世界屈指の製薬会社会社・ファイザー(銘柄ティッカー:PFE)について。
※2021年より、ロゴデザインを変更しています。
●株(ファンド)の概要~そもそも何してるところ?
>セクター11分類・細かな業種・ディフェンシブor中間or景気敏感
1 | Health Care (ヘルスケア) | 14.19% |
2 | Consumer Staples (生活必需品) | 13.36% |
3 | Information Technology (情報技術) | 11.39% |
4 | Energy (エネルギー) | 11.32% |
5 | Consumer Discretionary (一般消費財) | 11.09% |
6 | Financials (金融) | 10.58% |
7 | Industrials (資本財) | 10.22% |
8 | Communication Servies (情報通信) | 9.63% |
9 | Utilities (公共事業) | 9.52% |
10 | Materials (素材・資源) | 8.18% |
11 | Real Estate (不動産) | (不明) |
平均 | Average (市場平均≒S&P500指数) | 10.95% |
・・・ヘルスケア業種に属します。ヘルスケア=ディフェンシブ株の一部ですね。ヘルスケアの中でも「製薬会社」です。製薬会社の特徴としては利益率が高い・参入障壁が高いため安定的といえます。
>その売上の内訳は?内訳別の将来性は?
世界全体でかなり低下してます。この謎の急低下ですが、分野別の売上推移をみると、理由がよ~く解りますよ。じゃあ見てみましょう。
・・・2点ほど気が付きませんか?
そう、2020年から「一般ヘルスケア(OTC)」と「アップジョン」が消えている事です。じつはガタ落ち分は、この2分野ですべて説明が付きます。
【アニュアルレポートに騙されないで】
2019年のアニュアルレポートには、2019年売上高は51750Million USD とあります。
2020年のアニュアルレポートには、2019年売上高は41172Million USD とあります。
・・・同じ2019年売上のはずですが、随分違いますよね。理由は言うまでもなく、上記2分野を除外しているためです。
この為1枚のアニュアルレポートしか読まないと、「ファイザー(PFE)って右肩上がりやん!!」と思ってしまうわけですね。でも2枚を比較すると、謎が解けるわけです。・・・ちょっと透明性に欠けた企業姿勢の気がしますね。
一般ヘルスケア(OTC)
いわゆるドラッグストアで売られて
いる、OTC医薬品や医薬部外品ですね。2019年にガタ落ちした理由はこれです。
2019年8月1日に、部門を分離してしまったからなんです。その10年前にはOTC強化を謳っていて、力を入れていたはずなんですが。
ファイザーを代表したマウスウオッシュの、リステリンのパッケージはこのとおり。
ファイザーのロゴは消えてしまいました。現在は撤退しているのです。
アップジョンブランド
元々他会社だったアップジョンですが、ここにはとっくに切れした先発医薬品(つまりもう伸びない部分)が含まれ、それも2020年に売却してしまいました。
>主要な個別製品の説明
●エリキュースについて
医薬品で、低分子医薬品に該当します。世界トップ10に入る売上をもちます。右肩上がりなのは対象疾患である「心房細動・静脈塞栓症」が高齢化と新興市場国開拓で増え続けているためですね。落ちる危険性といえば、特許が2023年前後に切れる事です。とはいってもファイザー(PFE)は世界第3位(2020年)の売上ですからね、依存性はそこまでありません。
●チャンピックスについて
医薬品で、低分子医薬品に該当します。禁煙外来に罹った方ならおなじみの薬ですよね。これ使う事で、OTC医薬品のニコチネルパッチより安価で、副作用少なく、自然に禁煙できるとされています。しかし・・・禁煙は無限に続くものではなく、一度止めたらもうこの薬に用は無いですからね。売上伸び悩んでいます。
●イブランスカプセルについて
医薬品で、低分子医薬品に該当します。一般どころか医療関係者にもあまり馴染みないですが、優れた抗がん剤です。もう手の施しようもない乳がんに、延命の為に使うケースが多いです。単価が凄く高く1カプセル5000円超えで、それを毎日数カプセルも使うのでかなりの売上となっております。
●プレベナーについて
医薬品ではなく、ワクチンに該当します。ワクチンは生物学的製剤なので、そう簡単には真似されません。ワクチンメーカーはそもそも世界に数えるほどしかなく、特許切れとはあまり関係ありません。肺炎球菌ワクチンです。しかし・・・コロナ禍だった2020年は、あまり肺炎患者さんがみえませんでした(マスク着用と手洗いのため)。現在は高齢者のワクチン接種補助でなんとか売り上げていますが、いずれ打ち切る=売上ガタ落ちの危険性を孕んでいます。
●リリカについて
医薬品で、低分子医薬品に該当します。神経痛・帯状疱疹もちの方はよく飲まれています。神経性の痛みをよく治す薬で、発売当初は画期的な薬とされて実際、日本で一番売れていた薬です。ですが特許は2019年前後に世界中で切れていて、2019年のガタ落ちはそれです。低分子医薬品=簡単に真似される=他社後発医薬品に浸食される運命にあり、それは売上日本一だったリリカも例外ではありませんでした。私事ですが勤務先でもリリカ➡プレガバリン錠に採用変更し、院内の医局会でもあっさり承認されてしまいました。そのくらい、変更がカンタンにできるのが低分子医薬品なのです。2020年の売上がないのは、「アップジョンブランド」だったため切り離されているからです。
●番外~あのバイアグラもファイザー!?
