成長性のある米国株(またはADR株)をお考えの方、多いですよね。
どうせ投資するのなら、参入障壁が高くてこれからも喰われない会社がいいな。未来永劫、伸び続けてくれそうな所。
参入障壁が高い=ライバルが少なくて競争が少ない=利益も大きいですよね。製薬企業業界はそれだけで参入障壁が高いです。ですがその中でも、さらに参入障壁の高い分野で勝負している会社があります。
それが、「ノボノルディスク(NVO)」です。
この会社をお考えなら、予備知識が欲しいですよね?
●投資スタイルは買ったら放置(2人子育てで忙しいから)
●放置したいので、安定株しか買わない・分析しない
●高収入じゃない分、生命保険・学資保険代りに資産が欲しい
●普段は病院薬剤師(それも高額医薬品の管理担当)なので、現場動向が肌で解る
の僕が、解説いたします。
【そもそもどんな銘柄?】
医師・薬剤師しかまず知らない銘柄でしょう。あなたがもしインスリン使って見えるなら、知っているかもですが。規模を把握したいので、同業種の売上も比較してみましょう。
世界8番目の時価総額を持っています。売上もベスト10に入ります。
今度は売上の内訳をみてみます。
売上はほぼ「医療用医薬品(つまり医師の処方箋でだされる、効果と危険度の高めな薬)」です。ですから「どんな効果の医療用医薬品なのか?」をグラフにしました。
「糖尿病」「血友病」「成長ホルモン」の3疾患で殆どを占めています。分散とはいえず、逆の「特化型製薬企業」です。
※特化型といえば「ギリアドサイエンシズ(GILD)」もそうですね
分散していない特化型だから怖いのでは、と考えがちです。ですがこの会社違います(後述)。
セクター(=業種)11分類でいうと「Health Care(=ヘルスケア)」ですね。当然景気敏感・ディフェンシブでいえば、ディフェンシブ株にあたります。
本当に安定しているの?
とても安定しています。理由はこうです。
②不景気でも止めない物だから
③特化する分野が安定収益見込めるから
④高収益体質だから
⑤長期リターンのいい「Health Care」業種だから
いっぱいありますね。ひとつひとつ解説していきます。
具体的な理由
①売上地域が分散してるから
これをご覧ください。
売上が世界中に分散していますよね。分散すると、安定するんです。
なぜなら、一カ国で不祥事・被害があって売上低下しても、他の国と地域が補ってくれるからです。
投資家では有名な格言で、「卵を一つのカゴにのせるな。(沢山のカゴに分散させろ)」というのもあります。
ですから「売上分散」というのは、おおきなメリットなんです。
ちなみに、地域別の売上の伸びをみると、この通りです。他の製薬会社と比較にならない位、凄い勢いで伸びています。
※通貨安の影響もなし。デンマーククローネは近年6.6(DKK/USD)で安定している為
②不景気でも止めない物だから
ノボノルディスク製品は、不景気で売上落ちる事はありえません!
なぜなら特化している分野は、命直結の薬ばかりだからです。
具体例を挙げましょう。糖尿病薬のノボラピッド®注射は主力ですが、これは1本2400円位で平均10日位で使います。1月で7200円、日本の保険3割負担で2160円です。たった2160円をケチれば、高血糖昏睡で倒れます。もしくは「3大合併症」などで未来永劫苦しみます。これをケチる位なら、他のお金を削ると思うんですよね。
別の具体例を挙げます。あなたが血友病だったとしたら。切り傷、内出血しても「お金がないからノボエイト®注射しないでください」だなんていいますか?出血が止まらず、大惨事になりますよね?
じゃあノボ社じゃなくて他社の安い製剤に・・・と思うでしょうが、これら製剤の世界トップシェアは、ノボ社です。トップシェアの会社が、いちばん大量生産できて安く作れます。
ですから、ノボノルディスクの売上は、不景気で落ちる事があり得ないのです。
(他の会社の記事では「考えにくい」と弱めに書いているの、気が付きましたか?)
