世界最大の後発医薬品会社・テバ製薬(銘柄ティッカー:TEVA)について。
設立自体は1901年と大変古く、この20年はずっと後発医薬品売上がトップでした。日本も、世界どの国も医療費抑制のため後発品拡大を目指している、だから伸びしろのある会社だ!と皆さん考えがちです。しかし私は「注目されてホットな銘柄・高PERは避ける」と散々お伝えしていきていますが、まさにホットで高PERだったバブル会社、それがテバでした。
この会社の記事は「話題性で株を買うと、製薬会社といえども失敗するよ」という注意喚起の意味を込めています。その失敗を避ける秘訣も、随所に書かせていただきます。
●株(ファンド)の概要~そもそも何してるところ?
>セクター11分類・細かな業種・ディフェンシブor中間or景気敏感
GICSのセクター11分類でいえば、「ヘルスケア」。その中でも「製薬会社」 に属します。
製薬会社=典型的なディフェンシブ株です。しかしテバ(TEVA)の場合は少し違っていて、2017年に大コケして大暴落を経験した会社です。不景気に関係しない要因とはいえ、安定性には欠ける会社です。
>その売上の内訳は?内訳別の将来性は?
●地域別の売上内訳
中東・イスラエルの企業とは言えやはり国際的に分散した会社です。
●領域別内訳推移
>主要な個別製品の説明
・・・といきたいのですが、この会社は売上ほとんどを占める「後発医薬品情勢」がかぎを握っています。後発医薬品情勢とテバ(TEVA)の立ち位置についての説明といたします。
●後発医薬品(特許切れ薬)の宿命:激しい価格競争
これは病院勤めの私だから実感するのですが、後発医薬品というのは価格競争が激しくなる宿命にあります。先日中外製薬さんの「ハーセプチン静注®」が特許切れし、バイオシミラーを選ぼうという話になりました。各社とも値引き合戦となり、「うちは薬価の25%引きで納入する」「うちは30%引き!」「うちにしてよ!33%引きするから」・・・となり、結局33%引きしてくれた日本●薬さんに決定したいきさつがあります。これはハーセプチンのバイオシミラーにかぎらず、低分子医薬品の特許切れ薬でも全く同じように選んでいます。もちろん値引きがすべてでなく信頼できない会社は除外するのですが、値引きが有力な決定要素なのは確かです。
●後発医薬品シェア
さきほど私は、米国で半分以上売り上げていると申し上げました。その米国ではすでに後発品割合が91.7%、開拓されつくしています。あとは米国人口の増加に比例して、のばすしかありません。日本が未だ59%と低く、開拓の余地あります。
●後発医薬品会社の林立しすぎ
米国では後発医薬品会社がふえすぎ、さらには先発医薬品会社までもが後発医薬品に参入してきています。たとえばファイザー(PFE)がそうで、新薬開発をある程度諦めた会社は、後発医薬品に参入していています。これも競争激化させて利益圧迫する要因です。
●株主への還元姿勢
>配当金・一株利益の推移は?
テバ(TEVA)は2017年を境に無配転落、2017年に大幅な赤字となっています。これだけでも危険な感じがします。
テバ(TEVA)に配当金を期待する方はほぼいないと思いますが、念のため持っておきます。
現地源泉税率 | 国別源泉税率 | 税引後受取率 |
米国株 | 10% | 71.72% |
英国株 | 0% | 79.69% |
オーストラリア株 | 0% | 79.69% |
インド株 | 0% | 79.69% |
メキシコ株 | 0% | 79.69% |
イスラエル株 | 15% | 67.73% |
ロシア株 | 15% | 67.73% |
アイルランド株 | 20% | 63.75% |
台湾株 | 21% | 62.95% |
デンマーク株 | 27% | 58.17% |
ベルギー株 | 30% | 55.78% |
スイス株 | 35% | 51.80% |
>株数推移は(自社株買いによる減)
当然といいますか、2017年頃から発行株式数は増えています。利益がないので、自社株買いどころではありません。株主還元については配当金➡ほぼダメ、株価値上がり➡業績低迷・利益無で自社株買いもできず(むしろ増資)のため、ほとんど期待できません。
●将来性
>売上成長率は?