ファイザー(PFE)です。バイアグラは元々心臓血管系の薬として開発されたのですが、治験者はなぜか異常な勃起を訴えました。調べていくうちに、心臓の薬ではなく勃起改善薬として上市することになりました。なお同成分の薬が、肺高血圧症の薬として保険適応されています。こちらも毎日飲む薬なのですが、当然勃起障害も治ってしまいます。
【かわら版】
●製薬会社世界一じゃなかったの?売上も時価総額も??
>製薬会社としては、もうどの部分も世界一ではありませんよ。
➡製薬会社の売上(2020年末現在):ロシュ(RHHBY,スイス)、ノバルティス(NVS,スイス)、ファイザー(PFE,米国)、ジョンソンエンドジョンソン(JNJ,米国)、メルク(MRK,米国)ですね。近年はスイス勢やデンマーク勢の台頭が凄いんです。
➡製薬会社の時価総額(2020年末現在):ジョンソンエンドジョンソン(JNJ,米国)、ロシュ(RHHBY,スイス)、ノバルティス(NVS,スイス)、イーライリリー(LLY,米国)、アッヴィ(ABBV,米国)でトップ5にすら入りません(下記グラフも参照)
【かわら版2】
●リピトールって売上世界一の薬で、ファイザー(PFE)だったよね?主要薬に書かれていないけど?
>はい、ファイザー(PFE)です。しかし主要薬といえたのは2010年頃まで。売上世界一だったのも2011年頃まで。現在は特許切れしてほとんどジェネリックに置換わり、売上額は見る影もありません。ですから主要薬とはいえません。
○○まとめ○○
売上が随分分散されているファイザー(PFE)ですが、盤石といえる薬もまたないのが特徴です。そして、近年新薬をあまり開発できていなく、いわば昔の蓄えで売っている状態です。そして最近は新薬開発を諦めて、他社のいい薬を買収したり、特許切れ薬(ジェネリックやバイオシミラー)で勝負したりにシフトしている印象です。
しかし・・・一つ光が見えるとすれば、そのバイオシミラー部門にものすごく力を入れていて3年間で3倍に伸ばした事です(2017年の531➡2020年の1500Million USD)。病院薬剤師の私も、これバイオシミラーに変えたいと思った薬は、ことごとくファイザーが作っているのを見てきています。バイオシミラーは先発分子標的薬よりもずっと利益率が低いですが(値引き合戦になるので)、みんな『あのファイザー(PFE)が作っているのだから』と信頼して、選んでくれている印象も現場では受けます。
●株主への還元姿勢
>配当金・一株利益の推移は?
こちらは連続増配10年です。ですがリーマンショックの時、配当金を半減させていました。現在も配当性向がけっこうキツキツで、伸ばすには「バイオシミラーやコロナワクチンが当たらないとキツイ」状態です。この様に知名度の割に、バクチ的な銘柄がファイザー(PFE)なのです。
現地源泉税率 | 国別源泉税率 | 税引後受取率 |
米国株 | 10% | 71.72% |
英国株 | 0% | 79.69% |
オーストラリア株 | 0% | 79.69% |
インド株 | 0% | 79.69% |
メキシコ株 | 0% | 79.69% |
カナダ株 | 15% | 67.73% |
ロシア株 | 15% | 67.73% |
アイルランド株 | 20% | 63.75% |
台湾株 | 21% | 62.95% |
デンマーク株 | 27% | 58.17% |
ベルギー株 | 30% | 55.78% |
スイス株 | 35% | 51.80% |
米国株なので配当金は72%程度しか入ってきません。売却益は80%入ってくるのですがね。
ファイザー(PFE)はわりと高配当(常時4~5%程度)なので、これは痛いです。
>株数推移は(自社株買いによる減)
こちらは自社株買いで積極的に減らしてくれています。逆に増資した2009年は、やはり配当金半減した時期と同じです。苦しかったのですね。
●将来性
>売上成長率は?
製薬株=ディフェンシブ株の一種なのですが、ショック耐性というのはさほどありません。
またショック耐性だけでなく成長性にも欠けていて、近年は伸び悩む傾向にあります。ヘルスケア業界全体が平均以上の伸びを見せている中で、ファイザーは平均を下回ってます。
>利益率は?
他業種と比較すると、利益率25%前後はずいぶん高いです。ちなみに製薬会社全体がこの位(20~25%前後)の数字です。ファイザー(PFE)は将来性がいまひとつですが、利益はしっかり稼げています。
※2020年のアニュアルレポートには、最初から(売上低下みえみえの)アップジョン事業・大衆薬事業がなかったことにして売上としてありますからね。実際の数字は上記グラフの通り下がってますよ!!前述のとおりです
>財政健全性は?
売上が衰退気味なのに、財政は良好です。いまこれという新薬がないので、潤沢な自己資本で有望なベンチャー製薬を高額買収とかしてもいい気がするのですが・・・。
>現在の株価は?
●総括(現役病院薬剤師の目線で)
病因薬剤師の視点からみると正直初心者向きとは言えず、むしろ製薬会社なのにバクチといえるのがファイザー(PFE)なのです。買える材料がバイオシミラー・コロナワクチンくらいしかないからです(バイオシミラーは予測がつくが、コロナワクチンの当たりはずれはバクチです)。いまの主力商品も、現役病院薬剤師の眼で見ると落ちる要素がいくらでも見当たってしまいます。
化ける可能性が一つあるなら、コロナワクチンの会社であること。2021年2月~しばらくは、ファイザー社製のコロナワクチンしか日本に入りませんよ。ファイザーの規模(売上世界3位とデカイ!)や競合の多さを考えると、焼け石に水レベルですが・・・。
管理人は単価37USDで、50株取得しています。>>2021年3月に、2020年アニュアルレポートをみて失望し、売ってしまいました・・・。
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