③特化する分野が安定収益見込めるから
特化する分野は、患者数が多い・薬は一生ものという分野です。
なぜなら分野(アニュアルレポートでいう”Way”)は、「糖尿病」「肥満症」「成長ホルモン」「血友病」だからです。
具体的に糖尿病は、人口の10%が予備軍とされ、今もなお合併症の発症が多いです。つまり患者数は多いのに、なおも治療不十分とされているんです。治療不十分な証拠として、糖尿病患者は十分治療されたら健常者と同じ余命なのに、実際は8年も平均余命が短いんです。つまり啓発されればもっと、使用率があがる分野です。そしてこの会社、糖尿病薬に関しては世界一の売上(つまりマーケットリーダー)です。いちばん高品質で安く、製品を作れるんです。
別の具体例として、血友病の薬(ノボセブン®注射、ノボエイト®注射)も世界一の売上です。
ですから、将来も安定的に売れていくと考えられます。
④高収益体質だから
この会社は成長性だけでなく、財政のよさが目につきます。
まずはこれをご覧ください。年々、1株利益が増え続けている事が解ります。
配当金は2010~2013年に大盤振る舞いしています。べつにデンマーククローネの通貨高ではありません。
当然、利益も右肩上がりで伸びている会社です。
僕はこの規模の会社で、こんなに利益率のいい銘柄を知りません。利益率のいい製薬業界のなかでも、断トツの45%(!)をたたき出し続けています。それはいかに会社が、少ない経費で稼げているかを物語っています。
また、自己資本比率も日本の財政優良株なみの57.7%(2019年)です。
※自己資本比率は、借金を嫌いキャッシュを好む日本企業の方が高めです。ちなみに経営危機の「いき〇り!ステーキ」「日〇自動車」さんだと5%を切ります。
⑤長期リターンのいい「Health Care」業種だから
業種的にも、オススメです。
なぜならHealth Care(ヘルスケア)の業種は、歴史的にも伸びの良かったからです。
具体的な数字をあげます。これは株式分析の権威:ジェレミー・シーゲル博士の統計からわかった、業種別の長期伸び率です。
セクター | 平均リターン(年%) | |
★ヘルスケア | Health Care | 14.19 |
★生活必需品 | Consumer Staples | 13.36 |
情報技術 | Information Technology | 11.39 |
△エネルギー | Energy | 11.32 |
△一般消費財 | Consumer Discretionary | 11.09 |
△金融 | Finacials | 10.58 |
資本財 | Industrials | 10.22 |
★電気通信 | Communcation Services | 9.63 |
★公共事業 | Utilities | 9.52 |
△素材 | Materials | 8.18 |
業種平均 | Average | 10.85 |
じっさいノボノルディスクは、14%どころじゃない拡大を続けています。
詳しい売上内容
主要医薬品の売上と伸びはこうです。
Levemir®:レベミル注射
低分子薬・バイオ医薬品でいえばバイオ医薬品。糖尿病患者さんに使います。持続型インスリンで、24時間きっちり有効です。当然1日1回の使用です。インスリン製剤は「分子標的薬剤」ではありませんが、バイオ製剤なので簡単には真似できません。それだけでも参入障壁が高いんです。
競合薬はサノフィの「ランタス注射」、イーライリリーの「インスリングラルギン注射」です。
NovoRapid®:ノボラピッド注射
低分子薬・バイオ医薬品でいえばバイオ医薬品。糖尿病患者さんに使います。超即効型インスリンで、食事のたびに注射します。つまり1日3回とか使います。1本は2400円程度と高価ではありませんが、患者人口がものすごく多く、1人がつかう本数もかなり多いです。
ちなみに作り方は「試験管の中で化学反応」ではありません。「大腸菌に遺伝子を埋め込んで、培養して抽出する」という、とても精密で設備投資のかかる作り方です。この様な作り方は小さい製薬企業では無理ですし、大手でも数少ないです。
競合薬はイーライリリーの「ヒューマログ®ミリオペン」ですね。
NovoSeven®,NovoEight®:ノボセブン注射、ノボエイト注射
低分子薬・バイオ医薬品でいえばバイオ医薬品。血友病患者さんに使います。患者の彼らが止血するには、注射が必要なんです。血友病患者さんは人口の一定割合で存在するので、世界人口の増大・製剤の啓蒙活動でどんどん伸びる可能性があります。
結論:ノボノルディスクは特化型の優等生
ノボノルディスクは、他社がまねしにくい分野で、トップシェアを取っています。それでなのか、いつも財政がとても良いです。
製薬会社としての売上はTOPではありませんが、「糖尿病」「血友病」などの分野ではトップであり、やはり真似しにくい分野なので安定的です。糖尿病薬で、とくにインスリンは作りにくいのにそんなに高くうれません。だから大手が大量生産して、単価を下げて売るんです。実際インスリンをつくるメーカーは他に、「サノフィ」「イーライリリー」くらいであり、寡占化して守られています。
株価の伸びがエライコトになっていますが、べつに僕の集計ミスではありません。時代に即した分野で勝負し続けていて、製薬業界内での順位もどんどん上げているので、べつにこの伸びも不思議ではありません。
バイ&ホールドしたい方は、ノボはオススメです。バイ&ホールドのやり方や、どうしていい方法なのかは、こちらで解説いたしました。
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