世界トップ20にはいる製薬企業・アムジェン(銘柄ティッカー:AMGN)について。
【概要】
●1980年に、ロサンゼルス郊外で創業
●大規模だが、少数の高額医薬品に依存する為「バイオベンチャー企業」といえる
●高利益率のビジネスモデルで将来有望と思われる
薬剤師はアムジェンと言われてもピンときません。ですが「プラリア注射®」「エンブレル注射®」「グラン注射®」「エスポー注射®」といわれれば、病院薬剤師であればピンとくるはずです。主力製品が注射薬だらけという取扱製品の性質上、病院薬剤師でないとあまり解らない会社かと思います。
知名度はいまいちですが深く調べていくと、高利益率のビジネスモデルで、将来性・発展性のある有望な会社だと解ってきました。
●株(ファンド)の概要~そもそも何してるところ?
>セクター11分類・細かな業種・ディフェンシブor中間or景気敏感
アムジェン(AMGN)はセクター11分類でいえば「ヘルスケア」、その中でも「製薬会社:Pharmaceuticals」に属します。
もちろん製薬会社らしくディフェンシブ株でして、不景気でもまるで売り上げが落ちません。
>その売上の内訳は?内訳別の将来性は?
世界の地域別の売上について。大規模な製薬会社だというのに、売上殆どは米国内です。しかし米国は世界最大の経済大国でいまもなお人口増加している事を考えると、あまり問題ではないと思います。
その地域別推移です。売上は横ばいですが、米国外ですこしずつ増えてきています。
こんどは疾患領域別の売上です。免疫疾患薬がいま世界的トレンドですが、しっかり30%も売り上げています。抗がん剤も分子標的薬が多く、17%を占めています。
その売上推移です。バイオシミラー(バイオ医薬品の特許切れ薬のこと)が大きく伸びていますがこれは「ベバシズマブ(アバスチン®、ロシュRHHBYの製品)」「アダリムマブ(ヒュミラ®、アッヴィABBVの製品)」のバイオシミラーが伸びているからです。また免疫疾患薬も伸びていますが、これはオテズラ皮下注®の爆発的ヒットのせいです。
>主要な個別製品の説明
●プラリア皮下注射®
医療用医薬品で、その中でもバイオ医薬品(更にその中でも分子標的薬剤)に該当します。これは骨粗鬆症の注射薬でして、2か月1回の注射ですみます。骨粗鬆症薬で最強の「骨破壊阻止薬(ビスホスホネート系薬剤など)」といえば「1か月に1回、起床時にのむ」薬ばかりでしたが、認知症で上手に薬を飲めない方にはどうしてものめませんでした。しかしこれなら認知症で指示が通じない方であっても、通院さえすれば注射で同じ効果が得られ、コンプライアンスが確保できるのです。地球全体の高齢化・独居増加・なにより有効性から売上が伸び続けています。
●イベニティ皮下注射®
分子標的薬剤に該当します。骨粗鬆症の薬です。
●オテズラ注射®
医療用医薬品で、その中でもバイオ医薬品(分子標的薬剤)に該当します。これは乾癬治療薬でして、いままで免疫抑制剤で強い副作用と戦いながら無理やり抑えていたものを、副作用少なく抑えられることから大きく売れています。
オテズラ注射®が急伸長している?
●2018年11月にブリストルマイヤーズ社(BMY)から買収したため、アムジェン(AMGN)としての売上は1か月分しかないからです。
※余談:買収で13,400Million USDも支払った為、負債がかなり積みあがりました。
●2018年は1600Million USD、2019年は1900MillionUSDとされています(セルジーン社時代の売上を含めて)。毎年10%くらいの伸びです。
●エンブレル皮下注射®
医療用医薬品で、その中でもバイオ医薬品(更にその中でも分子標的薬剤)に該当します。関節リウマチの治療薬でして、分子標的薬剤の黎明期である2000年代前半から存在します。当時としては副作用が弱いのに有効性の高い、夢のような薬でした。現在は特許切れでして、
●株主への還元姿勢
>配当金・一株利益の推移は?
配当はじめて10年しか経っていませんが、現在の水準からいくとかなり余裕があります。
現地源泉税率 | 国別源泉税率 | 税引後受取率 |
米国株 | 10% | 71.72% |
英国株 | 0% | 79.69% |
オーストラリア株 | 0% | 79.69% |
インド株 | 0% | 79.69% |
メキシコ株 | 0% | 79.69% |
カナダ株 | 15% | 67.73% |
ロシア株 | 15% | 67.73% |
アイルランド株 | 20% | 63.75% |
台湾株 | 21% | 62.95% |
デンマーク株 | 27% | 58.17% |
ベルギー株 | 30% | 55.78% |
スイス株 | 35% | 51.80% |
米国株ですので受け取れる配当金は72%程度です。高配当を狙う株ではないので、そんなに関係ありませんが・・・。
>株数推移は(自社株買いによる減)
自社株買い、こちらもかなり余裕です。15年で株式数を半減させ、現在も毎年3~4%ずつ減らしてくれています。「自社株買いでの株式数減」というのは1株価値を増やすという意味です。こちらは配当金とちがって課税されないので、株主としては(課税される)配当金よりも有難いものです。
※配当金ゼロで、自社株買いだけで還元する会社もあります。バークシャーハサウェイ(BRK B)が有名です。これもTOPであるバフェット氏が、配当課税を理由に無配を貫いているためです。
●将来性
>売上成長率は?
アムジェン(AMGN)はとても伸び盛りの会社でして、配当金なしの株価だけの伸びで、何とS&P500平均を上回ってしまいました。注目すべきはリーマンショックの2007➡2008年でして、株価は大きく下げたのに、利益はむしろ1.5倍になっている事。前述のとおりアムジェン(AMGN)は優良株なのにみんな悲観売りしていたため、超割安になっていた瞬間です。利益を落とさないあたり、ディフェンシブ株とよばれるゆえんです。
> トータルリターン(2001~2020)は?
恐らく株価と同じような印象を受けるはずです。それは2011年途中まで無配を貫いていた為、配当金による再投資ができず純粋に株価依存していた為です。配当開始後も配当利回りは低めでしたし。それでも平均の倍近いリターンは凄いですよね。
>利益率は?
営業利益率39%という凄い水準です。いくら将来性・成長性のある製薬企業業界といえども、この数字をたたきだせるのはアムジェン(AMGN)とノボノルディスク(NVO)くらいです。
【近年のアムジェン(AMGN)の買収・売却】
●2019年11月、オテズラ注射®の権利をブリストルマイヤーズ(BMY)より13,400Million USDで買収
●2020年、アステラスとの合弁会社を買収。
●2021年2月、Five Prime Therapeutics社を1,900Million USDで買収
>財政健全性は?
近年は自己資本を消費して低くなってしまいました。減り幅はオテズラ®の買収、合弁会社の100%取得買収などのためですね。DEレシオの3超えはこういう成長企業・高収益企業でなければ危険な話です。
※一番右下にみえるのが、直近のDEレシオです。
>割安性は?現在の株価は?
●総括(薬剤師の目線で)
持っている商品は全て医療用医薬品、それも分子標的薬剤ばかりで将来性はあります。高齢化・医療高度化にマッチした新薬を次々と発売できていて、病院にいるとアムジェン(AMGN)製品を使いたい気持ちがよく判ります。
ただし、さすがにオテズラ買収はやりすぎだったのでは?と思っています。現在の負債額40,000Million USDは、だいたいアムジェンの利益4年分くらいなので、回収できる水準なのでは・・と考えていますが。
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