【ヘルスケア】ホロジック(HOLX)個別株分析(21年04月)

その他個別株

マンモグラフィー機器トップメーカー・ホロジック(銘柄ティッカー:HOLX)について。

●株(ファンド)の概要~そもそも何してるところ?

 >セクター11分類・細かな業種・ディフェンシブor中間or景気敏感

GICSのセクター11分類でいえば「ヘルスケア」にあたります。その中でも医療機器メーカーという位置づけです。

医療機器メーカーといっても注射器・注射針・血糖測定器あたりは(高度な知識研究が不要で参入しやすく)競争激しいものですが、診断機器・手術機器系の会社は(高度な設備・優秀な研究者が必要なので)価格競争が起こりにくい構造をしています。このホロジック(HOLX)は、後者なので競争が激しくない部類です。

ディフェンシブ株といえます。検査・健診といったことはコロナやリーマンショックだから控える、とはいかないからです。コロナで不要不急の手術あとまわし、等とニュースになりましたが実際の現場ではほとんど予定通りやっていて、手術件数がそこまで減っていない現実も知っています。だからディフェンシブ株といっていいでしょう。

 >その売上の内訳は?内訳別の将来性は?

●打ち上げ地域別内訳はこうです。

つよい米国依存がはっきりしています。一応日本法人のホロジックジャパンも存在するのですが、割合としてはかなり小さいです。

米国・ヨーロッパ地域ではのびるいっぽうで、日本をふくむアジアでは売上減少しています。

●領域別内訳はこうです。

ホロジック(HOLX)といえばマンモグラフィーの世界シェアトップで有名な会社ですが、実は細胞診断・診断機器の売上に高度に依存した会社となります。

ちなみに会社の標ぼうする4つの柱は「体外診断薬・診断機器」「乳房診断」「婦人科外科手術」「骨密度測定」です。

その伸び率はこうです。体外診断薬に依存し、強化してきている会社となります。マンモグラフィーの乳房診断領域はTOPシェア、裏を返すと伸びしろが小さい部分なのです。じっさい横ばい推移しています。

 >詳しい4領域の製品説明

●体外診断薬・診断機器●

APTIMAアッセイ系製品(Covid-19用PCR検査薬を持つ)、ThinPrepシステム、ラピッド胎児性フィブロネクチン及びProcleix血液スクリーニングアッセイを含む。同社はB型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)及びヒト免疫不全ウイルス-1(HIV-1)の定量のためのウイルス負荷のアッセイも持つ。

ホロジック(HOLX)プレスリリースより引用

写真のアプティマ®SARS-CoV-2 という製品は、名前の通り新型コロナウイルスの診断キットです。2020年8月付けで保険適用となった検査薬でして、精度の最も高いとされるTMA法を採用しています。この検査薬きっとは同じくホロジック(HOLX)の検査システム”パンサーシステム”を使用することで、高速・高精度でコロナ感染を判定できます。

この領域はホロジック(HOLX)の強み・標ぼうする「女性の健康」とはやや外れます。また販売するのが検査機器システムではなく、検査試薬などです。検査試薬は一度使ったら使い捨てのものなので、検査機器システムとちがって継続的に売れ続ける事になります。近年この分野が躍進しているのは、コロナウイルス検査薬が継続的に売れるのもあるし、そのほかの病原菌検出薬も売れ続けているからです。一度売ったらおしまいではないこの領域が売上大部分を占めているので、心強いかぎりです。

●乳房診断(乳房健康)●

乳房健康の製品は、デジタル式乳房撮影システム、コンピュータ支援診断(CAD)及び乳房生検のガイダンスシステムなどの乳房画像システムを持ちます。

ホロジック(HOLX) 製品紹介ページより

マンモグラフィー(乳房の造影)領域では世界トップシェアです。

世界で初めてトモシンセシス マンモグラフィー(乳房の3D造影システムのこと)を作りました。その3Dだと検出率が改善した上、偽陽性(本当はがんではないのに、がん細胞ありだと判断してしまう事)が最大40%低下しました。

ホロジック(HOLX) 製品紹介ぺージより引用

しかしトップシェアゆえ伸びしろは小さく、このトモシンセシスシステムは発売10年以上経過しています。それに機器というのは医薬品などと違い、一度搬入すると10~15年使えたりします(管理人の病院でも10年前の機器をそのまま使ってたりします)。こういった優秀さゆえに近年、売上伸び悩んでいるのです。

●婦人科外科手術機器●

NovaSure子宮内膜アブレーションシステムとMyoSure子宮筋腫切除システム。

●骨密度測定(骨格健康)●

あまり知られていませんがホロジック(HOLX)は骨密度X線測定でも、トップシェアを持っています。高齢化=骨密度低い人間の増加でもあり、骨粗鬆症の早期発見➡骨折の早期発見は世界中の問題になっています。骨粗鬆症患者は男性<<女性なので、そういう意味でも女性の健康機器の会社といえます。

TOYO MEDIC社(HOLX製品の製造販売元の一つ) 製品紹介ページより

●株主への還元姿勢

 >配当金・一株利益の推移は?