2017年は悪夢のような年でした。ここで大コケしたことでテババブルははじけ、みんな失望売りしました。それで株価は低迷しています。
【テバ・バブル?】
●そもそも割高だった:2006年末のPERは52と高値でした。2015年・2016年ともPERはそれぞれ平均30もありました。
●時代遅れのビジネスモデル:後発医薬品会社がふえ、価格競争が激化していた
> 近年のトータルリターンは?(2001~2020年)
19年間保持した場合です。「これからはジェネリックの時代!バイ&ホールドするぞ!」としても、むしろ元本割れしてしまいました。医薬品企業で、これから後発医薬品の時代だというのになんで?と思うでしょう。証拠として数値データ公開いたします。
これは14年リターン。さらに悪くなっています。
これがバブル(PERが高い株)の恐ろしいところです。手出し無用です。
>利益率は?
利益率12%程度です。他の製薬会社が20~25%程度であることを考えるとだいぶ低い、つまり参入障壁の低いビジネスモデルです。
ボロボロだった株価・利益額・配当金(そしてトータルリターン)と比べて、売上だけは14年で3倍以上に成長したことも解ります。
つまり「いくら売上成長しても、割高だったなら株主に還元できない」という事なのです。管理人がPER25超えは願い下げ、30以上は機械的に対象外としているのはこういうワナ銘柄を避ける為なのです。
【近年のテバ(TEVA)の事件】
●2017年、コパキソン米国特許切れ問題
・・米国での2017年での特許切れかどうか、裁判で争っていた。しかし敗訴、5月には後発医薬品が登場。
・・「後発医薬品会社のテバ(TEVA)」が持っていた数少ない新薬で、売上の何と20%を占めていた。
●2016年秋、ジェレミー・レビンCEOがわずか1年で辞任に追い込まれた
・・・「5年間で20億ドルのコスト削減」を宣言し、「5000人リストラ」を発表(のちに撤回)。その性急な手法が役員から反発され、辞任に追い込まれた。
●2017年、17,100Million USDもののれん減損(Goodwill impairment)を計上
・・・後発医薬品会社はかねてから競合会社がふえていました。競合がふえる=安売り合戦になるので利益率は段々おちていきます。それで期待どおりの利益をあげられないと解り、「のれん減損費」として2016年買収した会社ののれん代を計上しました。その金額は、この10年間の利益をすべてふきとばす規模でした。
とくに最後の部分が大事件でして、このように報告されています。
>財政健全性は?
じつは負債比率は、そこまで高くなくDEレシオは2を切っていました。
※一番右下にみえるのが最新版のDEレシオです。
年々DEレシオが上がっています。この負債を返済できるめどがあればいいのですが、これといった稼ぎ頭が見当たらない今でこの数字では、投資対象として怖いですよね。
>割安性は?現在の株価は?
●総括(薬剤師の目線で)
2005~2018年くらいまでの後発医薬品拡充の時代はもう終わりました。先進国での売上はシェア奪い合いになるので、あとは新興市場国でいかに展開できるかの状態です。そんな状態だというのに会社の信頼性はあまりありません(品目数をいきなり551から、81も削減発表するなど)。
私は機械的にスクリーニングしても、ふるい落としてしまう会社です。瞬間的にPER15などとなったときもあったのでコワイですが。ビジネスモデル的に時代遅れであることからも、投資対象としてはじいていたと思います。そもそもいつの時代も、市場平均よりずっと高いPERでしたからね。
はからずもシーゲル博士のいう「成長の罠(期待値が高すぎたために、売上は成長したのにリターンが悪くなる現象)」に該当する銘柄、となってしまいました。
また年次報告書のフォーマットがコロコロ変わっています。透明性に欠け煙に巻こうとしているように思いました。ファイザーも業績不振になってから年次報告書のフォームを変えているので、この会社もそうなんじゃないかと勘繰ってしまいます。その意味からも、あまり投資したくありません。
〇参考にしたサイト
https://s24.q4cdn.com/720828402/files/doc_financials/2020/q4/FY2020_10K_Feb.10.2021.pdf投資可能な証券会社
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