世界トップ20の売上をもつ製薬会社・ギリアドサイエンシズ(銘柄ティッカー:GILD)について。
●株(ファンド)の概要~そもそも何してるところ?
>セクター11分類・細かな業種・ディフェンシブor中間or景気敏感
ギリアド(GILD)はGICSのセクター11分類でいえば「ヘルスケア」、その中でも製薬会社に該当します。
製薬企業=不景気に関係ないディフェンシブ株で安定している・・・と言いたいところですが、ギリアド(GILD)はあまり製薬会社らしくない値動きをしています。製薬会社なのにギャンブル的です。
>その売上の内訳は?内訳別の将来性は?
地域別の売上はこう。上位20位以内に入る割には、米国依存がとても強い会社なのです。
その推移はこうです。取り立てて特徴はありません。
一方で製品分野別の売上内訳です。こちらは特徴的でして、現在のギリアド(GILD)を正しく理解するために必要ですよ。この分野別内訳は、全部の売上ではなく95%くらいの主力薬のみの内訳です(残り5%の売上に特徴的な物はなかったのでカット)
内訳推移です。一言でいえば抗HCV薬は激減、抗HIV薬は右肩上がりで現在の主力、ベクルリーが大きな伸びしろ。つまりHIV薬の将来性とベクルリーの売上に賭けないと、とても買えない製薬会社なのです。
>主要な個別製品の説明
【抗HCV薬について】
・・・ほぼ終わりで、いまや「抗HCV薬のギリアド」ではなくなりました。なぜならまともに売れているのはエプクルーサただ1剤だけ、しかも右肩下がりです。
2014~2015年に「抗HCV薬バブル」に沸いた時代がありました。ハーボニー配合錠®、ソバルディ錠®がブロックバスター(10Billion USD以上)とよばれ、ギリアド(GILD)をトップ10に押し上げた時代です。
【どうして抗HCV薬が売れたの?】
●今までC型肝炎ウイルス(Hepatitic C Virus:HCV)はしぶとい、完治できないから活動を抑えつづけるしかない感染症でした。
●それがハーボニー配合錠®、ソバルディ錠®で完治でき、しかも副作用も取り立てて多くは無く、大変画期的な薬でした。
●1びん28日分で150万円超えで、それを3瓶(84日間)も飲む必要があり、大変高価でした。
・・・しかし、この薬は突然売れなくなります。いま「完治する」と書きましたが、完治する=もう抗HCV薬とはサヨナラです。HCV感染患者さんは無限にいるわけでもなく、売上低下していきました。それで、バブルがはじけて株価暴落していきました。2016年~の話です。
【抗HIV薬について】
こちらは安定して売れています。ビクタルビ錠®、ディスコビー錠®、オデフシィ錠®が主力です。昔のイメージとは違い、いまや「抗HIV薬のギリアド」なのです。
この抗HIV薬というのは完治させるものではなく、飲み続ける事でHIVを抑え続ける類の薬です。その為薬とサヨナラとはならず使い続けないといけません(売れ続けます)。実際売上も右肩上がりです。
しかし・・・薬剤師ならご存じですが、抗HIV薬というのは相次ぐ特許切れで後発医薬品に置換わってきています。伸びている薬も「だれでも1日1回1錠」というお手軽さで、今までと同じ薬効なのがウケているのであって画期的だからではありません。いくら伸びていても、買える材料には思えないのです。
【ベクルリー点滴静注用®】
●これは新型コロナウイルス(COVID-19)治療薬です。コロナ感染の重症者に、5日間で6本投与して使います。急に登場してあれだけ売れているのはコロナ治療薬だったからなんですね。
●コロナワクチンでコロナ予防できたり、他社競合薬が出るとマズイです。実際競合薬は色々出てきています。
・・・この通り、買うには「抗HIV薬とベクルリー」に賭けるしかないのです。つまり上級者むきの難しい銘柄でして、ニュースや治療成績を見続けて、将来性を買えると思わないと買えません。間違っても「昔よりPERが激安だから買い時」と思わないでください。歴史の浅いバイオベンチャーにありがちな傾向です。
●株主への還元姿勢
>配当金・一株利益の推移は?
業績は低迷気味なのに、意外と連続増配6年です。興味深いのはバブルのはじけた2016年が初配当だった事です。タイミング的に業績低迷しても、株主をつなぎとめる為に増配したとも考えられます。
現地源泉税率 | 国別源泉税率 | 税引後受取率 |
米国株 | 10% | 71.72% |
英国株 | 0% | 79.69% |
オーストラリア株 | 0% | 79.69% |
インド株 | 0% | 79.69% |
メキシコ株 | 0% | 79.69% |
カナダ株 | 15% | 67.73% |
ロシア株 | 15% | 67.73% |
アイルランド株 | 20% | 63.75% |
台湾株 | 21% | 62.95% |
デンマーク株 | 27% | 58.17% |
ベルギー株 | 30% | 55.78% |
スイス株 | 35% | 51.80% |
>株数推移は(自社株買いによる減)
もう一つ意外なのは、自社株買いが結構積極的で毎年2%前後ずつ減らしてくれています。歴史が浅いですが株主還元には積極的なのかもしれませんね。
●将来性
>売上成長率は?
・・・管理人が「ギャンブル」「バブル」と多言した理由がよく判ると思います。製薬会社=安定 の公式が当てはまらない例です。
> トータルリターンは?
伸び盛りだった2015年まで無配だったため、合計金額は純粋に株価依存でした。当初から株価が20倍になった時期もあり、その後の急落もあって、まさに夢の有る買い物・ギャンブルです。しかしこういう株を掘り当てるのは難しく、よっぽどの情報通・カン(HCV完治薬が爆発的に売れると確信を持てるカン)がないと選べません。こういう新興の製薬株は難しいですよ(管理人は一切買いません)。
>利益率は?
変動が激しすぎて、どれが本来の数字なのか解りません。
【近年のギリアド(GILD)の買収・売却】
●特記無し
>財政健全性は?
投資額がかさむのか、DEレシオも高めです。DEレシオ2~3は要注意です。
>割安性は?現在の株価は?
●総括(薬剤師の目線で)
昔のイメージで『こんなに割安になってる』と思って買うと痛い目に遭います。ベクルリーと抗HIV薬の会社である本質を知った上で、伸びると思ったら買えます。財政も不安定ですので、買って放置・安心とはいきません。
製薬株=安定・高成長のイメージを覆す会社が、ギリアド(GILD)なのです。
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