現在まで無配をつらぬく会社です。

配当金を出した場合の税率も、載せておきます。


現地源泉税率
国別源泉税率税引後受取率
米国株10%71.72%
英国株0%79.69%
オーストラリア株0%79.69%
インド株0%79.69%
メキシコ株0%79.69%
カナダ株15%67.73%
ロシア株15%67.73%
アイルランド株20%63.75%
台湾株21%62.95%
デンマーク株27%58.17%
ベルギー株30%55.78%
スイス株35%51.80%

 >株数推移は(自社株買いによる減)

ホロジック(HOLX)の発行株式数ですがこの数年は、年2%ずつくらい減らしてくれています。株主還元は自社株買い>配当金 という事になります。

●将来性

 >売上成長率は?

近年の株価成長率・利益額とも市場平均を上回るものでした。利益額のグラフがヘンなのは、基準とした2005年の利益額が小さかったためです。

 > 近年のトータルリターンは?(2001~2020年)

・・・無配企業で、配当金再投資できない=純粋に株価のみに比例したリターンとなるので、算出しませんでした。もちろん株価比例の為、平均をはるかに上回るリターンとなりました。

 >利益率は?

利益額の年での上下が激しい為わかりにくいのですが、平らにならすとだいたい15%くらいの利益額でした。長期的には利益額・利益率とも右肩上がりで、さらに発行株式数も減らしてくれてるので、一株利益は2重にのびていることになります。

【近年のホロジック(HOLX)の買収・売却】
●2021年4月、モビディアグ社を買収。その額795Million USD。
 ※フランス・フィンランドの会社で遺伝子診断機器の会社。強みは高速PCR検査(PCRなのに50~120分で完了!)により消化器感染症・呼吸器感染症・薬剤耐性管理・医療関連感染分野の検査キットを販売している事。
●2021年3月、ダイアジェノード社を買収。その額159Million USD。
 ※ヨーロッパの会社で遺伝子診断薬・エピジェネティクス製品の会社。強みは性感染症・髄膜炎・呼吸器疾患・胃腸炎の原因菌の検出できるPCR検査薬30種類以上を所持し、すでにヨーロッパでの販売網を持つ事。
●2021年1月、バイオセラノティクス社を買収。その額230Million USD。
 ※転移性乳癌の遺伝子診断機器の会社。ホロジック(HOLX)の標ぼうする「女性の健診」とマッチした分野であり、マンモグラフィだけでなく乳癌発覚後のケアまでをサポートできるようになった。

なぜか近年の買収はみな2021年上半期ばかりで、しかも遺伝子検査領域の会社ばかりを買収しています。それでも総額は1,180Million USDでして、現在もフリーキャッシュ1,694Million USD残ってることから無理のない買収でした。そして潤沢な資本でむやみに事業領域を拡大するのではなく、つよみ強化に特化している感じです。

 >財政健全性は?

DEレシオは常時1を切っており、それは自己資本投入すればいつでも負債を全額返却できる水準です。同じヘルスケアでも買収の激しい製薬会社は2以上だったりするので、際立っていい財政といえます。上下が激しく「大丈夫か?」と思わせる利益額と裏腹に、潤沢な自己資本を持ち続けています(潤沢だから単年赤字になってもいい位、思い切った買収ができるわけです)。

DEレシオではないですが流動比率も220%くらい、つまり今後2.2年分の支払額をすぐ用意できる状態です(製薬会社は80%くらいなのでくわだって良い支払い能力です)。こちらからも財政的には問題なさそうです。

※2007年以前の長期負債が取得できませんでした。ごめんなさい

※一番右下にみえるのが最新版のDEレシオです。

 >割安性は?現在の株価は?

●総括(薬剤師の目線で)

独自性ある商品ポートフォリオは確かです。マンモグラフィートップメーカーの印象がつよくその通りなのですが、マンモ機器は一度売れたら10年は売れないので継続的な収入ではありません。それよりもPCR検査薬の売上がはるかに大きく、これらは使い捨てなので継続的に売れていきます。このPCR検査薬はそう簡単につくれるものではないので、この売上は安定的とみなせます。

全くの余談
管理人は薬学生時代、分子生物学の研究室で卒論を書いていました。研究ジャンルは試薬条件・温度条件とPCRについてでした。PCRはちょっと条件狂うだけでもうまくいかず、検体のDNA・RNAがズタズタになって失敗します。そして当時は90度の高温条件下でないとうまくいかず、難儀した覚えがあります。根気よく追実験を繰り返せて、試薬をいくつも理解していないと成功しないのがPCRでした。管理人などには手に追えず、高度な学力が必要だなと感じたものです。

PCR検査薬や女性健康分野を標ぼうして、むやみに他領域に手をださないところも高評価です。豊富なキャッシュで、身の丈に合った投資をしているのも高評価です。現在のPERが14とかなり低めで、投資対処にしていいのではと考えている所です。

〇参考にしたサイト

https://s22.q4cdn.com/318328767/files/doc_financials/2020/q4/HOLX_10K_FY20.pdf

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