」

ですがこのゾルピデムを含むBZ系薬、効果を証明できなかったという市販後調査の結果があります。

(外部リンクP13を参照)要するに、ほぼ同じ条件で、「BZ系薬をのませた人々」と、「プラセボ(乳糖など一切効果のない物)をのませた人々」とで、寝つきに差が無かったのです。プラセボのんでた人は薬は、「睡眠薬を飲んだぞ、これでねれる!」という安心感だけで寝付けたのです。

(私事ですが昔不眠患者さんに、オロナミンCをボトルにつめて「睡眠薬だよ~」といって渡したら、「良く寝れた、ありがとう!」って感謝されました。プラセボ効果とはこういう事です。)

危険性:骨折リスク上がる

BZ系薬をのんでいた方は、骨折リスクが高まります。若年者に少なく高齢者におおい骨折の「大腿骨頚部骨折」の、発生率について。この骨折はまた、転倒した拍子に多発することでも有名です。

同じ高齢者でも、「BZ系薬を一切使わない人」と「BZ系薬を使う人」とでは、骨折発症率は1.6倍に増えています。

これはBZ系薬で転倒増加➡大腿骨頚部骨折、と考えられます。

これだけじゃありませんよ。

危険性:交通事故率が倍増

BZ系薬をのむ人は、運転手として交通事故を発生させる率は2.2倍に増えます。

これはアメリカ・ワシントン州で、21~79歳の運転免許をもつ住人を調査したデータです。

危険性:第一選択のゾルピデムの危険性

最初僕はこの話をきいて、こう思いました。

「ゾルピデムを貶めて、先発睡眠薬を売りたい先発品メーカーの陰謀の調査結果ではないのか?」

・・・でもちがいます。現場にいると、確実に危険性を散見します。

記憶喪失する方。夜間突然起きる方。せん妄をおこす方。それは「入院前は睡眠薬なしだったが、入院後ゾルピデム開始した人」に共通してみられました。確かに怖いです。ゾルピデムはというか、先発品マイスリー時代から、危険性は「添付文書の警告」に記載されていました。

アステラス製薬 マイスリー添付文書より引用

こんなに使用数が多いだなんて、みなさん高をくくっていたのでしょうか。この薬のメリットは「他のBZ系薬に比べて脱力副作用が少なく、高齢者でも使いやすい」ということです。確かに理屈的(薬理学的)にはそうなのですが、いざ現場では飲んで倒れた人を何人も見かけます。

現在の動向

近年2018年あたりから、うちの院内Drも「BZ系薬は危険だ!」と避けるようになってきました。とくにゾルピデムは整形外科医師に、転倒が多いので避けられています。それで代りに、「ベルソムラ」「ロゼレム」「ルネスタ」が使われるようになってきました。

(2020年6月の)世の中ではまだまだ、ゾルピデムが主流です。ですが危険性が周知されて、医師からの信頼性・処方頻度が落ちています。

医師が第一選択で使用する睡眠薬

このように★マークのついた、安全性の高い薬(BZ系薬でない・向精神薬に属さないもの)であるベルソムラ(スポレキサント)、ルネスタ(エスゾピクロン)が躍進しております。BZ系薬の危険性に気が付き始めたからです。

【何で注目したのか】

理由1:医師の処方傾向の変化

医師たちが気が付きはじめて、「安全な睡眠薬」の消費が伸びてきているからです。学会や勉強会で、さかんにBZ系薬の危険性が叫ばれているからですね。

理由2:睡眠薬は一生続けるものだから

睡眠薬の市場サイズは結構ばかになりません。睡眠薬は、一生続けていく類の薬です。また、高齢化=不眠症の有病率も上昇しているんです。つまり地球全体の人口増加&高齢化によって、拡大していく右肩上がりのマーケットなんです。

そして睡眠薬のマーケットは、「BZ系薬(向精神薬の括りの一部です)」は減少しはじめて、「BZ系以外の睡眠薬」が増えてきています。令和2年の保険報酬改定で「ポリファーマシー対策加算」「向精神薬(BZ系薬も含む)多剤処方の場合の減点」が盛り込まれ、しかも影響が大きい算定なんです。だかだBZ系薬はDrが危険性を知って出さなくなるうえ、薬局側もバンバンカットしたくなる流れなんです。

※ただ投資家ではなく薬剤師としての本音をいえば、不眠症患者がいなくなって、みんなが薬なしでぐっすり寝られる世界になってほしいです。

理由3:実際に売上が変化しているから

睡眠薬の売上高(Million USD)
●スポレキサント:MRKアニュアルレポートのP121より抜粋
●エスゾピクロン:大日本住友製薬の有価証券報告書より抜粋・1USD=108円で換算
 

このように伸びています。このうちエスゾピクロンはアメリカ特許がきれており、多くを望めません。いっぽうメルク社のスポレキサントは2031年まで各国特許があるため、これからも伸びるのではと予想しています。スポレキサント=ベルソムラで、メルクのページを参照ください。

伸びるだろう睡眠薬は、確実にスポレキサント(ベルソムラ)です。そういうDr心理に変わってきたし、患者さんにもボケる眠剤はイヤダ、という現場の声も効くようになったからです。だからメルク社の株は、伸びるのではと思っています。

※ゾルピデムは正確には「ベンゾジアゼピン類似薬」なのですが、現場薬剤師としてはほとんど注意点や薬理が同じのため、あえてBZ系薬と括っております。

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